ファクタリングは違法?合法な仕組みと違法になる契約・手数料を解説

ファクタリングは違法?合法な仕組みと違法になる契約・手数料を解説

ファクタリングは売掛債権を売買する取引で、民法で認められた債権譲渡にあたるため、一般的な契約は違法ではありません。ただし、ファクタリングと名乗っていても、実態が貸付けであれば貸金業法などの規制を受け、違法と判断される場合があります。

資金調達の方法としてファクタリングを検討している経営者や個人事業主にとって、契約が合法かどうかは申込み前に確かめておきたい点です。

この記事では、ファクタリングが合法とされる法的な根拠と、違法と判断されやすい契約・手数料の特徴をまとめました。読み終えると、提示された契約書のどの条項を確認すればよいかが分かります。

目次

ファクタリングは違法ではなく債権譲渡として認められている

一般的なファクタリングは売掛債権を売買する取引であり、法律で認められています。民法は債権を譲り渡せると定めており、2020年4月施行の改正によって、譲渡制限特約が付いた債権でも譲渡の効力は原則として妨げられなくなりました。

売掛債権の売買は金銭の貸付けではないため、取引そのものに貸金業の登録は求められません。ただし、合法とされるのは、売掛債権の売買として実態が伴っている場合です。

名称がファクタリングでも、利用者が自分の資金で返済する仕組みになっていれば、法的な評価は変わります。

売掛債権を売買する契約で融資にはあたらない

ファクタリングは、利用者が売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、その対価として買取代金を受け取る取引です。お金を借りる融資とは、取引の構造が異なります。

項目融資ファクタリング(債権の売買)
受け取るお金借入金売掛債権の買取代金
支払うお金の出どころ借りた人の資金売掛先が支払う代金
利用者の返済義務あり原則なし
主な費用利息手数料

融資では、借りた人が元本と利息を返す義務を負います。一方、債権の売買でファクタリング会社が受け取るのは売掛先が支払う代金であり、利用者自身の返済は原則として前提になっていません。

2社間ファクタリングでは利用者が売掛先から代金を集めてファクタリング会社に渡しますが、引き渡すのはあくまで売掛先が支払った代金です。

ただし、契約書に「債権譲渡契約」や「売買契約」と書かれていても、その名称だけで法的な性質が決まるわけではありません。売掛先が支払わなかったときに誰が損失を負うのかなど、取引の実態に照らして判断されます。

民法第466条で債権の譲渡が認められている

民法第466条第1項は、債権は譲り渡すことができると定めています。同項のただし書きでは、債権の性質が譲渡を許さない場合が例外とされています。

性質上譲渡できない債権とは、債権者が替わると給付の内容まで変わってしまう債権などを指します。これに対し、商品やサービスを提供した企業が取引先に代金を請求する売掛債権は、一定の金額の支払いを求める金銭債権です。支払いを受ける相手が替わっても、売掛先が支払う内容は変わりません。

売掛債権は、一般に譲渡できる債権に当たります。ファクタリング会社が売掛債権を買い取れるのは、民法第466条第1項がこの譲渡を認めているためです。

売掛債権を譲り受けたファクタリング会社は、その債権の新たな債権者になります。

2020年の民法改正で譲渡制限特約付きの債権も原則売却できる

2020年4月1日に施行された改正民法により、譲渡制限特約が付いた債権でも、譲渡は原則として有効になりました。譲渡制限特約とは、取引先との契約で債権の譲渡を禁止したり制限したりする取り決めです。

改正前の民法では、譲渡制限特約が付いた債権の譲渡は原則として無効とされていました。改正後の民法第466条第2項は、譲渡を禁止・制限する意思表示があっても、債権の譲渡は効力を妨げられないと定めています。

一方で、債務者である売掛先を守る仕組みも残されました。譲受人が特約を知っていた場合や、重大な過失で知らなかった場合、売掛先は譲受人への支払いを拒み、元の債権者である譲渡人に支払えば責任を免れます。売掛先が供託によって支払いを済ませることも認められています。

なお、預貯金債権は例外です。預貯金債権に付いた譲渡制限特約は、特約を知っていた、または重大な過失で知らなかった譲受人などに対抗できると定められています(民法第466条の5)。

貸付けではないため貸金業登録は不要

売掛債権の売買として行われるファクタリングは金銭の貸付けではないため、その取引を行うために貸金業の登録は必要ありません。

貸金業法第2条第1項は、貸金業を、金銭の貸付けまたは金銭の貸借の媒介を業として行うものと定めています。同項の「貸付け」には、手形の割引や売渡担保などの方法による金銭の交付も含まれます。貸金業を営む者は、同法第3条により、内閣総理大臣または都道府県知事の登録を受けなければなりません。

売掛先の不払いのリスクを買取会社が負い、利用者に返済を求めない債権の売買は、上記の貸付けには当たらないと考えられています。

登録が必要かどうかは、事業者が「ファクタリング会社」と名乗っているかどうかではなく、個々の取引の中身で判断されます。同じ事業者の取引でも、債権の売買として行う契約と、実質的に貸付けにあたる契約とでは扱いが異なります。

ファクタリング業を直接規制する法律の現状

一般的な債権買取型のファクタリングを対象とする専用の業法や許可制度は、2026年10月時点で設けられていません。取引は、民法などの一般的な法律に基づいて行われています。

2020年に衆議院へ提出された質問主意書でも、ファクタリング業には業法がなく、免許・許可・登録を要しない点が指摘されました。

この質問に対する政府の答弁書では、ファクタリングのうち経済的に金銭の貸付けと同様の機能を持つものを業として行う場合は貸金業に該当し、登録が必要であると示されました。

 あわせて、出資法第7条に定める「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法」による金銭の交付に当たるものは、金銭の貸付けとみなされ、高金利の処罰規定などが適用されるとしています。

専用の業法がなくても、実質が貸付けである取引には、貸金業法や出資法などの既存の法律が適用されます。

ファクタリングが違法と判断されやすい契約の特徴

ファクタリングと名乗る契約でも、実態が金銭の貸付けであれば、貸金業法や出資法などの規制対象になり得ます。
判断の中心になるのは、売掛先が支払わなかったときの損失、つまり回収のリスクを誰が負うかです。

買取会社がリスクを負わず、最終的に利用者から資金を回収する仕組みであれば、債権の売買ではなく貸付けと評価される可能性が高まります。

ただし、償還請求権、買戻し義務、分割払い、担保などの条項が一つあるだけで、直ちに違法と決まるわけではありません。手数料の水準や回収の方法も含め、取引全体の実態から判断されます。

償還請求権で売掛金の回収責任を利用者に負わせる契約

償還請求権とは、売掛先が代金を支払わない場合に、買取会社が利用者に対して支払いを求められる権利です。償還請求権がない契約は、ノンリコースと呼ばれます。

償還請求権がある契約では、売掛先が倒産しても、買取会社は利用者から代金に相当する額を回収できます。売掛先の信用リスクを実質的に負うのは利用者であり、取引の経済的な機能は、売掛債権を担保にお金を借りる場合と変わりません。そのため、債権の売買ではなく、貸付けに当たるかが問題になります。

金融庁は、ファクタリングが貸金業に該当するかについて、契約書にノンリコースの規定があるかといった形式だけでなく、経済的な側面や実態に照らして判断されると示しています。

契約書でノンリコースとされていても、売掛先に支払いが滞る兆候がないことなどを利用者に保証させる条項がある場合、実質的に利用者へ債務の保証を求めていると評価され、貸付けに当たると判断された裁判例もあります。

売掛先の不払い時に債権の買戻しを求める契約

買戻し条項とは、売掛先が期日に支払わなかった場合などに、利用者がファクタリング会社から債権を買い戻す義務を負う契約条項です。買戻しの金額は契約で定められ、利用者は売掛先からの入金がなくても、自分の資金から支払わなければなりません。

この条項がある契約では、売掛先が支払えなくなっても、ファクタリング会社は利用者から資金を回収できます。金融庁は、譲渡した債権の回収が売主である利用者に委託され、利用者が集金できなかった場合に債権を買い戻すこととされている取引などについて、貸金業に該当するおそれがあるとしています。

2社間ファクタリングでは、売掛先からの代金回収を利用者が引き受けるため、買戻し条項の有無が問題になりやすくなります。

ファクタリング会社が不払いのリスクを負わず、売掛先が支払わなくても利用者から資金を回収できる仕組みであれば、契約の名称が売買であっても、実質的な貸付けと判断される可能性があります。

分割払いや担保の提供を求め貸付けとみなされやすい契約

債権の買取りと称しながら、利用者の分割払いや、不動産などの担保、代表者の保証による回収を前提にしている取引は、貸付けとみなされやすい契約です。

債権の売買であれば、ファクタリング会社が受け取るのは売掛先が支払う代金です。利用者が毎月一定額を支払う契約は、売掛先の支払いとは関係なく、利用者自身がお金を返す仕組みになっています。担保や保証も、売掛先が支払わなかったときの損失を利用者の財産で穴埋めできるようにする点で、融資の担保と同じ働きを持ちます。

金融庁は、契約書に債権譲渡契約と定められた取引であっても、経済的に貸付けと同様の機能を持つものは貸金業に該当するおそれがあるとしています。実質的な目的が資金の貸付けであれば、契約の名称にかかわらず、貸金業法上の問題が生じ得ます。

ただし、分割払いや担保の条項があることだけで、違法と決まるわけではありません。たとえば、債権が実在することや二重に譲渡していないことを保証させる条項は、利用者による虚偽の申込みを防ぐ目的で設けられる場合もあります。

実質的な貸付けを貸金業の登録なしで行う取引

実態が金銭の貸付けで、業として反復継続して行う場合は、貸金業法第3条に基づく登録が必要です。登録を受けずに貸金業を営むことは同法第11条第1項で禁止されており、違反すれば刑事罰の対象になります。

ファクタリングを装った取引も例外ではありません。実質的な貸付けと判断された場合、ファクタリング会社が貸金業の登録を受けていなければ、無登録営業の問題が生じます。加えて、手数料が貸付けの利息とみなされれば、利息制限法や出資法の上限金利による規制も受けることになります。

貸金業の登録を受けているかどうかは、金融庁の登録貸金業者情報検索サービスで確認できます。

ファクタリングの手数料が違法性の判断に関わるケース

ファクタリングの手数料は、金額が高いというだけで違法になるものではありません。債権の売買で差し引かれる手数料は、債権を買い取る対価の一部であり、お金を借りたときの利息とは法的な性質が異なります。そのため、利息制限法や出資法が定める貸付金利の上限は、債権の売買にはそのまま適用されません。

一方で、取引の実態が貸付けと判断されると、手数料という名目で受け取ったお金も利息として扱われ、上限金利の規制を受けます。手数料が違法性の判断に関わるのは、取引が貸付けに当たるかを見極める場面と、貸付けと判断された後の場面です。

手数料には法律上の一律の上限がない

債権の売買として行われるファクタリングの手数料には、貸付金利のような一律の法定上限がありません。利息制限法や出資法の上限金利は、金銭の貸付けを対象とした規制です。売掛債権の売買はお金の貸し借りではないため、手数料率が一定の割合を超えたことだけを理由に、違法とは判断できません。

政府も2020年の答弁書で、利息制限法の上限を超える水準の手数料が発生するファクタリング契約について、契約を無効とする規定を設けることは現時点で考えていないと答えています。同じ答弁書では、ファクタリングのうち金銭の貸付けに該当するものは、名目を問わず、利息制限法の利率で計算した金額を超えた部分が無効になるとも示されました。

ただし、法定の上限がないことと、どのような料金設定でも問題がないことは別の話です。手数料の水準は、取引が債権の売買か貸付けかを判断する材料の一つになります。また、事前の説明と異なる費用を請求された場合などは、上限の有無とは別に、契約上のトラブルとして扱われます。

高額な手数料は貸付けかどうかを判断する要素になる

額面に比べて買取代金が著しく低い場合、その差額の大きさは、債権の売買か貸付けかを判断する材料になり得ます。金融庁も注意喚起の中で、ファクタリング業者から受け取る債権の買取代金が債権額に比べて著しく低額であるケースは、偽装ファクタリングの疑いがあるとしています。

債権の売買における手数料には、売掛先が支払わないリスクをファクタリング会社が引き受ける対価という側面があります。ところが、不払いのリスクを利用者が負っているのに高額な手数料が差し引かれている場合、その差額は債権を買い取る対価というより、お金を貸した見返りとしての性質を帯びます。

裁判例でも、手数料の水準だけで結論を出すのではなく、不払いのリスクを誰が負っているか、利用者に買戻しの義務があるかなどを合わせて考慮しています。債権の売買と認めた裁判例では、リスクが買取会社に移っていることに加え、差額が担保目的をうかがわせるほど大きくないことが判断材料の一つとされました。

手数料の高さは、ほかの契約条件と組み合わせて評価される要素です。

貸付けと判断されると利息制限法や出資法が適用される

実質的な貸付けと判断された場合、手数料という名目で受け取ったお金は利息として扱われる可能性があります。利息制限法第3条は、金銭の消費貸借で債権者が受け取る元本以外の金銭を、礼金、割引金、手数料、調査料などの名義を問わず利息とみなすと定めています。ただし、契約の締結や債務の弁済にかかる費用は、この規定の対象から除かれます。

利息制限法第1条の上限利率は、元本の額に応じて次のとおりです。上限を超えた利息の契約は、超過部分が無効になります。

元本の額上限利率(年)
10万円未満20%
10万円以上100万円未満18%
100万円以上15%

出資法第5条は、年109.5%を超える利息の契約を刑事罰の対象とし、業として貸付けを行う者については年20%を超える利息の契約も処罰の対象としています。同法第7条は、手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法による金銭の交付を、金銭の貸付けとみなすと定めています。

なお、これらの上限利率が問題になるのは、取引が貸付けと判断された場合です。債権の売買として行われるファクタリングの手数料率を、そのまま利息制限法の利率と比べて違法かどうかを判断することはできません。

2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違法性

2社間か3社間かという契約方式だけで、ファクタリングが合法か違法かは決まりません。

2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社だけで契約する方式です。3社間ファクタリングでは売掛先も加わり、債権譲渡を承諾したうえで、売掛先がファクタリング会社に直接支払います。

2社間契約は売掛先の承諾がないことから違法と誤解されることがありますが、民法上、債権譲渡そのものに売掛先の承諾は必要ありません。反対に、3社間契約であっても、利用者が実質的に返済の義務を負う内容であれば、貸付けに当たるかが問題になります。

どちらの方式でも、取引の実態と、同じ債権を二重に譲渡していないかが判断の分かれ目です。

2社間契約は売掛先の承諾がないだけでは違法にならない

2社間ファクタリングでは、売掛先の事前承諾を得ずに債権譲渡契約を結ぶ場合があります。債権譲渡は、譲渡人である利用者と譲受人であるファクタリング会社の合意で成立するため、売掛先の承諾がないことだけで契約が違法や無効になるわけではありません。

ただし、契約が成立することと、譲渡を売掛先やほかの第三者に主張できるかどうかは、別に考える必要があります。民法第467条第1項は、債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をするか、債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗できないと定めています。同条第2項によると、債務者以外の第三者に対抗するには、通知や承諾を確定日付のある証書で行わなければなりません。

2社間ファクタリングでは、売掛先に通知しない代わりに、法人が行う債権譲渡について債権譲渡登記を利用する場合があります。債権譲渡登記をすると、債務者以外の第三者との関係で、確定日付のある証書による通知があったものとみなされます。

3社間契約でも取引の実態によって判断が変わる

3社間ファクタリングだからといって、契約の適法性が保証されるわけではありません。売掛先が譲渡を承諾し、ファクタリング会社に直接支払う形は、債権の売買としての外形を整えやすい方式です。それでも、法的な性質は、売掛先が譲渡を知っているかどうかではなく、契約の中身で判断されます。

たとえば、売掛先が期日に支払わなかった場合に、利用者が全額を支払う義務や債権を買い戻す義務を負う契約が考えられます。この場合、売掛先が譲渡を承諾していても、不払いのリスクを最終的に負うのは利用者です。ファクタリング会社が損失を負わずに利用者から資金を回収できる仕組みであれば、貸付けに当たるかが問題になります。

3社間契約で確認したいのは、売掛先が支払わなかったときに利用者が負う責任の範囲です。

売掛債権の二重譲渡は法的責任を問われるおそれがある

同じ売掛債権を複数の相手に譲渡すると、譲受人どうしの権利が競合し、売掛先がどちらに支払うべきかをめぐってトラブルが生じます。2社間ファクタリングは売掛先に通知しないことが多いため、利用者が同じ債権を別のファクタリング会社や金融機関に譲渡しても、すぐには発覚しません。

二重譲渡があった場合、どちらの譲受人が優先するかは、民法第467条の対抗要件によって決まります。確定日付のある証書による通知・承諾や、債権譲渡登記を先に備えた譲受人が優先するのが原則です。劣後した譲受人は優先する譲受人に権利を主張できず、買取代金を回収できなくなるおそれがあります。

利用者の側は、民事上、譲受人から損害賠償などを求められる可能性があります。さらに、二重譲渡を隠して買取代金をだまし取る意図があったと認められれば、詐欺罪などの刑事責任が問題になる場合もあります。

もっとも、二重譲渡の事実だけで犯罪が成立するわけではなく、利用者の行為や意図など具体的な事情によって判断されます。

給料ファクタリングが貸金業に該当する理由

給料ファクタリング(給与ファクタリング)は、労働者が勤務先から受け取る予定の賃金債権を対象とする取引で、事業者向けの売掛債権の買取りとは法的な扱いが異なります。

労働基準法は賃金を労働者本人に直接支払うよう定めているため、賃金債権を買い取った業者は、勤務先から代金を回収できません。業者が資金を回収する相手は結局労働者本人になり、取引の実質はお金を貸して返してもらう関係と変わらなくなります。

金融庁は、給料ファクタリングを業として行うことは貸金業に該当すると公表しています。ただし、給料ファクタリングの違法性は、事業者向けのファクタリングにそのまま当てはまるものではありません。

事業者向けの債権買取とは仕組みが異なる

事業者向けのファクタリングと給料ファクタリングでは、対象とする債権と、業者が資金を回収する相手が異なります。

項目事業者向けファクタリング給料ファクタリング
利用者企業・個人事業主会社員などの労働者
対象の債権取引先に対する売掛債権勤務先から受け取る賃金債権
本来の支払者取引先(売掛先)勤務先(使用者)
業者が回収するお金売掛先が支払う代金労働者本人が支払うお金

事業者向けのファクタリングでは、売掛先が代金を支払えば、業者の回収は完了します。2社間ファクタリングで利用者が代金を引き渡す場合も、渡すのは売掛先が支払ったお金です。

これに対し、給料ファクタリングでは、業者が労働者に金銭を渡した後、給料日などにその労働者本人から支払いを受けて回収する仕組みが使われています。

金融庁も、給与ファクタリングを、賃金債権を買い取って金銭を交付し、その労働者を通じて資金の回収を行うものと説明しています。

回収のために労働者自身が支払いをする点が、事業者向けのファクタリングとの大きな違いです。

賃金の直接払いを定めた労働基準法との関係

労働基準法第24条第1項は、賃金は通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならないと定めています。

この直接払いの原則があるため、労働者が賃金債権を他人に譲渡しても、勤務先は賃金を労働者本人に支払わなければなりません。最高裁判所の昭和43年3月12日判決でも、賃金債権の譲受人は、自ら使用者に支払いを求めることは許されないとされました。

そのため、給料ファクタリングの業者は、賃金債権を買い取っても勤務先から直接回収できません。業者が資金を取り戻すには、労働者本人に債権を買い戻させるなど、労働者から支払いを受けるほかない状況に置かれます。

この構造によって、取引の実質は「労働者にお金を渡し、後日本人から返してもらう」関係に近づきます。給料ファクタリングが貸付けと評価される理由は、この回収の仕組みにあります。対抗要件を備えれば売掛先に直接支払いを求められる事業者向けのファクタリングとは、この点で前提が異なります。

金融庁が示した給与債権の買取りに関する見解

金融庁は令和2年3月6日、給与ファクタリングを業として行うことは貸金業に該当すると公表しました。金融庁の説明では、給与ファクタリングとは、業として、労働者が使用者に対して持つ賃金債権を買い取って金銭を交付し、その労働者を通じて資金の回収を行うものを指します。

貸金業の登録を受けずにこうした業務を営む者は違法なヤミ金融業者であるとして、利用しないよう注意を呼びかけています。

法的な評価を左右するのは、取引の名称ではなく実態です。「給料の買取り」と称していても、労働者に金銭を渡し、後日その労働者本人から回収する仕組みであれば、金銭の貸付けとして扱われます。

金融庁の注意喚起では、「借金ではありません」といった誘い文句に注意するよう示されています。宣伝で借金ではないと説明されていても、取引の実態が貸付けであれば、貸金業法の規制を受けることに変わりはありません。

ファクタリングの違法性が争われた主な裁判例

ファクタリングと称する取引が債権の売買か実質的な貸付けかは、実際の裁判でも争われてきました。給料ファクタリングについては、最高裁判所が貸付けに当たると判断しています。事業者間の取引については、債権の売買と認めた裁判例と、貸付けに当たるとした裁判例の両方があります。

結論を分けたのは契約書の名称ではなく、売掛先が支払わなかった場合の損失を誰が負うかといった取引の実態です。裁判例は個別の事情を踏まえた判断であり、似た名称の契約に同じ結論が当てはまるとは限りません。

給料ファクタリングを貸付けと判断した最高裁決定

最高裁判所第三小法廷は令和5年2月20日、給料ファクタリングと称する取引に基づく金銭の交付が、貸金業法2条1項と出資法5条3項にいう「貸付け」に当たると判断しました。事件番号は令和4年(あ)第288号で、原審は札幌高等裁判所です。

事案は、東京都知事の登録を受けずに、業として令和2年3月から7月までの間に969回、合計504名の顧客に金銭を交付したことなどが、貸金業法違反と出資法違反に問われたものです。取引の内容は、顧客の賃金債権の一部を額面から4割程度割り引いた額で譲り受け、その金額を顧客に交付するというものでした。

契約上、使用者の不払いの危険は業者が負うとされ、希望する顧客は買戻し日に額面額で債権を買い戻せる定めになっていました。実際には、すべての顧客について買戻し日が定められ、勤務先への債権譲渡通知は留保されていました。

決定は、労働基準法24条1項の趣旨から、賃金債権の譲受人は自ら使用者に支払いを求められないと指摘しました。そのうえで、業者は顧客に買い戻させるなどして顧客から回収するほかなく、顧客も譲渡を勤務先に知られないよう事実上買い戻さざるを得なかったと認めています。

形式的には債権譲渡の対価であっても、実質的には返済の合意がある金銭の交付と同様の機能を持つとして、「貸付け」に当たると結論づけました。

債権の売買として貸金業法の適用が否定された裁判例

東京地方裁判所令和2年9月18日判決(金融法務事情2176号68頁)は、事業者とファクタリング業者との取引について、貸金業法の適用を否定した裁判例です。

事案は、株式会社である利用者とファクタリング業者2社との間の契約が争われたものです。このうち1社との間では、売掛債権の売買契約と、利用者が売掛先からの取立金を代理受領して速やかに業者へ引き渡す業務委託契約が組み合わされていました。

金融庁の注意喚起では、この判決が次の事情を総合的に考慮し、貸金業法は適用されないと判断した事案として紹介されています。

  • 業者は償還請求権を持たず、利用者も債権の買戻しを予定していないことなどから、実質的にも売掛先の不払いリスクが業者に移転していると評価できること
  • 対抗要件の具備は猶予されていたものの、業者の判断で具備することが可能だったこと
  • 債権額面と売買代金の差額が、担保目的を推認させるほど大幅なものではないこと

利用者が回収した代金を業者に引き渡す仕組みがあっても、不払いのリスクが業者に移っていれば、債権の売買と評価され得ることを示した例といえます。

事業者間の取引が貸付けとされた裁判例

金融庁の注意喚起にも記載されている大阪地方裁判所平成29年3月3日判決は、事業者間でファクタリングとして行われた取引を、金銭消費貸借契約に準じるものと判断した裁判例です。

判決では業者が譲渡対象債権の不払いリスクをほとんど負っていないことや、債権の額面とは無関係に金員の授受がされていたことなどが考慮されました。

金融庁は、事業者間の取引が貸金業法上の貸付けに当たるなどと判断された例として、ほかにも次の裁判例を挙げています。

裁判例考慮された主な事情
東京高裁
令和3年7月1日判決
売掛先が支払わなかった場合に、利用者が債権額以上の金額を業者に支払う旨の公正証書を作成するなど、業者が不払いのリスクを負っていなかった
名古屋地裁
令和3年7月16日判決
契約上は利用者が売掛先の資力を担保しないとされていたが、債権の性質や支払日までの期間の短さから、不払いの可能性は極めて低かった

いずれの裁判例でも、契約書の形式より、業者が実際に不払いのリスクを負っていたかどうかが重視されています。

裁判例に共通する回収リスクの移転という判断基準

紹介した裁判例を通じて重視されているのは、売掛先が支払わなかった場合の損失を誰が負うかという点です。損失を業者が負っていれば債権の売買と評価されやすく、損失が最終的に利用者に戻る仕組みであれば、貸付けと評価される方向に傾きます。

判断材料になり得る主な要素売買と評価されやすい事情貸付けと評価されやすい事情
償還請求権ないある、または実質的に同じ働きをする条項がある
買戻し義務予定されていない義務がある、または事実上買い戻さざるを得ない
買取代金と債権額の差担保目的をうかがわせるほど大きくない債権の額面と無関係に金額が決まっている
対抗要件の扱い業者の判断で備えられる通知が留保され、業者が自ら回収できない

これらの要素は、一つだけで結論が決まるものではありません。裁判所は、契約条項と実際の取引の進め方を合わせて見たうえで、取引全体の実態から総合的に判断しています。

契約書にノンリコースと書かれていても、実態として利用者が損失を負う仕組みであれば、貸付けと評価されることがあります。

ファクタリング契約の適法性を確認するための項目

ファクタリング契約が適法な債権の売買として組まれているかは、契約書の記載からある程度確かめられます。確認したいのは、譲渡する債権と買取代金、手数料の内訳、遅延損害金や違約金の定め、回収方法と入金後の流れの4項目です。

いずれの項目も、取引が債権の売買として成り立っているか、利用者に想定外の負担が生じないかを判断する材料になります。

ただし、契約書の文言が整っていても、それだけで適法性が保証されるわけではありません。実際の取引の進め方が契約書と異なれば、法的な評価も変わります。契約書の確認は、取引の実態を見極めるための出発点です。

契約書に譲渡する債権と買取代金が明記されているか

契約書では、どの売掛債権を譲渡するのかが特定できる形で書かれているかを最初に確認します。

債権の特定に必要な主な記載
  • 売掛先の名称
  • 債権額
  • 支払期日
  • 請求書の番号や取引内容など、債権の発生原因が分かる情報

債権が特定されていないと、どの代金をファクタリング会社に引き渡すべきかが曖昧になります。譲渡の対象にどの売掛金が含まれるのかをめぐって、後から争いになるおそれもあります。手元の請求書と契約書の記載を照らし合わせ、売掛先名や金額、期日が一致しているかを確かめてください。

あわせて、買取代金の金額と支払条件も見落とせない項目です。買取代金がいくらで、いつ、どの口座に支払われるのかが具体的に書かれているかを見ます。

「審査後に決定」「別途通知」などの記載だけで金額が空欄になっている場合は、署名前に確定した金額を書面で示してもらいましょう。

手数料の内訳と算出方法が書面で示されているか

手数料については、金額や料率だけでなく、どのように算出したのかが書面で示されているかを確認します。

確認項目見るべき内容
手数料の金額・料率債権額に対して何%か、金額はいくらか
算出方法どの金額を基準に、どのような計算で手数料を出しているか
別途かかる費用事務手数料、債権譲渡登記の費用、振込手数料などの有無と金額
差し引かれる時期買取代金から差し引くのか、後から請求されるのか

確認の基本は、額面と買取代金の差額がどう計算されているかを把握することです。たとえば、債権額から手数料と各種費用を差し引くと契約書の買取代金と一致するか、自分で計算して確かめます。計算が合わない場合や、差額の中に説明のない部分がある場合は、その内訳を書面で求めてください。

内訳が示されないまま「手数料込み」とだけ書かれていると、どの費用にいくら払っているのかが分かりません。取引条件が透明かどうかは、利用者が自分で差額の内訳を説明できる状態になっているかで判断できます。

遅延損害金や違約金の定めが過大になっていないか

契約違反や送金の遅れがあった場合の遅延損害金、違約金、損害賠償の条項も、署名前に確かめておきたい項目です。これらの条項は、問題が起きたときに利用者が負う金額を左右します。

確認したい3点
  • どのような行為が対象になるか(送金の遅れ、債権の二重譲渡、虚偽の申告など)
  • 金額の算出方法(日割りの割合、一律の金額、債権額に対する割合など)
  • 上限が定められているか

対象となる行為が「契約に違反した場合」とだけ書かれ、具体的に定められていない条項には注意してください。手続きの小さな遅れまで違約金の対象になる可能性があり、利用者の負担が予測できません。

金額についても、債権額を大きく上回る違約金や、上限のない遅延損害金が定められていないかを見ておく必要があります。

もっとも、違約金や損害賠償の定めがあること自体は、ファクタリング契約に限らず多くの契約で見られます。条項が有効かどうかや、請求額が妥当かどうかといった法的な評価は、契約全体の内容や個別の事情によって異なります。

判断に迷う条項がある場合は、署名前に弁護士などの専門家へ確認する方法もあります。

債権の回収方法と入金後の流れが定められているか

売掛先からの代金を誰が受け取り、どのようにファクタリング会社へ渡すのかが、契約書に具体的に定められているかを確かめます。

3社間ファクタリングでは、売掛先がファクタリング会社に直接支払うため、振込先の口座と支払期日が明記されているかを見ます。

2社間ファクタリングでは、利用者が売掛先から代金を受け取り、ファクタリング会社へ送金する形が一般的です。この場合は、次の内容が定められているかを確認してください。

  • 売掛先から入金があってから、何日以内に送金するのか
  • 送金先の口座と送金方法
  • 送金にかかる振込手数料をどちらが負担するのか

送金の期限が曖昧なままでは、いつまでに払えば契約違反にならないのかが分からず、遅延損害金の対象になるかどうかも判断できません。

あわせて確認したいのが、売掛先から期日に入金がなかった場合の取り扱いです。ファクタリング会社が売掛先に請求するのか、利用者が売掛先への督促を求められるのか、利用者に支払いが求められるのかを確かめます。

入金がなかった場合の流れが契約書に書かれていないときは、署名前に担当者へ質問し、回答を書面で受け取っておきましょう。

監修者情報

株式会社トップ・マネジメント
元代表取締役 大野兼司

事業者金融時代に営業職として中小零細企業の資金調達に従事し延べ500人以上の経営者の資金繰り相談を受け、独立し事業者金融業を開業。延べ1000社以上の資金調達を支援してきました。事業者金融を廃業後、2006年に欧米で主流になりつつあったファクタリングに着目し、ファクタリング会社を起ち上げ。現在では日本でも浸透している2社間ファクタリングの仕組みを弊社が作り、これまでに5.5万社以上の中小零細企業の資金繰りを支援して参りました。トップ・マネジメント代表取締役を退任後、現在は合同会社Success Gateにて、これまでに築き上げた金融に関する幅広い知見を活かし、web広告事業や経営コンサルティングを行っています。

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