2022年の3月から続いている歴史的な円安傾向。外国為替市場では、その年の10月に約32年ぶりとなる1ドル150円台までの値下がりを記録し、それから2023年の10月、今年2024年2月と、3年の間に3度にわたって150円台に到達しています。
一時的な値上がりにより、130円前後にまで落ち着くことはあったものの、140円後半を推移する状況は相変わらず。円安傾向の収束には、まだ時間を要するものと予測されます。
この状況下で資材や食料品といった物の価格は高騰し続けており、利益を大きく圧迫されている企業も少なくはないでしょう。また、円安のメリットを受けるはずの輸出企業が業績を悪化させるケースがみられるなど、一般的な常識を覆す結果をもたらしているのが昨今の円安傾向です。
では、本来であれば輸出企業は円安に転じるとどのようなメリットやデメリットを受けると考えられるのでしょうか。

円高と円安

円安円高イメージ画像

輸出企業が円安によって受けるメリットやデメリットを考える前に、まずは円高と円安について整理してみましょう。
そもそも円高と円安とは、その言葉の通り、為替相場において外国通貨と比べた場合に、「円の価格が上がっているのか下がっているのか」を意味します。したがって、円高になれば外国通貨よりも円の価格が上がっている、円安になれば外国通貨よりも円の価格が下がっている状態であることは火を見るよりも明らかです。
ほかにも、為替相場の動きには様々な事象が絡むことになります。
たとえば、日本企業がアメリカとの貿易にあたって輸入が増えた場合、円で受け取った代金をドルに交換する動きが活発化するため、円安・ドル高傾向が強まります。また、昨今の円安傾向のように、物価や金利の動きや各国の情勢が為替市場に影響を与える場合もあります。
2022年に本格的に勃発したウクライナ紛争が引き金となって生じた原油価格や物価の急激な高騰、さらにはアメリカのFRBが大幅な利上げを行なったことによる景気回復への期待から、日本とアメリカの金利に差が生じ、円の売却が進みました。
これが昨今の円安急進の要因とされます。

円高・円安のメリットとデメリット

円安円高比較イメージ

次に、円高と円安の通説上のメリットとデメリットを確認しておきましょう。

・円高のメリットとデメリット

円高は、円の価格が上昇すること。たとえば1ドル130円が120円になる状態を指します。
それまでは、1ドルを手に入れるのに130円かかっていたものが120円で手に入るため、海外の資材や商品を安く買うことが可能になります。
反対に、海外にて1ドルで販売されている商品を円に換算すると、それまでは130円だったものが120円となります。したがって、海外での売上高が10円分下がってしまうということになるわけです。

・円安のメリットとデメリット

一方の円安はどうでしょうか。
こちらは、円の価格が下降することなので、1ドル130円が140円になります。
こうなると、1ドル130円で手に入っていたものが、140円かかるようになるため、円高とは反対に海外の資材や商品の価格が値上がりすることになります。
他方、海外にて1ドルで販売されている商品があるとすると、価格が130円から140円に値上がりします。つまり、円安傾向に転じれば海外での売上高の上昇が見込めるということがいえます。

円安によって輸出企業が受けるメリットとデメリット

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上記の一般的なメリットとデメリットを考慮すると、輸出企業が円安で受けるメリット・デメリットも容易に導き出すことができます。
円安は海外商品の高騰を招く一方で、輸出企業にとっては海外へ商品を安く売ることが可能になるため、価格競争力が高まり、収益の上昇が見込めるというメリットが生まれます。
日本製の商品は海外で高い人気を誇りますので、円安によって低価格で販売されるようになれば、売上上昇に期待できることは必然だといえるでしょう。
一方、輸入業者であれば、円安によって商品の仕入れ額が高騰するため、収益が落ち込むといった明確なデメリットが考えられますが、輸出業者が円安で受けるデメリットは基本的にありません。
ただし、日本の輸出企業の多くも製品の製造に必要な材料を海外から仕入れる、 または国内での購入といった形をとることもあり、輸入はもとより国内物価の上昇により、上記のようなメリットを確実に得られるというわけにはいかないケースも多々あります。

今年の円安でみられる“メリットを得られない”傾向

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昨今の円安進行では、本来円安のメリットを受けるはずの輸出企業が業績を悪化させるケースがよくみられました。これはまさに、上記の材料費の高騰が招いた結果といえるのではないでしょうか。
材料を海外から仕入れる、または国内で仕入れる、そのどちらであっても、材料費が高騰しており、製造コストが膨らむ。その結果として海外での販売価格を十分に低減することができないといったことも考えられます。
また、海外における日本製品の需要が近年においては減速傾向にあることも事実でしょう。
Made in Japanブランドにかつてほどの需要がみられない現状にあれば、いくら価格を引き下げたところでも、収益を伸ばせないのも納得がいきます。
国内の大手自動車メーカーをはじめとする一部のMade in Japanブランドを除けば、円安のメリットを十分に得られることなく、厳しい経営状態にある輸出企業が多いのも無理はないのではないでしょうか。

 

2024年に予測される緩やかな円高進行

さて、輸出企業にとって好影響とはいえない昨今の円安傾向ですが、多くの専門家の見通しによれば、2024年中に緩やかな円高進行に転じるものとされています。
これは、日銀が今年中にマイナス金利政策の解除を示唆しているとの予想から、実現に至ればアメリカとの間で生じている金利差が収縮するため。1ドル120円前後まで上昇する見込みもあると予想されます。
一方で、円高転換によるリスクも拭いきれません。2024年3月3日に4万円台に到達するなど、好調が続いていた日経平均株価の下落をもたらす、いわゆる円高株安傾向の懸念もあり、企業への資金流入に影響を与える可能性は否めないでしょう。
また、11月に実施されるアメリカ大統領選挙の結果次第では、再び円安ドル高が加速することも見込まれています。

円相場の変動が影響する資金繰りの改善をファクタリングで 

現在続いている円安傾向、そして2024年内に予想されている円高転換。経済情勢の安定が見通せない状況のなかで厳しい資金繰りを強いられる事業者様が非常に多くみられます。
円安傾向のなかでは物価の高騰、マイナス金利政策解除による円高転換となれば金利の上昇につながるなど、円相場がどちらに振り切ろうとも、資金繰りの課題を現状で抱えているのであれば、改善は容易とは言えません。
そのような状況下において、ファクタリングの利用による事前かつ確実な売掛金の回収は、資金繰り改善に有用な手段のひとつです。
トップ・マネジメントでは、さまざまな資金ニーズにお応えできるファクタリング商品を取り揃えていますので、資金繰り改善を目指す経営者様はぜひ一度ご相談ください。

まとめ

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今回は、円安と円高を整理するとともに、円安に転じることによって輸出企業が本来受けられるメリットやデメリットについて解説しました。
今年の円安では、いくつかの要因が絡み合い一般的に考えられるメリットからの恩恵を受けられない輸出企業が多くみられたのが事実。
そして11月に入り、今度は円高進行に転じた為替市場。
円高に転じれば、輸入企業の収益が上昇し、海外製品の価格が下落するのが一般的な円高のメリットではありますが、必ずしも理論通りに進まないことが今回の円安ではっきりとしたものです。
このまま円高が加速するのか、再び円安に転じるのか。いずれにせよ、今後の経済情勢の好転を願うばかりです。