家賃の支払いが遅れてしまうと、延滞金が発生します。
家賃の支払いが遅れた経験がある方や、今月の家賃が払えないかもしれないと不安を感じている方もおられるのではないでしょうか。そのような時に備えて、延滞金の金額や計算方法を知っておくことで、実際に支払う金額を把握できます。
家賃滞納時の延滞金は、契約内容によって異なりますが、一般的には年14.6%程度の遅延損害金が請求されるケースが多くなっています。計算方法を理解しておけば、滞納した場合の負担額を事前に見積もれます。
本記事では、家賃滞納時に発生する延滞金の仕組みと具体的な計算方法を解説します。賃貸契約書の確認ポイントや、支払いが難しい場合の対処法も紹介しますので、参考にしてください。
家賃滞納で発生する延滞金(遅延損害金)とは
家賃の支払いを期日までに行わなかった場合、本来支払うべき家賃に加えて、遅延損害金という追加費用が発生します。支払いを忘れていただけ、あるいは数日の遅れでも対象となるため注意が必要です。
遅延損害金は、約束を破ったことに対する損害賠償の一種です。本来であれば貸主が受け取って運用できたはずの家賃が受け取れなかった損失を補填するために、借主が支払う金銭を指します。
では、遅延損害金はどのようなタイミングで発生し、いくら支払う必要があるのでしょうか。
遅延損害金は支払期限を過ぎた翌日から発生する
遅延損害金は、家賃の支払期限を1日でも過ぎた場合に発生します。
たとえば月末が支払期限だった場合、翌月1日から遅延損害金がカウントされ始めます。支払いを忘れていた、口座残高が不足していたなど、理由を問わず遅延損害金は発生するのです。
「数日くらいなら大丈夫」と考えがちですが、支払期限の翌日から日割りで遅延損害金が増えていきます。うっかり忘れてしまった場合でも同様です。
早めに支払えば遅延損害金の額も少額で済みますが、放置すればするほど負担は大きくなります。支払いが遅れた場合は、できるだけ早く対応しましょう。
遅延損害金は滞納した家賃とは別に支払いが必要になる費用
遅延損害金は、滞納している家賃そのものとは別に支払う必要がある費用です。
たとえば家賃10万円を1か月滞納した場合、10万円に加えて遅延損害金も請求されます。つまり、支払う総額は10万円を超えることになるのです。
滞納期間が長引くと、遅延損害金も増え続けます。家賃と遅延損害金の両方を支払わなければならないため、経済的な負担はさらに重くなるでしょう。
滞納を避けることはもちろんですが、万が一遅れてしまった場合は、早期に支払うことで遅延損害金を最小限に抑えられます。
契約書に記載がなくても支払い義務は発生する
賃貸借契約書に遅延損害金の記載がない場合でも、借主には遅延損害金を支払う義務があります。
これは民法で定められているためです。契約書に何も書かれていないからといって、遅延損害金の支払いを免れることはできません。
(金銭債務の特則)
第四百十九条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
契約書に記載がない場合は、民法で定められた法定利率が自動的に適用されます。法定利率は現在年3%とされており、この利率に基づいて遅延損害金が計算されるのです。
つまり、契約書の有無にかかわらず、支払いが遅れた時点で遅延損害金は発生すると理解しておきましょう。契約内容をよく確認し、支払期限を守ることが大切です。
家賃滞納の延滞金はいくらかかる?利率と計算方法
家賃を滞納したときの遅延損害金は、契約内容や法律によって決まる利率に基づいて計算されます。どの程度の金額になるのか、具体的に見ていきましょう。
遅延損害金の利率には上限があり、契約書に記載がない場合は法定利率が適用されます。また、民法改正により利率のルールも変わっているため、契約時期によって適用される利率が異なる点にも注意が必要です。
ここでは、遅延損害金の利率と計算方法について詳しく解説します。
遅延損害金の利率は最大14.6%まで
貸主と借主が個人の賃貸借契約において、遅延損害金の利率は最大で年14.6%までと定められています。
この上限は消費者契約法という法律で規定されており、14.6%を超える部分は無効となります。仮に契約書に年20%と記載されていても、14.6%を超える部分は法的効力を持たないのです。
実際の賃貸借契約では、多くの場合、この上限である年14.6%~10%程度の利率が設定されています。契約書を確認すれば、具体的な利率が記載されているはずです。
利率が高ければ高いほど、遅延損害金の金額も大きくなります。契約前に必ず確認し、支払期限を守る意識を持つことが大切です。
契約書に記載がない場合の法定利率は3%
賃貸借契約書に遅延損害金の利率が記載されていない場合、民法で定められた法定利率が適用されます。
2020年4月の民法改正により、法定利率は年3%に引き下げられました。それ以前は年5%でしたが、現代の低金利に合わせて見直されたのです。
(法定利率)
第四百四条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2 法定利率は、年三パーセントとする。
法定利率は3年ごとに見直される変動制となっており、市場金利の変動に応じて調整されます。ただし、2020年4月以降現在まで、法定利率は年3%のまま据え置かれています。
契約書に利率の記載がなくても、支払いが遅れれば年3%の法定利率で遅延損害金が計算されます。「書いていないから払わなくていい」という考えは誤りです。
民法改正前の契約は5%または6%が適用されるケースも
2020年3月31日以前に締結された賃貸借契約については、改正前の法定利率が適用されるケースがあります。
改正前の民法では、一般的な契約の法定利率は年5%でした。さらに、貸主が事業として不動産賃貸業を営んでいる場合は、商法が適用され年6%とされていたのです。
重要なのは、利息が発生した最初の時点における法定利率が適用されるという点です。つまり、2020年3月以前に遅延が発生していた場合、その後も年5%または年6%の利率が継続して適用されます。
現在も継続している賃貸借契約で、過去に滞納があった場合は、契約時期によって適用される利率が異なる可能性があります。不明な点は、貸主や管理会社に確認するとよいでしょう。
遅延損害金の計算式と具体例
遅延損害金は、以下の計算式で求められます。
遅延損害金 = 滞納家賃 × 年利率 × 延滞日数 ÷ 365日
この計算式を使えば、具体的な遅延損害金の金額を算出できます。うるう年の場合は、365日ではなく366日で計算します。では、実際の例で計算してみましょう。
家賃10万円を1ヶ月滞納した場合の計算例
家賃10万円、遅延損害金の利率が年14.6%、延滞日数が30日の場合で計算してみます。
10万円 × 0.146 × 30日 ÷ 365日 = 1,200円
この条件では、1か月間(30日)の遅延損害金は約1,200円となります。
仮に法定利率の年3%が適用される場合は、以下のようになります。
10万円 × 0.03 × 30日 ÷ 365日 = 247円
利率によって遅延損害金の額は大きく変わることがわかります。契約書に記載された利率を必ず確認しましょう。
家賃15万円を2ヶ月滞納した場合の計算例
家賃15万円、遅延損害金の利率が年14.6%、延滞日数が61日(2か月)の場合で計算します。
15万円 × 0.146 × 61日 ÷ 365日 = 3,660円
この条件では、2か月間(61日)の遅延損害金は約3,660円です。
滞納期間が長くなるほど、遅延損害金も増えていきます。たとえば3か月滞納した場合(91日)は以下のようになります。
15万円 × 0.146 × 91日 ÷ 365日 = 5,460円
滞納が長期化すると、遅延損害金だけでも相当な金額になることがわかります。支払いが困難な場合は、早めに貸主や管理会社に相談し、対応策を考えることが大切です。
家賃を滞納したときの流れと起こりうるリスク
家賃の支払いが遅れてしまうと、どのような事態が待っているのでしょう。
家賃を滞納した瞬間に強制退去になるわけではありませんが、放置すれば事態は深刻化します。督促状が届き、連帯保証人への連絡、最終的には契約解除や強制退去という流れをたどる可能性があるのです。
信用情報への影響も見逃せません。今後の生活に大きな支障をきたすこともあります。
滞納から数日後に電話や書面で督促が始まる
家賃の引き落としができなかった場合、銀行から管理会社へ滞納リストが届くのは引き落とし日から3営業日程度です。
この段階での連絡は「督促」というより「確認」の意味合いが強いものとなります。口座残高の不足やうっかりミスの可能性もあるため、まずは穏やかな対応が一般的です。電話やメールで未払いの事実が伝えられ、多くの方は数日以内に振り込みを済ませます。
しかし、
- 電話に出ない
- 折り返しもない
- 振り込みもない
という状態が続くと、現地への手紙投函や内容証明郵便による文書での督促へと段階が進みます。
1ヶ月以上滞納すると連帯保証人に連絡がいく
家賃の滞納が1ヶ月程度に及ぶと、連帯保証人への連絡が行われる段階に入ります。
ただし、連帯保証人への連絡タイミングは一律ではありません。これまでの支払い状況や入居者の対応によって判断されます。普段から支払いを忘れがちでも連絡すればすぐに対応する方であれば、すぐに連帯保証人へ連絡することは少ないでしょう。
一方、これまできちんと支払っていたのに突然滞納リストに上がり、電話もつながらない場合は早い段階で連絡が入ります。家賃だけでなく、本人の安否確認の意味合いもあるためです。
3ヶ月以上の滞納で契約解除や強制退去の可能性
家賃の滞納が3ヶ月以上続くと、貸主側に契約解除事由が発生するとされています。
賃貸借契約は継続的な信頼関係に基づくものです。1〜2ヶ月程度の滞納では信頼関係が破壊されたとは認められにくいのですが、3ヶ月を超えると状況が変わります。この時点で「支払いの意思がない」「信頼関係が破綻している」と判断され、契約解除や明け渡し訴訟が可能になるのです。
契約解除通知が送付されても退去しない場合、裁判所への明け渡し訴訟へと進みます。裁判で貸主側が勝訴すれば、強制執行による退去となります。なお、家賃保証会社を利用している場合、訴訟手続きが事務的かつスピーディーに進む傾向があります。
信用情報に影響し今後の審査に通りにくくなる
家賃滞納が信用情報に記録されると、その後の生活に深刻な影響が及びます。
信販系の家賃保証会社やクレジットカード払いで家賃を支払っている場合、滞納情報が信用情報機関に登録される可能性があります。具体的には、保証会社が代位弁済を行った時点や、2ヶ月以上の滞納が続いた場合に登録されるケースが一般的です。
信用情報機関に事故情報として登録される、いわゆる「ブラックリスト」に載ると、新規のクレジットカード作成や各種ローンの審査に通りにくくなります。
家賃が払えないときの対処法と相談先
家賃の支払いが困難になったとき、最も重要なのは早期の行動です。
放置すれば状況は悪化する一方ですが、適切に対処すれば解決の道は開けます。管理会社への連絡、分割払いの相談、公的支援制度の利用など、選択肢は複数あります。一人で抱え込まず、利用できる制度やサポートを積極的に活用しましょう。
支払いが遅れそうなときは早めに大家や管理会社に連絡
家賃の支払いが難しいと分かった時点で、すぐに大家や管理会社へ連絡することが最優先です。
連絡を入れることで「支払う意思がある」ことを示せます。これは非常に重要なポイントです。連絡が取れない状況が続くと、管理会社側も不安になり、督促を次の段階へ早く進めることになります。逆に、連絡がつけば状況によっては柔軟な対応が期待できるでしょう。
連絡の際は、支払いが遅れる理由といつまでに支払えるかを具体的に伝えてください。一時的な事情であれば、支払期日の延長や分割払いなどの相談に応じてもらえる可能性があります。
分割払いや支払い期日の延長を相談できる場合もある
経済的な事情で一括払いが困難な場合、分割払いや支払期日の延長を申し出ることができます。
大家や管理会社の立場からしても、滞納されるよりは分割でも支払ってもらう方が望ましいものです。ただし、分割払いが認められるかどうかは、これまでの支払い状況や今後の支払い見通しによって判断されます。具体的な支払い計画を提示し、確実に実行できる見込みを示すことが重要です。
家賃保証会社を利用している場合も、早めに連絡して交渉することで支払期日の延長に応じてもらえる可能性があります。次回の家賃が払えないかもしれないと感じた時点で相談すれば、督促の電話やはがきが届かないというメリットもあるのです。
公的支援制度の利用を検討する
家賃の支払いが困難な状況では、公的支援制度の利用も視野に入れましょう。
例えば生活困窮者自立支援法に基づく「住居確保給付金」は、離職や廃業、収入減少により経済的に困窮している方を対象とした制度です。
主たる生計維持者が離職・廃業後2年以内である場合や、個人の責任によらず収入が大幅に減少した場合に、原則3ヶ月間(最長9ヶ月間)、家賃相当額が支給されます。支給額は市区町村ごとに異なりますが、生活保護制度の住宅扶助額を上限として実際の家賃額が支給対象となります。
家賃が安い物件への引越しを検討する
家賃は一般的に「収入の3分の1程度」が理想とされています。家賃負担が大きいと感じる場合は、収入と照らし合わせて、家賃が安い物件への引っ越しを検討しましょう。
引っ越し費用、敷金、礼金といった初期費用も考慮しつつ、家賃負担の軽い物件に引越したほうが、長期的には生活が安定します。
また、経済状況を立て直すために、一旦実家に戻るというのも一つの手段です。





