売掛金回収の方法とは?未払い時の対処法から法的手段まで詳しく解説

売掛金回収の方法とは?未払い時の対処法から法的手段まで詳しく解説

支払期日を過ぎたのに、取引先からの入金がない

経理担当者や経営者にとって、売掛金の未回収は資金繰りに直結する悩みです。売掛金の回収は、いきなり強く請求するのではなく、請求内容に誤りがないかを確かめ、取引先に連絡して理由を聞くところから始めます。

それでも支払われない場合に、内容証明郵便での督促や、支払督促・訴訟といった法的手段を検討する流れです。

この記事を読めば、請求から入金確認までの流れ、時効の基本、入金が遅れたときの対応、法的手段の選び方がわかり、自社がいま何をすべきか判断できます。

目次

売掛金回収とは?請求から入金確認までの業務の流れ

売掛金回収とは、商品やサービスを先に提供し、あとから代金を受け取る「掛取引」で、取引先から約束どおり代金を払ってもらうための業務です。掛取引では、納品から入金までに時間差があるため、売上が帳簿に載っていても、その分の現金はまだ手元にありません。

回収業務は、請求書を送ったら終わりではありません。入金を確認し、売掛金の残高を消し込むところまでが一連の業務です。期日を過ぎた売掛金を放置すると、仕入代金や人件費などの支払いに使える現金が減るうえ、一定期間がたつと時効で回収が難しくなるおそれもあります。取引先ごとに残高と支払期日を記録し、入金状況を追い続けることが欠かせません。

納品から入金消込まで売掛金回収は5段階で進む

売掛金は、商品やサービスを提供して代金を受け取る権利が確定したときに計上し、入金を確認して消し込むと回収完了です。

一般的な業務の流れ

  1. 商品の納品・サービスの提供
  2. 売掛金の計上
  3. 請求書の発行・送付
  4. 入金確認
  5. 入金消込

請求書には、請求金額、支払期日、振込先口座、請求日、取引内容などを記載します。適格請求書として発行する場合は、登録番号などの必要事項も記載してください。発行後は、取引先ごとの請求額と支払期日を売掛金管理表や会計ソフトに登録しておくと、いつ・いくら入金される予定かを把握できます。

入金があったら、銀行の入出金明細と売掛金の残高を照らし合わせます。全額入金、一部入金、入金なしのいずれかを記録し、金額に差があれば理由がわかるまで残高を残しておきましょう。差額を確認せずに消し込むと、未回収分を見落とす原因になります。

消滅時効は原則5年!起算日と古い債権に注意する

2020年4月1日施行の改正民法では、債権は原則として「権利を行使できることを知った時から5年」または「権利を行使できる時から10年」で時効になります。通常の取引では、支払期日に請求できることを把握しているため、支払期日から5年が時効の目安です。

ただし、時効の完成猶予や更新があった場合、または改正前のルールが適用される古い債権の場合は、期限が異なることがあります。改正前は債権の種類によって時効期間が異なっていたため、古い取引の売掛金は契約日や債権の発生日も確認してください。

時効が完成した後に取引先が時効を援用すると、売掛金を請求しても回収できない可能性があります。支払期日と時効の完成時期を取引先ごとに記録し、期限が近づく前に対応できるようにしておきましょう。

売掛金が未回収だと利益があっても支払いに使う現金が足りなくなる

売掛金が予定どおり入金されないと、帳簿上は売上や利益があっても、仕入代金や外注費、人件費、家賃などの支払いに使える現金が不足することがあります。支払期日は売掛金の入金を待ってくれないため、回収が遅れた分だけ手元資金で立て替える期間が長くなります。

未回収額が膨らむと、手元のお金だけでは支払いが追いつかず、金融機関からの借入れや売掛金の早期資金化が必要になる場合もあります。特に、仕入れや外注費を先に支払い、売上代金を後から受け取る業種では、回収遅れが資金繰りに直結します。

税金の計算や納付の時期も、売掛金の入金時期と必ずしも一致しません。たとえば法人税は利益をもとに計算し、消費税も原則として課税取引をもとに申告します。

入金前に納税時期が来ることもあるため、売掛金の回収予定を納税資金の準備にも反映しておきましょう。売上があっても現金が不足すれば、黒字倒産につながるおそれがあります。

売掛金の入金が遅れたときにまず行う初動対応

支払期日を過ぎても入金が確認できないときは、督促状を送ったり法的手段に進んだりする前に、まず事実関係を確かめましょう。

入金がない原因には、請求書のミスや未着、振込名義の違いといった事務的なものもあれば、取引先の資金不足のように支払能力にかかわるものもあります。原因によって取るべき対応は変わり、単純なミスに対して強く督促すると、取引先との関係が悪くなりかねません。

初動対応の順番

  • 請求内容の照合
  • 取引先への連絡
  • 証拠書類の整理
  • 相殺や期限の利益喪失条項など契約条件の確認

この順番で進めれば、原因を切り分けたうえで、次にどの回収方法を選ぶか判断できます。

請求金額と支払期日に誤りがないか照合する

取引先に連絡する前に、請求書を契約書・発注書・納品書と突き合わせ、請求金額、支払期日、振込先口座に間違いがないかを確認します。数量や単価、消費税額、値引きの反映漏れのほか、支払期日が契約どおりの締日と支払サイト(例:月末締め翌月末払い)になっているかも見ておきましょう。

実際には支払われているのに、未入金と勘違いしやすいのは次のようなケースです。

  • 振込手数料が差し引かれ、請求額より少なく入金されている
  • 親会社名や略称で振り込まれ、入金名義が一致しない
  • 複数月分がまとめて振り込まれている
  • 請求書が取引先に届いていない、または担当者に渡っていない

振込手数料は、契約に定めがなければ、支払う側(取引先)が負担するのが民法上の原則です(民法485条)。差額があるときは、契約書で負担者をどう決めているか確認してください。

自社の請求ミスや送り忘れが見つかったら、訂正した請求書を出し直し、あらためて支払期日を取引先とすり合わせます。

取引先に連絡して遅延の理由を聞き取る

請求内容に問題がなければ、取引先の経理担当者に電話やメールで連絡し、入金状況と遅れている理由を聞きます。
返事がない場合や遅れが何度も続く場合は、取引の窓口になっている担当者や責任者にも連絡しましょう。

最初の連絡では、支払いを強く求めるよりも、入金が確認できていない事実と請求内容を伝え、相手の事情を聞くことを優先します。

遅延理由主な状況対応の方向性
支払忘れ支払処理の漏れ支払日を確認する
社内処理の遅延承認待ち、請求書の紛失請求書を再送し、処理予定日を確認する
資金不足支払能力の低下分割払いなどの支払計画を話し合い、回収手段を検討する
請求内容への異議数量・品質・金額への不満異議の内容を確認し、協議する

連絡した日時、相手の名前と役職、遅れている理由、支払予定日は記録に残してください。
電話で決まった内容はメールでも送っておくと、相手の認識を示す記録になり、のちの督促や交渉で役立ちます。

契約書や納品書などの証拠書類をそろえる

督促や法的手段で売掛金を請求するときは、取引先に支払う義務があることを資料で示さなければなりません。入金の遅れがわかった段階で、次の4点を裏付ける書類を集めておきましょう。

契約の成立

契約書、注文書・注文請書、発注書

商品やサービスの提供

納品書、受領書、検収書、作業完了報告書

請求金額

請求書、見積書、単価表

支払期日

契約書や取引基本契約書の支払条件、請求書の記載

取引先から「受け取っていない」「その金額では合意していない」と言われたとき、裏付けとなる資料がなければ、交渉でも裁判でも請求の根拠を示せません。

書面の契約書がなくても、契約は口頭やメールのやり取りで成立します(民法522条2項)。発注のメールやチャット、過去の同じような取引の請求・入金履歴、配送記録などを日付順に整理すれば、取引の経緯を説明する材料になります。

電子データはPDF化して別の場所にも保存しておくと、元のデータが消えた場合にも対応できます。

相殺できる債権がないか調べる

自社が取引先に買掛金などを支払う立場でもあるなら、その支払いと売掛金を同じ金額分だけ差し引く「相殺」で、実質的に売掛金を回収できます。相殺は相手への意思表示だけで効力が生じ、取引先の同意はいりません(民法505条・506条)。

相殺するための条件
  • 互いに金銭債権など同じ種類の債権を持っている
  • 自社の売掛金の支払期日が来ている
  • 法律や契約で相殺が禁止されていない

自社が払う側の買掛金は、支払期日前でも、期日まで支払いを待ってもらえる利益を自ら放棄すれば相殺に使えます。
一方、相殺を禁止する特約がある場合や、自社が負う債務が悪意による不法行為の損害賠償債務である場合などは、相殺できません。

相殺通知書には対象の債権と金額を明記し、送った日付と内容を証明できるよう、配達証明付きの内容証明郵便で送ります。

取引先が破産や民事再生の手続に入ると、相殺できる債権の範囲や時期が法律で制限されることがあります。倒産の兆しが見えた段階で、早めに検討を始めてください。

期限の利益喪失条項が適用できるか確かめる

期限の利益喪失条項とは、支払いの遅れや信用状態の悪化など、契約で決めた事由が起きたときに、取引先が「支払期日まで待ってもらえる利益(期限の利益)」を失い、残りの代金をすぐに支払う義務を負うと定めた条項です。

分割払いや継続的な取引では、まだ期日が来ていない売掛金までまとめて請求できるかどうかが、この条項で決まります。

契約書でチェックする3点
喪失事由

「支払を1回でも怠ったとき」「差押えや破産手続開始の申立てがあったとき」など、どの事実が当てはまるか

喪失の方式

事由が起きただけで当然に失うのか、債権者からの通知や催告が必要か

対象範囲

その契約の債務に限るのか、取引全体の債務に及ぶのか

条項があっても、取引先の状況が喪失事由に当てはまらなければ、一括請求はできません。通知が必要なタイプの条項なら、通知が相手に届いた時点で初めて効果が生じます。

また、契約書に条項がなくても、取引先が破産手続開始の決定を受けたときなどは、民法137条により期限の利益を失います。

ただし、この規定が使える場面は限られているため、まずは自社の契約書の内容を確認することが先決です。

話し合いで売掛金回収を進める具体的な方法

取引先に支払う意思があり、話し合いで解決できそうなら、裁判所を使う前に交渉で回収を進めるのが現実的です。法的手段には時間も費用もかかり、取引関係を続けにくくなる場合もあります。

交渉では、未払いの事実と金額を相手に認めてもらい、支払能力を確かめたうえで、分割払いや担保の追加など無理のない支払条件を決めていきます。

それでも入金がない場合の次の手段が、督促状で最終期限を伝えることです。どの段階でも、口約束で済ませず合意内容を書面に残すことが、未回収を増やさないための前提になります。

債務確認書で未払いの金額と事実を書面に残す

債務確認書は、取引先が「この金額を支払っていない」と認めたことを記録する書面です。電話や面談での口約束だけだと、あとから「そんな話はしていない」「金額が違う」と言われたときに反論しにくくなります。取引先の署名や記名押印がある書面なら、未払いの事実と金額を相手自身が認めた証拠として使えます。

書面に入れる事項
  • 債権者(自社)と債務者(取引先)の名称・住所
  • 未払い金額
  • 対象となる取引(契約日、品目、請求書番号など)
  • 本来の支払期日
  • 作成日と、取引先の署名または記名押印

未払いを認める書面は、法律上の「債務の承認」にあたり、その時点から時効期間があらためて進み始めます(時効の更新、民法152条)。支払条件を変える合意もする場合は、同じ書面にまとめても構いません。

決算書の提出を求めて支払い能力を把握する

支払いの遅れが資金不足によるものと考えられるときは、取引先に決算書や資金繰り表を見せてもらい、実際に払えるのかを確かめます。分割払いや期日延長に応じるかどうかを判断する材料になるためです。

決算書で見る内容
現預金

近いうちの支払いに回せるお金がどれくらいあるか

借入金

返済負担が重くなっていないか

流動負債

1年以内に支払う債務が、現預金や回収予定の売掛金を大きく上回っていないか

利益

本業で利益が出ているか、赤字が続いていないか

純資産

マイナス(債務超過)になっていないか

決算書は前期末時点の数字なので、月次の試算表もあわせて確認できると、直近の状況を判断しやすくなります。

ただし、取引先に資料の提出を強制することはできません。提出を断られた場合は、過去の入金実績や、取引先が示す支払予定の具体性(いつ、どの入金を原資に払うのか)を判断材料にしてください。

分割払いや支払期日の延長を条件付きで認める

一括で払うのが難しい取引先には、分割払いや支払期日の延長を認めることで、回収の見込みを残せます。ただし、条件をつけずに期限だけ延ばすと、そのあいだに取引先の状況が悪くなり、回収できない金額が増えるおそれがあります。

認めるかどうかは、取引先の支払能力と、返済に充てるお金の出どころが具体的に示されているかで判断しましょう。

合意書に残す内容
  • 支払総額と1回あたりの支払額
  • 支払日と支払回数
  • 振込先
  • 支払いが遅れたときの扱い(残額の一括請求、遅延損害金)

期限の利益喪失の定めを入れておけば、支払いが滞ったときに残額をまとめて請求する根拠になります。さらに、合意書を執行認諾文言付きの公正証書にしておくと、支払いが止まったときに訴訟を経ずに強制執行を申し立てられます。合意後は支払日ごとに入金を確かめ、遅れたらすぐに連絡を入れてください。

担保の設定や連帯保証人の追加を求める

取引先の信用状態に不安があるなら、不動産や預金などに担保を設定してもらうか、代表者などに連帯保証人になってもらう交渉も選択肢です。担保や保証があれば、取引先が払えなくなっても、担保の処分や保証人への請求で回収できる可能性が残ります。

ただし、形だけの担保では回収につながりません。不動産なら、登記事項証明書で時価とすでに設定されている抵当権の額・順位を確かめ、自社の取り分が残るかを見ておきましょう。

抵当権は登記の順番で優先されるので、先順位の借入れが大きいほど自社の取り分は少なくなるためです。預金を担保にするには、通常、預け先の金融機関の承諾がいります。保証人についても、資産や収入から実際に支払える人かを確認してください。

保証契約は、保証人が個人か法人かを問わず、書面(または電磁的記録)で結ばないと効力がありません(民法446条)。個人が継続的な取引の代金をまとめて保証する「根保証」では、保証の上限額(極度額)を定めておく必要があります。

取引先が個人に保証を頼む場合、取引先は自社の財産や収支の状況などを保証人に説明しなければならず、これを怠ると保証契約が取り消される場合もあります(民法465条の10)。

なお、公正証書で保証意思を確認する手続きが必要なのは、事業用の借入金などを個人が保証する場合です。売掛金の保証は、通常この手続きの対象になりません。

督促状を送付して最終期限を明示する

電話やメール、支払条件の話し合いを経ても入金がなければ、督促状を送って正式に支払いを求めます。文書で期限を区切ると、自社が回収に本腰を入れていることが取引先に伝わり、請求した事実の記録にもなります。

督促状に書く事項
  • 未払い金額と対象取引(請求書番号など)
  • 本来の支払期日と、まだ入金が確認できていない事実
  • 新たな支払期限(例:本状到着後7日以内)
  • 振込先口座
  • 問い合わせ先(担当部署・担当者名・電話番号)

期限までに入金がなければ法的手段を検討する旨を書き添えるときは、事実を淡々と伝える表現にとどめてください。相手を脅すような書き方は、恐喝や強要と受け取られるおそれがあります。

送付には、特定記録郵便や簡易書留など送った記録が残る方法を選びます。督促状の控えと郵便の受領証は、のちに法的手段へ進むときの資料として保管しておきましょう。

売掛金の支払いに応じないときに取れる法的手段

督促や交渉をしても支払われない場合は、裁判所の手続きなど法的な手段で回収を進めます。主な手段は、内容証明郵便による請求、仮差押え、支払督促、少額訴訟、通常訴訟、強制執行です。

このうち内容証明郵便は請求の証拠を残すためのもので、支払いを強制する力はありません。実際に相手の財産から回収するには、判決などの「債務名義」を取ったうえで、強制執行を申し立てる必要があります。

手続きごとに費用や期間、使える条件が違い、相手に財産がなければ勝訴しても回収できない場合もあるため、債権額と相手の財産状況を見て選ぶことになります。

内容証明郵便で請求した事実を証拠に残す

内容証明郵便は、いつ、どんな内容の文書を、誰から誰あてに出したかを日本郵便が証明する制度です。文書の控え(謄本)が郵便局にも保管されるため、通常の督促状と違って、どんな内容を請求したかを後から争われにくくなります。ただし、証明されるのは文書が存在することで、書かれた内容が正しいことまでは証明されません。

文書には、未払い金額、請求の根拠となる取引(契約日・請求書番号など)、支払期限、振込先を書きます。内容証明だけでは相手が受け取ったことまでは証明できないため、配達証明もあわせて付けておきましょう。窓口のほか、e内容証明を使えばインターネットからも送れます。

気をつけたいのは、内容証明郵便に支払いを強制する効力はない点です。内容証明での請求は時効の「催告」にあたり、時効の完成が6か月猶予されます。その間に訴訟や支払督促などを申し立てなければ、時効は完成してしまいます。猶予期間中にもう一度催告しても、期間は延びません(民法150条)。

仮差押えで取引先の財産を先に押さえる

仮差押えは、判決などを得る前に、取引先の財産を一時的に動かせなくしておく手続きです。判決が出るまでには時間がかかり、その間に預金を引き出されたり財産を処分されたりすると、勝訴しても回収できなくなるおそれがあります。

対象になるのは、銀行預金、取引先が第三者に対して持つ売掛金、不動産などです。申立ては、本案訴訟を扱う裁判所か、仮差押えする財産の所在地を管轄する地方裁判所に行います。申立書のほか、契約書・請求書など売掛金があることを示す資料、財産を押さえる必要性を示す資料、当事者が法人なら登記事項証明書などを提出します。

裁判所に認めてもらうには、売掛金が存在することと、今のうちに財産を押さえておく必要性(保全の必要性)を疎明しなければなりません。認められる場合でも、通常は担保金(保証金)を立てるよう求められます。

仮差押えは財産を凍結するだけの手続きで、この段階では代金を受け取れない点も押さえておいてください。

支払督促を簡易裁判所に申し立てる

支払督促は、金銭の支払いを求める申立てについて、裁判所書記官が書類の審査だけで取引先に支払いを命じる手続きです。裁判所に出向いて審理を受ける必要がなく、手数料も訴訟の半額で済みます。

参照:裁判所を利用する

申立先は、取引先の住所地(会社なら本店所在地など)を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官です。申立書に加えて、当事者目録、請求の趣旨と原因を書いた書面、当事者が法人なら登記事項証明書などを提出します。

取引先が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を申し立てなければ、仮執行宣言を申し立てられます。仮執行宣言の付いた支払督促は、それ自体を根拠に強制執行を申し立てることができる書面です。

なお、仮執行宣言を申し立てられるようになってから30日以内に申し立てないと、支払督促は効力を失います。取引先が異議を申し立てた場合は、請求額に応じて簡易裁判所か地方裁判所の通常訴訟に移ります。

60万円以下なら少額訴訟で早期解決を目指す

請求額が60万円以下なら、簡易裁判所の少額訴訟を使えます。原則として1回の審理で紛争の解決を図る手続きで、言い分と証拠は最初の期日までにすべて出しておく必要があります。

少額訴訟の基本的な流れ
  1. 簡易裁判所に訴状を出し、少額訴訟での審理を求める
  2. 契約書・請求書・納品書など、審理の日にその場で調べられる証拠を用意する
  3. 審理で双方の言い分を聞き、証拠を調べる
  4. 原則として審理の日に判決が言い渡される

言い分が認められても、分割払いや支払猶予を命じる判決になることがあります。判決に不服がある場合は同じ簡易裁判所への異議申立てに限られ、控訴はできません。

ただし、必ず1回で終わるとは限りません。取引先が通常訴訟での審理を求めた場合や、裁判所が少額訴訟に向かないと判断した場合は、通常訴訟に移ります。また、同じ簡易裁判所で少額訴訟を利用できるのは1年に10回までです。

通常訴訟で未払いの売掛代金を請求する

取引先が「払う必要はない」「金額が違う」などと争っている場合は、通常訴訟で裁判所に判断してもらいます。支払督促や少額訴訟と違って請求額に上限はなく、争点が多い事件にも対応できます。

請求額が140万円以下なら簡易裁判所、140万円を超えるなら地方裁判所が担当します。訴える先は原則として取引先の住所地を管轄する裁判所ですが、売掛金のような金銭の支払いは、契約で別の定めがなければ自社の所在地を管轄する裁判所にも訴えを起こせます。

大まかな流れは、訴状の提出、取引先への送達と答弁書の提出、口頭弁論や争点の整理、証拠調べを経て、判決か和解で終わります。

審理は複数回にわたるのが普通で、争いの内容によっては解決まで1年以上かかることもあります。途中で裁判所から和解を勧められ、分割払いなどで合意して終わるケースもあります。

勝訴判決を得ても、取引先に財産がなければ回収はできません。判決は回収の前提となる書類にとどまり、実際にお金を受け取るには強制執行の手続きが別に必要です。

強制執行で預金や売掛債権を差し押さえる

強制執行は、確定判決や仮執行宣言付支払督促などの「債務名義」にもとづいて取引先の財産を差し押さえ、そこから代金を回収する手続きです。財産を凍結するだけの仮差押えと違い、差し押さえた財産から実際にお金を受け取れます。和解調書や、執行認諾文言付きの公正証書も債務名義になります。

預金や、取引先が第三者に対して持つ売掛金を差し押さえる場合の流れ

  1. 債務名義に執行文を付けてもらい、送達証明書を取る(仮執行宣言付支払督促と少額訴訟の判決は、原則として執行文が不要)
  2. 地方裁判所に債権差押命令を申し立てる(少額訴訟の判決などにもとづく場合は、簡易裁判所の少額訴訟債権執行も利用できる)
  3. 裁判所が、銀行や取引先の取引相手(第三債務者)と取引先に差押命令を送る
  4. 取引先に差押命令が届いてから1週間が過ぎると、第三債務者から直接取り立てられる

差し押さえる財産は自社で特定する必要があり、預金なら金融機関名と支店名まで求められます。財産がわからないときは、財産開示手続や、金融機関などから情報を得る「第三者からの情報取得手続」を使えます。申立てには手数料や郵便切手代がかかり、預金残高などが請求額に足りなければ全額は回収できません。

売掛金が回収不能になった場合の対応と会計処理

取引先の資金不足や倒産で売掛金の回収が難しくなったら、

  • これ以上未回収を増やさない
  • 残った債権からできるだけ回収する
  • 回収できない分を正しく処理する

の3つを並行して考えます。具体的には、今後の取引条件の見直し、倒産手続での債権届出、貸倒損失の計上が中心です。

取引先が倒産したからといって、売掛金をすぐに損失として処理できるわけではありません。税務上は回収できないことを示す事実が必要で、手続きの進み具合によって処理できる時期も変わります。

未回収額が大きく、自社の資金繰りまで苦しくなった場合は、公的な貸付や保証制度の利用も検討しましょう。

取引先に支払い能力がない場合は条件を見直す

取引先の資金不足が一時的でなく長引いているなら、これまでと同じ条件で取引を続けるのはやめ、新しい売掛金が増えない形に切り替えます。売掛金は納品した分だけ積み上がるため、支払いが滞っている相手との掛取引を続けると、回収できないおそれのある金額が膨らんでいくからです。

見直しの方法内容
掛取引の停止新規の注文は掛けで受けない
取引限度額の縮小売掛金の残高に上限を設け、超える分は出荷しない
前払い・代金引換への変更代金を受け取ってから納品する
支払サイトの短縮締日から支払日までの期間を短くする

継続的な取引を打ち切る場合は、契約書の解除条項や事前通知の定めも確認してください。

すでにある売掛金については、取引先の決算内容や入金状況をもとに、どこまで回収できそうかを見積もり直します。
見込みがあれば交渉を続け、話し合いでは進まないと判断したら法的手段に切り替えるなど、債権ごとに方針を決めておきましょう。取引を停止した日付は、のちの会計処理でも使うため記録に残しておきます。

取引先が倒産したら手続きの種類に応じて債権届出を行う

取引先が破産や民事再生などの手続きに入ると、個別に支払いを受けたり強制執行したりすることは原則としてできなくなります。代わりに、裁判所の手続きの中で債権を届け出て、配当や弁済を受ける形に変わります。届出をしないと配当を受けられず、民事再生や会社更生では原則として権利そのものを失うおそれもあります。

裁判所や破産管財人などから通知が届いたら、次の点を確認しましょう。

  • 手続きの種類(破産、民事再生、会社更生、特別清算など)
  • 債権届出の期限
  • 届出書の提出先(裁判所、管財人など)
  • 添付書類(請求書、契約書、売掛金の明細など)

通知が届かない場合でも、官報や裁判所への問い合わせで手続きの情報を確かめられます。

届け出ても、売掛金が全額支払われるとは限らず、配当がまったくないケースもあります。担保権を持っていれば、破産や民事再生では原則として手続きの外で担保を実行して回収できますが、会社更生では担保権も手続きの中に組み込まれます。

相殺できる債権がある場合も、手続きごとに相殺できる期限や範囲が決まっているため、届出期限とあわせて確認してください。

貸倒損失として計上できる要件

貸倒損失は、売掛金などの金銭債権が回収できなくなったときに、その金額を損失として処理するものです。
法人税で損金に算入できるのは、国税庁が示す一定の事実が生じた場合に限られます。

支払いが遅れている、取引先が倒産したという事実だけで、自動的に損金にできるわけではありません。取引先の財産状況や手続きの結果から、回収できないことを客観的に示す必要があります。要件を満たさないまま計上すると、税務調査で損金算入を否認され、追加で税金を納めることになりかねません。

計上の根拠として、次のような書類を保存しておきましょう。

  • 契約書、請求書、売掛金の明細など取引の記録
  • 督促状や内容証明郵便の控え、交渉の記録
  • 再生計画の認可決定書や債権者集会の資料など倒産手続の書類
  • 債務免除をした場合は、その通知書の控え

計上できる時期も、区分ごとに決まっています。決められた時期を外れると、その事業年度の損金として認められない場合があります。

法律上・事実上・形式上の貸倒れの違い

貸倒れは、次の3つの区分で要件と計上時期が異なります。

区分主なケース計上の時期・条件
法律上の貸倒れ会社更生法・民事再生法などによる切捨て、債権者集会の協議決定などで合理的な基準により切り捨てられた金額、債務超過が相当期間続く相手への書面による債務免除事実が生じた事業年度に損金算入
事実上の貸倒れ債務者の資産状況や支払能力から、全額が回収できないことが明らかになった明らかになった事業年度に損金経理。担保物があれば処分後
形式上の貸倒れ継続取引先との取引停止後、取引停止時と最後の弁済時などのうち最も遅い時から1年以上経過した/同一地域の売掛債権の総額が取立費用より少なく、督促しても弁済がない売掛債権の額から備忘価額を差し引いた残額を損金経理

事実上の貸倒れは全額が回収不能であることが前提で、一部でも回収の見込みがあれば認められません。形式上の貸倒れの対象は売掛債権に限られ、貸付金は含まれない扱いです。

担保物がある売掛債権や、不動産取引のようにたまたま一度だけ取引した相手への売掛債権も対象外となります。

連鎖倒産を防ぐための公的な貸付・保証制度

取引先の倒産で売掛金が回収できず、自社の資金繰りまで苦しくなったときは、国の制度で資金を確保する方法があります。

代表的なのが、中小機構が運営する経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)と、信用保証協会のセーフティネット保証1号です。

項目経営セーフティ共済セーフティネット保証1号
仕組み積み立てた掛金をもとに中小機構から借り入れる金融機関からの借入れを信用保証協会が保証する
事前加入必要(加入後6か月以上経過していること)不要
対象となる倒産取引先の法的整理、取引停止処分、一定の私的整理など経済産業大臣が指定した大型倒産事業者

借入額は、回収困難となった売掛金等の額と、掛金総額の10倍に相当する額のいずれか少ない額が上限で、最高8,000万円です。無担保・無保証人・無利子ですが、貸付けには一定の審査があります。また、貸付額の10分の1に相当する掛金の権利は消滅します。請求は取引先の倒産日から6か月以内に行う必要があります。

参照:中小機構 中小企業倒産防止共済 重要事項確認書

セーフティネット保証1号は、指定事業者に50万円以上の売掛金債権がある場合などに、市区町村長の認定を受けて利用します。認定を受けると、信用保証協会が一般保証とは別枠で借入額の100%を保証する仕組みです。

参照:岸和田市 セーフティネット保証1号

ただし、融資を受けられるかは金融機関と信用保証協会の審査で決まるため、条件は市区町村や共済の窓口で確認してください。

売掛金回収で押さえておきたい時効と費用の考え方

売掛金の回収は、「いつまでに動けばよいか」と「いくらかけて回収するか」の2つを押さえて進めます。時効は放っておけば完成してしまいますが、催告や債務の承認、裁判上の請求などによって、完成を先送りしたり期間を数え直したりできます。

一方、法的手続きには手数料がかかり、手続きによっては担保金や専門家への報酬も必要です。請求額が大きくても、相手に財産がなければ回収できる金額は限られます。

時効までの残り期間、手続きの費用、回収できそうな金額を比べたうえで、自社で対応するか専門家に任せるかを決めるのが現実的です。

催告による時効の完成猶予と債務承認による更新

時効の進行を止める方法には、完成を一時的に先送りする「完成猶予」と、時効期間をゼロから数え直す「更新」の2種類があります。支払いを求める「催告」は完成猶予に、取引先が債務を認める「承認」は更新にあたります。

項目催告承認
効果完成猶予更新
期間催告の時から6か月間、時効が完成しない承認の時から時効期間が新たに進む
取引先の協力不要必要
主な方法督促状や内容証明郵便による請求一部の支払い、支払猶予の申し入れ、債務確認書への署名

催告は、猶予期間中にもう一度行っても期間は延びません(民法150条)。6か月のうちに訴訟や支払督促を申し立てれば手続き中は時効が完成せず、判決などで権利が確定した時点で時効が更新されます。

期限が迫っているのに承認を得られない場合は、早めに法的手続きを検討してください。なお、話し合いを続けることを書面で合意すれば、原則として合意から1年間、時効の完成を猶予できる制度もあります(民法151条)。

法的手続きにかかる費用と回収見込額を比べる

法的手続きを使うかどうかは、請求額ではなく、実際に回収できそうな金額から費用を差し引いて判断します。

手続き主な費用
支払督促申立手数料
(例:請求額100万円で書面7,700円、電子7,500円)
訴訟
(少額訴訟を含む)
申立手数料
(例:請求額100万円で書面12,500円、電子11,400円)
仮差押え申立手数料、郵便切手、裁判所が定める担保金
強制執行
(債権差押え)
申立手数料4,000円
(債権者・債務者各1名、債務名義1通の場合)、執行文付与手数料、郵便切手など

参照:債務名義に基づく差押え、手数料額早見表

2026年5月21日以後に起こした民事訴訟では、郵便費用が申立手数料に一本化され、郵便切手を別に納める必要はなくなりました。

参照:手続案内

仮差押えの担保金は、本案で勝訴するなど一定の条件を満たせば担保取消しの手続きで取り戻せますが、それまでの間はまとまった資金が拘束されます。弁護士に依頼すれば、着手金や報酬も加わります。

費用と期間を見積もったら、相手の財産状況と照らし合わせます。勝訴しても、取引先の預金や売掛金が見つからなければ、費用だけがかかって回収できない結果になりかねません。取引銀行や取引相手など、差押えの対象になりそうな財産の手がかりがあるかを事前に確かめたうえで、手続きを選んでください。

弁護士や司法書士に依頼する目安

次のような場合は、自社だけで対応せず、専門家への相談を検討しましょう。

  • 取引先が売掛金の存在や金額を争っている
  • 請求額が大きく、回収できないと経営への影響が大きい
  • 取引先の倒産や財産隠しのおそれがある
  • 時効の完成が近い
  • 仮差押えや強制執行など、手続きが複雑な手段を使う必要がある

相談先は、請求額と使う手続きで選びます。弁護士は請求額に制限なく、交渉から訴訟、強制執行まで代理できます。司法書士のうち法務大臣の認定を受けた認定司法書士は、請求額140万円以下の簡易裁判所の訴訟や交渉を代理できますが、それを超える事件や地方裁判所の訴訟では代理人になれません。

なお、弁護士や認定司法書士以外の業者が報酬を得て債権回収の交渉を代行することは、法律で原則として禁止されています。

費用は事務所ごとに自由に決められており、相談料、着手金、成功報酬(回収額に応じた報酬)、実費などで構成されるのが一般的です。

依頼する前に見積もりを取り、回収見込額から費用を差し引いても手元に残るかを確かめてから判断してください。

売掛金の未回収を防ぐために日頃からできる対策

売掛金の未回収は、問題が起きてから動くよりも、取引を始める前から入金を確認するまでの各段階で防ぐほうが負担を抑えられます。

取引先の信用を確かめて取引額に上限を設け、支払条件を契約書で固め、請求と入金を定期的に点検する流れが基本です。それでも残るリスクには、前払いや売掛保証などで備える方法もあります。

なお、売掛金を期日前に現金化する早期資金化は資金繰りを改善する手段で、未回収を防いだり、取引先に代わって回収したりするものではありません。回収の確実性を高める対策と、入金のタイミングを早める対策は分けて考えましょう。

取引開始前の与信管理と取引条件の設定

新しい取引先と掛取引を始める前に、相手が約束どおり払えるかを調べ、取引できる金額の上限(与信限度額)を決めておきます。最初の条件を緩くすると、相手の信用状態がわからないまま売掛金が積み上がり、後から条件を厳しくするのも難しくなるためです。

確認する主な情報

情報源確認できること
決算書売上や利益の推移、借入金、債務超過かどうか
信用調査会社の情報評点、業歴、支払状況などの評価
登記事項証明書設立年月日、資本金、役員や本店所在地の変更履歴
取引実績・業界の評判他社との取引期間、支払遅延の有無

与信限度額は、取引先の規模や財務内容、自社がどこまで損失に耐えられるかをもとに、取引先ごとに設定します。信用状態に不安がある相手とは、少額の取引から始めたり、支払サイトを短くしたりする方法もあります。

既存の取引先も、決算期ごとなどに信用状況を見直しましょう。支払いの遅れが増えた、急に注文量が膨らんだ、役員が頻繁に変わるといった兆候があれば、限度額や支払条件を調整してください。

契約書に支払条件と遅延損害金を明記する

支払いをめぐる認識のずれを防ぐには、支払期日、支払方法、振込手数料の負担者を契約書に書いておくのが基本です。継続的な取引では、取引基本契約書にまとめて定めておくと、取引のたびに条件を確認する手間が省けます。

あわせて、支払いが遅れたときの定めも検討しておきましょう。

  • 遅延損害金:支払期日の翌日から実際に支払われる日までの日数に応じて上乗せする金額の利率
  • 期限の利益喪失条項:支払遅延などがあった場合に、残額をまとめて請求できる定め
  • 契約解除や出荷停止の条件

遅延損害金の利率を決めていない場合は民法の法定利率で計算され、2026年4月1日から2029年3月31日までは年3%です。

参照:法務省 令和8年4月1日以降の法定利率について

利率は当事者の合意で決められますが、取引内容によっては法律の制限を受けます。

たとえば取引先が消費者の場合、消費者契約法により、年14.6%を超える部分の遅延損害金は無効となります。取適法(中小受託取引適正化法)の対象となる取引では、受託側の代金から振込手数料を差し引くことが代金の減額にあたるおそれがあり、委託側が支払いを遅らせた場合には年14.6%の遅延利息が定められています。相手に一方的に不利な条項は、無効や法律違反とされる場合がある点にも注意してください。

請求書の発行と入金状況を定期的に点検する

請求漏れや入金遅れを早く見つけるには、請求と入金の状況を一覧にし、決まったタイミングで点検する仕組みをつくります。売掛金管理表や会計ソフトには、取引先ごとに次の項目を記録しておきましょう。

  • 請求書の発行日と請求額
  • 支払期日と入金予定額
  • 入金日と入金額
  • 状況(入金済み・一部入金・未入金)

点検は、締日や月末など毎月決まった日に行います。支払期日からの経過日数で「期日前」「30日以内」「31〜60日」「61日以上」のように分けておくと、遅れの長い債権がひと目でわかります。

期日を過ぎた債権が見つかったときに、誰がいつまでに取引先へ確認するかも社内で決めておけば、対応が後回しになりません。決算期などには取引先と売掛金の残高を突き合わせ、双方の認識にずれがないかも確かめてください。

経理と営業の情報共有も欠かせません。入金遅れを経理だけが把握していると、営業が同じ取引先から新しい注文を受け続け、未回収額が増えるおそれがあります。反対に、営業が聞いた取引先の経営状況の変化を経理に伝えれば、与信を見直すきっかけになります。

前払いや売掛保証、取引信用保険で貸倒れに備える

与信管理だけでは防ぎきれない未回収リスクには、前払いで売掛金そのものを減らすか、売掛保証や取引信用保険で損失を補う方法があります。

方法仕組み主な注意点
前払い代金を受け取ってから納品し、売掛金を発生させない取引先の資金負担が増えるため、受け入れられない場合がある
売掛保証保証会社が取引先ごとに審査し、取引先が支払わない場合に保証額の範囲で代わりに支払う保証料がかかり、審査によっては保証額が減ったり断られたりする
取引信用保険損害保険会社と契約し、取引先の倒産などによる損失を保険金で補う保険料がかかり、損失の全額が補償されるとは限らない

売掛保証も取引信用保険も、未回収になったすべての売掛金が補われるわけではありません。比較する際は、次の点を確認してください。

  • 対象になる債権(申込み前から発生している債権や、すでに支払いが遅れている債権の扱い)
  • 補償・保証される割合と上限額
  • 免責条件(取引先と争いがある債権の扱い、事故の報告期限など)
  • 保証料・保険料の水準と計算方法

どちらも損失を補うための仕組みで、売掛金を売却して入金を早めるものではありません。取引規模やリスクの大きさに見合う費用かどうかを見て選びましょう。

売掛金の早期資金化で資金繰りに余裕を持たせる

売掛金がきちんと回収できる見込みでも、入金日より先に仕入代金や人件費、税金の支払いが来れば、一時的に手元資金が足りなくなります。こうした入金と支払いのずれを埋める方法の一つが、売掛金を期日前に現金に換える早期資金化です。

売掛債権を活用した代表的な方法には、ファクタリングがあります。入金を待たずに資金を受け取れるため、支払期日までの運転資金を確保する手段として使われています。

一方で、早期資金化には手数料がかかり、受け取れる金額は売掛金の額面より少なくなります。取引先への督促や未払い債権の回収を代わりに行うサービスではなく、すでに回収が難しくなった売掛金の問題を解決するものでもありません。

利用する場合は、手数料、入金までの期間、対象となる売掛債権の条件などを事前に確かめ、手数料を差し引いても資金繰りが改善するかを試算してください。

ファクタリングは期日前の売掛債権を売却する仕組み

ファクタリングは、支払期日前の売掛債権をファクタリング会社に売却し、手数料などを差し引いた代金を受け取る取引です。法的には債権の売買(債権譲渡)契約で、お金を借りる融資とは性質が異なります。

参照:金融庁 ファクタリングの利用に関する注意喚起

項目ファクタリング融資
法的な性質債権の売買金銭の貸し借り
取引先が支払わない場合償還請求権のない契約なら、自社が代わりに支払う義務はない取引先の支払いに関係なく、自社が元本と利息を返済する
費用手数料(買取代金から差し引かれる)利息

取引先に債権譲渡を知らせて承諾を得る「3社間」と、知らせずに自社が取引先から入金を受けてファクタリング会社に支払う「2社間」があり、手数料や必要な手続きに違いがあります。

注意したいのは、名前がファクタリングでも、取引先が支払わなかったときに自社が債権を買い戻す義務を負うなど、経済的に貸付けと同じ機能を持つ取引は貸金業に該当するおそれがある点です。

契約前に、買戻義務や償還請求の有無、手数料の額、契約書の内容を確認しておきましょう。

支払いが遅れた売掛債権は買取が難しい場合がある

すでに支払期日を過ぎた売掛債権は、一般的なファクタリングでは買取を断られたり、条件が厳しくなったりする場合があります。

ファクタリング会社は取引先から入金されることを前提に買い取るため、支払遅延が起きている債権は回収できない可能性が高いと判断されやすいからです。

ただし、すべての延滞債権が対象外になるとは限りません。遅延の期間や理由、取引先の信用状態などによって、扱いは買取会社ごとに異なります。審査の基準も各社で違うため、利用を考える場合は延滞債権の扱いを事前に問い合わせてください。

なお、延滞債権の督促や回収を代行するサービスと、ファクタリングは別のものです。未払いの売掛金を回収したいときは、督促や法的手段を検討することになります。

監修者情報

株式会社トップ・マネジメント
元代表取締役 大野兼司

事業者金融時代に営業職として中小零細企業の資金調達に従事し延べ500人以上の経営者の資金繰り相談を受け、独立し事業者金融業を開業。延べ1000社以上の資金調達を支援してきました。事業者金融を廃業後、2006年に欧米で主流になりつつあったファクタリングに着目し、ファクタリング会社を起ち上げ。現在では日本でも浸透している2社間ファクタリングの仕組みを弊社が作り、これまでに5.5万社以上の中小零細企業の資金繰りを支援して参りました。トップ・マネジメント代表取締役を退任後、現在は合同会社Success Gateにて、これまでに築き上げた金融に関する幅広い知見を活かし、web広告事業や経営コンサルティングを行っています。

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