ファクタリングは、売掛金を現金化する手段として中小企業や個人事業主に重宝されている資金調達方法です。しかし、実務でファクタリングを活用する際には、どの勘定科目を使うべきか、仕訳方法はどうなるのか、悩む方も少なくないでしょう。
本記事では、ファクタリングの基本的な仕組みから、買取型・保証型における具体的な仕訳例まで、事例を交えてわかりやすく解説します。ファクタリングを正しく理解することで、経理処理を適切に行えるようになること間違いなしです。
目次
ファクタリングとは

ファクタリングとは、企業が保有する売掛金を専門業者に売却することで、早期に現金化する手法のことです。銀行借入とは異なり、売掛金を資産として現金に変換するため、負債として計上されず、資金繰り改善に役立ちます。
規模感の小さな企業や新規事業の資金調達手段として注目されており、取引先への請求書の入金前に現金を確保できる点がメリットですが、トラブルに発展しないよう特徴をしっかり覚えておくことも大切です。そこでまずは、2・3社間の2種のファクタリングについて詳しく解説します。
ファクタリングについてさらに詳しく知りたい方はこちら
ファクタリングとは?
2社間ファクタリングの仕組み
2社間ファクタリングは、売掛先(顧客)に通知せずに、売掛金をファクタリング会社に売却する方式です。つまり、取引先はファクタリングの事実を知らず、資金化が可能です。
この仕組みの大きなメリットは、顧客に知られずに迅速に資金を確保できる点です。手続きも比較的簡単で、売掛金をファクタリング会社に譲渡すると同時に現金を受け取ることができます。
しかし、回収リスクは自社が負うため、売掛金が回収できない場合は損失となります。手数料は通常、売掛金の額に応じて設定され、2%~10%程度が相場です。
この方式は、資金繰りが逼迫している場合や、短期間で資金を確保したい場合に適しています。注意点としては、回収リスクが残るため、取引先の信用状況を事前に確認することが重要です。
3社間ファクタリングの仕組み
3社間ファクタリングは、売掛先(顧客)にもファクタリングの事実を通知して行う方式です。売掛金の支払い義務がファクタリング会社に移るため、回収リスクは基本的に自社ではなくファクタリング会社が負います。
この方式では、顧客が直接ファクタリング会社に支払うことになるため、資金化後の回収リスクが軽減されます。その分、安心して資金を得ることができるのが大きなメリットです。ただし、顧客の同意や承諾が必要であるため、2社間ファクタリングより手続きに時間がかかる場合があります。
手数料は2社間より低めに設定される傾向があり、資金化の安全性を重視する企業に適していますが、顧客との信頼関係が重要となるため取引先に不安を与えずに進める工夫が必要といえます。
3社間ファクタリングは、リスクを外部に移転しつつ確実に資金化したい場合に最適で、特に大口取引や長期的な取引先との関係を維持したい企業に向いているでしょう。資金調達の安定性を重視する際には、選択肢として有力です。
ファクタリングの勘定科目を解説

ファクタリングを利用する際、売掛金の現金化や手数料、損失の処理などをどの勘定科目で仕訳するかは、非常に重要なポイントです。勘定科目を誤ると、決算書上の資産や費用が正しく反映されず、税務処理や経営判断に影響が出る可能性があります。
ここでは、ファクタリングで頻繁に使われる勘定科目とその用途をわかりやすく解説し、実務で迷わないためのポイントを整理していきます。
| 項目 | 2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング | 備考(手数料・補助金との関係) |
| 売掛債権の現金化 | 現金 ×××円/売掛金 ×××円 | 現金 ×××円/売掛金 ×××円 | 手数料差引後の入金額を計上 |
| 手数料の処理 | 支払手数料 ×××円/現金 ×××円 | 支払手数料 ×××円/現金 ×××円 | 費用計上型、売掛金減額型などパターンあり |
| 費用計上型 | 手数料を経費として計上 | 手数料を経費として計上 | ファクタリング手数料は経費処理可能 |
| 売掛金減額型 | 売掛金から手数料差引 | 売掛金から手数料差引 | 差額を手数料費用として計上 |
| 補助金・助成金との関係 | ファクタリング資金は補助金扱いにならない | 同左 | 補助金・助成金の収益計上や使途報告に注意 |
売掛金
売掛金は、企業が取引先から将来受け取る代金を資産として計上する勘定科目です。ファクタリングでは、この売掛金をファクタリング会社に譲渡することで、現金化を行います。
例を挙げると、売掛金100万円を買取型で譲渡し、手数料5%を支払う場合、現金として95万円を受け取り、残り5万円を支払手数料として費用処理します。この処理によって、売掛金の減少と現金化、費用計上を同時に行うことができます。
一方、保証型ファクタリングの場合、売掛金は依然として資産に残ることがあります。この場合、譲渡額を未収入金として計上し、将来回収する際に現金化する処理を行います。売掛金の取り扱いを理解することで、買取型・保証型どちらの場合も、会計処理を正確に行うことが可能になります。
売掛金の管理は、資金繰りだけでなく、損益計算や財務状況を正しく把握するうえでも重要です。ファクタリングを活用する際には、売掛金の帳簿価額、譲渡額、手数料などを正確に把握し、適切な勘定科目で仕訳を行うことが求められます。
未収入金
未収入金は、売掛金以外で将来的に受け取るべき金銭を記録する勘定科目です。ファクタリングの会計処理では、特に保証型ファクタリングで利用されることが多く、売掛金を譲渡しても回収リスクが残る場合に一時的に計上されます。
具体例として、売掛金100万円を保証型ファクタリングで譲渡し、手数料が3%の場合、未収入金として97万円を計上し、手数料3万円を支払手数料として費用処理します。このように仕訳することで、売掛金の帳簿価額と実際の現金受取額の差額を明確に管理でき、資金管理の精度を高めることが可能です。
未収入金として処理することで、現金化されるまでの資金フローを把握でき、決算書上での資産価値も正確に反映されます。回収時には未収入金を現金や預金に振り替える仕訳を行うことで、資金の流れが整理され、会計上の透明性が向上します。
保証型ファクタリングは、売掛金の回収リスクをある程度自社で負う必要があるため、未収入金の活用はリスク管理の面でも重要です。仕訳を正確に行い、売掛金の減少や現金化、手数料の費用処理と組み合わせることで、資金繰りを改善しつつ会計上の整合性も保つことができます。
支払手数料
支払手数料は、ファクタリング会社に支払う費用を計上する勘定科目です。ファクタリングを利用する場合、売掛金の譲渡に伴って必ず手数料が発生します。手数料額は売掛金の額や取引条件に応じて異なり、買取型ファクタリングでは通常2%~10%程度、保証型ではやや低めに設定されることがあります。
会計上は、売掛金を現金化する際に支払手数料を費用として計上します。例えば、売掛金100万円を買取型ファクタリングで譲渡し、手数料5%の場合、現金95万円を受け取り、残り5万円を支払手数料として費用処理します。
支払手数料は損益計算書上で費用として反映され、利益計算に影響します。そのため、ファクタリングの利用前には手数料率を確認し、経営判断に役立てることが不可欠です。
適切な仕訳を行うことで、資金化の流れと費用計上が明確になり、決算書の透明性や資金管理の精度が向上します。支払手数料は単なる費用ではなく、ファクタリングを活用した資金調達戦略の一部として重要な役割を果たすのです。
売上債権売却損
売上債権売却損は、ファクタリングで売掛金を譲渡する際に、売却額が帳簿上の売掛金の金額を下回った場合に計上する損失勘定です。特に買取型ファクタリングでは、手数料や割引率の影響により売掛金の帳簿価額よりも低い金額で現金化されることが多く、売上債権売却損が発生します。
例として、帳簿上の売掛金100万円をファクタリング会社に譲渡し、手数料や割引で95万円しか受け取れなかった場合、差額の5万円を売上債権売却損として計上します。すると、会計上の売掛金の帳簿価額と実際の現金受取額との差額が明確になり、損益計算書上で正確に反映されます。
売上債権売却損を適切に計上することは、企業の損益管理や税務申告の面でも重要です。誤って売上や経費として処理してしまうと、利益計算に誤差が生じ、財務状況を正確に把握できなくなります。また、複数のファクタリング契約を利用する場合、売上債権売却損を個別に管理することで、損益の把握や将来的な資金計画に役立ちます。
売上債権売却損は資金繰り改善の効果とあわせて考えることも重要です。売掛金を早期に現金化できるメリットと、売却損の発生を総合的に評価し、経営判断に反映させることで、より適切な資金戦略を立てることが可能です。
貸倒損失
貸倒損失は、売掛金や未収入金が回収不能となった場合に計上する損失勘定です。ファクタリングでは、特に保証型ファクタリングで発生することがあります。保証型の場合、売掛金の回収リスクを自社が一部負うことになるため、取引先が支払不能になった場合には、帳簿上の売掛金の減少として貸倒損失を計上します。
例えば、売掛金100万円のうち、取引先の倒産や支払不能により50万円が回収できなくなった場合、貸倒損失として50万円を費用計上します。この計上の仕方によって、決算書上の資産価値を適切に反映させることができ、損益計算書にも正確に損失が反映されます。
貸倒損失の計上は、財務上の透明性を高めるだけでなく、税務上も重要です。適切に処理することで、課税所得の調整や資金繰りの見通しに役立ちますし、複数の取引先がある場合は貸倒リスクの高い売掛金を事前に把握し、必要に応じて引当金を設定することも考慮すると良いでしょう。
ファクタリングを利用する場合でも、貸倒リスクの管理は欠かせません。買取型では売掛金譲渡時にリスクがファクタリング会社に移りますが、保証型では依然として自社が負うため、貸倒損失の発生に備えて仕訳を正確に行い、資金計画や経営判断に活用することが求められます。
雑収入
雑収入は、通常の売上以外で得られる収益を計上する勘定科目です。ファクタリングの会計処理では、予想以上の売掛金回収や手数料の差額などが発生した場合に雑収入として計上されることがあります。特に保証型ファクタリングでは、回収額が当初の見込みを超えた場合、その差額を雑収入として処理することが一般的です。
例を出すと、保証型ファクタリングで売掛金100万円を譲渡し、手数料3%で97万円を受け取る予定だったところ、実際には98万円が回収できた場合、1万円の差額を雑収入として計上します。
雑収入を適切に処理することは、決算書の正確性を維持する上で重要です。売上と区別して計上することで、通常の営業収益との混同を避け、財務状況をより明確に把握できます。また、複数のファクタリング契約を利用する場合、雑収入を個別に管理することで、資金フローや損益の把握が容易になります。
ファクタリングの仕訳例を事例別に解説

ファクタリングを実務で利用する際には、買取型と保証型で仕訳方法が異なるため、具体的な事例ごとに処理方法を理解しておくことが重要です。適切な仕訳を行うことで、売掛金の現金化や手数料の費用処理、損失の計上を正確に行えます。
ここでは、買取型ファクタリングと保証型ファクタリングそれぞれの典型的な仕訳例を示し、実務で迷わないように具体的な金額を使って解説します。
買取型ファクタリングの仕訳例
買取型ファクタリングは、売掛金をファクタリング会社に譲渡し、即座に現金を受け取る方式です。売掛金の回収リスクはファクタリング会社が負うため、資金化までのスピードが早く、資金繰りの改善に非常に有効です。
帳簿上の売掛金100万円を買取型ファクタリングで譲渡し、手数料5%が発生した場合を考えてみましょう。この場合、受け取る現金は95万円で、残り5万円が支払手数料として費用計上されます。借方に現金95万円と支払手数料5万円、貸方に売掛金100万円を計上します。
この仕訳により、売掛金の帳簿価額と実際の資金化額の差額が明確になり、損益計算書に正確に反映されます。複数の売掛金をまとめてファクタリングする場合も、各取引ごとに手数料や売掛金の金額を正確に把握し、仕訳を行うことが重要です。
買取型ファクタリングは、短期間で現金化したい場合に適しており、手数料を差し引いても資金繰りを改善する効果が高いです。仕訳の方法を理解しておくことで、財務状況を正確に把握しつつ、経営判断にも役立てることが可能です。
保証型ファクタリングの仕訳例
保証型ファクタリングは、売掛金を譲渡しても回収リスクを自社が一部負う方式です。売掛先からの入金が遅れたり、支払不能になった場合には、自社が損失を負担する可能性があることから、売掛金の帳簿価額をそのまま残し、未収入金や支払手数料、場合によっては貸倒損失などを組み合わせて処理します。
売掛金100万円を保証型ファクタリングで譲渡し、手数料3%が発生する場合を考えてみると、現金として受け取る金額は97万円です。この場合、借方に現金97万円と支払手数料3万円を計上し、貸方に売掛金100万円を記録します。
保証型では、売掛金の帳簿価額をそのまま残すことで、将来的な回収可能額や未収入金の状況を正確に把握できます。損益計算書と貸借対照表の整合性を維持しつつ、資金繰りや財務状況を管理できるため、回収リスクを把握して仕訳を行うことが経営判断において非常に重要です。
ファクタリングの相談ならトップ・マネジメントが安心

ファクタリングを利用する際には、専門のサポートがあると安心です。トップ・マネジメントでは、企業の資金繰りや売掛金の現金化に関する相談を幅広く受け付けており、2社間・3社間どちらのファクタリングにも対応しています。
トップ・マネジメントは、経験豊富なスタッフが、手数料や仕訳処理、リスク管理まで丁寧にアドバイスします。創業15年のノウハウと業界最安水準のファクタリング手数料で、安心できる資金調達が可能です。信頼性の高いサービスと迅速な対応で企業の安定した資金運用を支援しますので、詳しくは公式サイトをご覧ください。
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事業者金融時代に営業職として中小零細企業の資金調達に従事し延べ500人以上の経営者の資金繰り相談を受け、独立し事業者金融業を開業。
延べ1000社以上の資金調達を支援してきました。事業者金融を廃業後、2006年に欧米で主流になりつつあったファクタリングに着目し、ファクタリング会社を起ち上げ。
現在では日本でも浸透している2社間ファクタリングの仕組みを私が作り、これまでに5.5万社以上の中小零細企業の資金繰りを支援して参りました。






