ファクタリングはやばい?そう言われる5つの理由と悪質な会社の見分け方

ファクタリングはやばい?そう言われる5つの理由と悪質な会社の見分け方

ファクタリングは売掛金を売却して資金を得る取引で、仕組み自体は違法ではありません。やばいと言われる原因は、手数料の負担、契約内容の説明不足、悪質な業者の存在です。

売掛金の入金前に支払いが重なり、資金調達を急ぐ経営者や個人事業主にとって、ネット上の否定的な評判は申込みをためらう理由になります。

この記事では、ファクタリングがやばいと言われる5つの理由と、悪質な会社の見分け方をまとめました。読み終えると、手数料や契約条件をもとに利用するかどうかを判断できます。

目次

ファクタリングがやばいと言われる5つの理由

ファクタリングがやばいと言われるのは、売掛債権を売却する取引そのものに問題があるからではありません。不安を生んでいるのは、手数料による費用負担、契約条件の分かりにくさ、ファクタリングを装う悪質な業者の存在です。

金融庁の説明では、ファクタリングは法的に債権の売買(債権譲渡)契約です。一方で、ファクタリングを装って高金利の貸付けを行うヤミ金融業者が確認されているとして、注意を呼びかけています。

不安の原因は、費用負担、説明不足、回収責任、給料ファクタリングとの混同、専用の許可制度がないことの5つに分けられます。

手数料が差し引かれて資金繰りが苦しくなるおそれがある

ファクタリングで受け取れるのは、売掛債権の額面から手数料などを差し引いた金額です。そのため、受取額は取引先から本来入金される予定だった金額より少なくなります。

計算例として、100万円の売掛金を手数料10%で売却し、ほかの費用がかからない場合、受取額は90万円です。この数字は計算の仕方を示すための例であり、手数料の相場を示すものではありません。

差し引かれた10万円の分だけ、売掛金が期日どおりに入金された場合より手元の資金は少なくなります。毎月の売掛金を続けて売却すると手数料の負担が毎回発生し、次の支払いに足りない分を再びファクタリングで補う繰り返しから抜け出せなくなるおそれがあります。

金融庁も、高額な手数料を支払うとかえって資金繰りが悪化し、多重債務に陥る危険があると注意喚起しています。

契約内容や費用の説明が不十分な業者がいる

ファクタリング会社の中には、契約内容や費用を十分に説明しないまま契約を進める業者もいます。申込時に示された手数料率と契約書の条件が異なっていたり、入金直前に追加費用を告げられたりすると、想定していた金額を受け取れません。

手数料以外に見落としやすい費用
  • 事務手数料
  • 債権譲渡登記の費用(登録免許税、司法書士に依頼する場合の報酬)
  • 契約書に貼る収入印紙の代金
  • 買取代金の振込手数料

債権譲渡登記は、売掛債権を譲渡した事実を第三者に主張するための登記です。譲渡する側が法人の場合に利用でき、2社間ファクタリングで求められることがあります。登録免許税だけでも、債権の個数が5,000個以下なら1件につき7,500円かかります。

費用の内訳が書面で示されないと、利用者は受取額を事前に計算できず、ほかの会社と比べることもできません。説明不足が不安につながるのは、実際の負担額を契約した後で初めて知る結果になるためです。

売掛金が回収できないと支払いを求められる契約がある

ファクタリングの契約には、売掛先が倒産したり代金を支払わなかったりした場合に、利用者へ支払いや債権の買戻しを求める内容を含むものがあります。この契約では、売掛金を売却したにもかかわらず、回収できなかった分を利用者が負担します。

一方で、売掛先の信用リスクを買取会社が負う契約もあります。売掛先が支払えなくなっても、利用者には支払義務が生じない形です。この形の契約では未回収の損失をファクタリング会社が負うため、審査で売掛先の信用力が詳しく確認されます。

どちらの契約を結ぶかによって、利用者の負担は大きく変わります。売掛先の倒産時に支払いを求められる契約の場合、売掛先からの入金が途絶えたうえに、ファクタリング会社への支払いも抱えることになります。売掛金を売却しても回収の責任が残る場合があることが、ファクタリングをやばいと感じさせる理由の一つです。

違法な給料ファクタリングと混同されやすい

事業者の売掛金を買い取るファクタリングと、個人の給料を対象とする給料ファクタリング(給与ファクタリング)は、別の取引です。

事業者向けのファクタリングでは、企業や個人事業主が取引先に対して持つ売掛債権を売却します。給料ファクタリングの対象は、会社員などの個人が勤務先から受け取る予定の給料です。

金融庁の公表によると、給料ファクタリングを業として行うことは貸金業に該当します。貸金業登録を受けずに営む業者は違法なヤミ金融業者であり、年利に換算すると数百~千数百%になる利息を支払わされたり、勤務先への連絡といった違法な取立てを受けたりする危険があると注意を呼びかけています。

どちらも「ファクタリング」という名前が付いているため、給料ファクタリングの摘発報道や違法性に関する情報が、事業者向けのファクタリングにも当てはまるかのように受け取られることがあります。名称が同じであることが、事業者向けのファクタリングまで違法だと誤解される原因です。

ファクタリング業には専用の許可制度がない

売掛債権の買取りを行うファクタリング業には、専用の業法や許可・登録制度がありません。銀行は銀行法に基づく免許、消費者金融などの貸金業者は貸金業法に基づく登録を受けて営業しています。これに対し、ファクタリング会社による売掛債権の取引は、民法などの一般的な法律に基づいて行われます。

2020年に衆議院へ提出された質問主意書でも、ファクタリング業には業法がなく、免許・許可・登録を必要としない点が指摘されました。

参入の条件がないため、契約書の作り方や費用の説明の仕方は事業者ごとに異なります。許可番号や登録番号で事業者の信頼性を判断することもできません。ファクタリング会社を選ぶ際は、会社情報や契約条件を利用者自身で確かめる必要があります。

なお、取引の実態が貸付けと同様の機能を持つ場合は貸金業に該当するおそれがあり、貸金業登録を受けなければ営業できません。

ファクタリングの仕組みと資金調達に向いている場面

ファクタリングは、取引先から支払期日に受け取る予定の売掛金を、期日前にファクタリング会社へ売却して資金化する方法です。

お金を借りる融資とは異なり、売掛債権の売買であるため、受け取った代金を分割で返済する仕組みはありません。ただし、売掛先が支払わなかった場合に誰が損失を負うかは契約によって変わります。

審査では売掛金を回収できるかどうかが重視され、融資とは確認される情報も異なります。ファクタリングが向いているのは、売掛金の入金時期と支払いの時期がずれ、一時的な資金不足を埋めたい場面です。

売掛金を支払期日前に売却して現金に換える仕組み

ファクタリングでは、取引先から代金を受け取る権利である売掛債権を、ファクタリング会社へ売却します。利用者は売掛先の支払期日を待たずに、手数料などを差し引いた買取代金を受け取れます。

取引の形には、利用者とファクタリング会社の2者で契約する2社間ファクタリングと、売掛先も加わる3社間ファクタリングがあります。

2社間では、利用者が売掛先から代金を受け取り、その代金をファクタリング会社へ渡します。3社間は、売掛先が債権譲渡を承諾したうえで、ファクタリング会社へ直接代金を支払う形です。

一般的な流れ内容
1. 申込み売掛金の金額や支払期日を伝える
2. 書類提出請求書、取引先との契約書、入金履歴が分かる通帳の写し、本人確認書類などを提出する
3. 審査売掛先の信用力や売掛債権の実在性が確認される
4. 契約買取金額、手数料、その他の費用、回収方法を確認して契約を結ぶ
5. 入金手数料などを差し引いた買取代金が振り込まれる

必要書類や手順の細部は、ファクタリング会社によって異なります。

審査では利用者より売掛先の信用力が重視される

ファクタリングの審査では、利用者よりも売掛先の信用力が重視されます。買い取った売掛金を最終的に支払うのは売掛先であり、ファクタリング会社にとっては回収できるかどうかが損益を左右するためです。

主に確認されるのは、売掛先の経営状態、利用者と売掛先の間の取引実績や支払実績、売掛債権が実際に存在するかどうかです。債権の実在性は、請求書だけでなく、取引の契約書や過去の入金記録が載った通帳などで確かめられます。

売掛先の評価が中心になるため、利用者が赤字決算や税金の滞納を抱えている場合でも、審査の対象になることがあります。

ただし、利用者自身の状況も確認の対象です。2社間ファクタリングでは利用者が売掛先から代金を受け取ってファクタリング会社に渡すため、事業を続けているか、過去の取引に問題がないかも見られます。

審査項目や評価の比重は会社によって異なり、ここで挙げた条件を満たしても審査に通るとは限りません。

融資以外で早めに資金を確保したいときの選択肢になる

ファクタリングは、売掛先からの入金を待たずに支払いの資金を用意したいときの選択肢になります。たとえば、受注が増えて仕入代金や外注費の支払いが先に来る場合が当てはまります。取引先の支払条件が月末締め翌々月払いなどで入金までの期間が長く、その間に給与や家賃の支払日が重なる場合も同様です。

銀行融資では利用者の決算内容や返済能力が審査され、申込みから融資の実行までに時間がかかることがあります。
ファクタリングは売掛債権の売買であり、審査の中心は売掛先の信用力です。審査の対象と手続きが融資と異なるため、条件によっては申込みから短期間で資金化できる場合もあります。

ただし、入金までの時間は、書類の準備状況、審査の内容、2社間か3社間かといった契約条件によって変わります。3社間ファクタリングは売掛先の承諾を得る手続きが加わるため、2社間より時間がかかる傾向があります。

やばいファクタリング会社に共通する特徴

悪質なファクタリング会社には、説明の仕方、営業方法、契約条件、会社情報のいずれかに不自然な点が見られます。代表的なのは、売掛債権の売買であるはずの取引を貸付けのように扱う対応や、書面を出さずに契約を急がせる対応です。

ただし、一つの特徴が当てはまるだけで悪質な会社だと断定はできません。たとえば、会社情報の掲載が少ない原因が、単なる公式サイトの不備という場合もあります。複数の特徴が重なっていないか、口頭の説明と書面の内容が一致しているかを合わせて判断してください。

見積書や契約書を事前に示さない

見積書や契約書を事前に見せず、口頭の説明だけで契約を進めようとする業者には注意が必要です。書面がなければ、利用者は手数料率、買取金額、手数料以外の費用、売掛先が支払わなかったときの責任を正確に把握できません。

口頭で説明された手数料率が低くても、契約書に事務手数料などの費用が別に書かれていれば、受取額は説明より少なくなります。売掛先が支払えなくなった場合の責任についても同様です。口頭で「利用者に負担はない」と言われていても、契約書に買戻しの条項があれば、後から説明と違うと主張するのは難しくなります。

書面を出さない会社と契約すると、条件をめぐって争いになったときに、何に合意したのかを示す証拠も残りません。契約前に見積書と契約書を受け取れるかどうかは、会社の説明姿勢を見極める判断材料です。

分割払いや返済を前提に話を進める

売掛債権の売却を申し込んだのに、利用者自身の返済や分割払いを前提に説明が進む場合は、取引の内容を疑ってください。ファクタリングは売掛債権の売買であり、受け取った買取代金を利用者が借金として返す仕組みではありません。

紛らわしいのは、2社間ファクタリングで利用者が売掛先から代金を受け取り、そのお金をファクタリング会社へ送る手続きです。この送金は、売掛先が支払った代金を引き渡すためのものです。利用者が自分の資金から返済する行為とは性質が異なります。

これに対し、「毎月一定額ずつ返してください」「売掛先からの入金がなくても期日までに支払ってください」といった説明は、売掛先からの回収とは関係なく、利用者に支払義務を負わせる内容です。このような説明を受けた場合は、売掛債権を売却する契約になっているのかを確かめる必要があります。

担保や保証人を求めてくる

売掛金の買取りであるにもかかわらず、不動産などの担保や代表者個人の保証を求められた場合は、取引内容を慎重に確かめましょう。

売掛債権の買取りで代金を支払うのは売掛先です。それでも担保や保証を求める契約は、利用者側に何らかの支払責任を残している可能性があります。

確認したいのは、

  • 何を保証するのか
  • どのような場合に責任を負うのか

という2点です。たとえば、売掛債権が実在することや二重に譲渡していないことを保証する内容と、売掛先が倒産したときの未回収分まで保証する内容では、利用者の負担が大きく異なります。

後者の契約では、売掛金を売却した後でも、売掛先が支払えなくなった時点で代表者個人の財産から支払う事態になりかねません。担保や保証の条項があるだけで、取引が違法になるとは限りません。

所在地や代表者の情報を公開していない

公式サイトに所在地、法人名、代表者名、固定電話番号などの基本情報が十分に載っていない会社は、利用前の確認に時間をかけるべき相手です。所在地が市区町村名までしか書かれていない、代表者名がない、連絡手段が携帯電話番号やメールアドレス、チャットだけといった掲載は、注意したい兆候にあたります。

連絡先がはっきりしない会社と契約すると、入金額や契約条件に疑問が出ても、問い合わせ先が分からず確認が難しくなります。担当者と連絡が取れなくなった場合、会社の所在地を訪ねたり、書面を送ったりする手段もありません。契約後に連絡が途絶えれば、利用者は問題を解決する手がかりを失います。

一方で、申込みから契約までオンラインで完結するサービスでは、対面の窓口を設けていない場合もあります。住所の表示だけで判断せず、法人名や代表者名など、ほかの会社情報と合わせて確認することが欠かせません。

「審査なし」や極端に低い手数料を宣伝している

「審査なし」「必ず利用できる」といった広告や、低い手数料だけを強調する宣伝は、内容をうのみにしないでください。ファクタリング会社が利益を得られるのは、買い取った売掛債権の代金を売掛先から回収できた場合です。債権が実在するか、売掛先が支払える状態かを確かめなければ、買取代金を回収できないおそれがあります。

審査を行わないという説明には、回収の見込みをどう判断しているのかという疑問が残ります。審査をしない代わりに、利用者自身に支払いを約束させる契約になっている可能性も考えられます。

低い手数料の表示も、そのまま受け取るのは避けたいところです。広告の料率が下限だけを示している場合、実際に適用される料率は審査結果や売掛先の状況によって変わります。宣伝の数字を前提に申し込むと、見積もりの段階で条件が大きく変わることがあります。

ただし、特定の料率だけを根拠に悪質な会社と判断することはできません。

質問に答えず契約を急がせる

手数料や契約条件を質問しても明確に答えず、その場での契約を求める営業対応には警戒が必要です。「今日中に決めないとこの条件では買い取れない」「細かい費用は入金時に説明する」といった言い方が典型例です。

手数料率、手数料以外の費用、売掛先が支払わなかった場合の責任は、受取額と将来の負担を左右する情報にあたります。こうした質問への回答を避ける会社と契約すると、契約後に説明と異なる費用や責任が判明するおそれがあります。

資金繰りに困っているときほど、利用者は条件の確認より入金の早さを優先して判断しがちです。支払期日が迫った状況で即決を迫られると、契約書を読み込む時間を確保できません。

その結果、手数料や買戻しの条項を理解しないまま署名してしまう危険があります。契約を急がせる理由が利用者の事情ではなく、会社側の都合にあるように見える場合は、特に注意してください。

不自然に良い評判ばかりが目立つ

高評価ばかりが並び、具体的な利用内容が書かれていない口コミは、慎重に読む必要があります。「助かりました」「対応が丁寧でした」といった感想だけで、売掛金の規模、手数料、入金までの日数に触れていない口コミは、判断材料として不足しています。似た言い回しの口コミが短期間に集中している場合も、内容をそのまま信用するのは控えてください。

口コミは投稿者の主観に基づく情報です。実際に利用した人の投稿なのか、どのような条件で取引したのかを、読み手が確かめることはできません。仮に本物の口コミであっても、売掛先や売掛金の金額が違えば、手数料や審査結果は変わります。口コミだけで会社の良し悪しを判断するのは困難です。

ただし、評価が高いことや文章が似ていることだけを理由に、口コミを虚偽と決めつけることはできません。会社を比べる際は、口コミよりも、見積書や契約書で示される条件を優先して確認しましょう。

ファクタリングで起こりやすいトラブルの例

ファクタリングで起こりやすいトラブルは、

  • 後から追加費用を差し引かれる
  • 入金額が見積もりより少ない
  • 繰り返し利用して資金が不足する

の3つです。いずれも、受け取る金額や手元に残る資金が想定より減る点で共通しています。支払予定に合わせて資金を確保したつもりでも、受取額が数万円違うだけで、仕入代金や給与の支払いに不足が生じます。

ここで紹介するのは、ファクタリングの取引の流れから想定されるトラブルの例です。特定の会社で実際に起きた事例を取り上げたものではありません。

説明のない費用を後から差し引かれた

想定例として、手数料10%という説明を受けて、200万円の売掛金を売却したケースを考えます。

利用者は180万円の入金を見込んでいました。ところが実際の振込額は、事務手数料や振込手数料などがさらに差し引かれた金額でした。事前に受けていたのは手数料率の説明だけで、ほかの費用があることは入金時に初めて知らされたという流れです。

このケースの問題は、追加費用の有無と金額を契約前に把握できなかった点にあります。180万円を前提に組んでいた支払計画では、差し引かれた額が数万円でも、どこかの支払いに不足が出ます。費用が引かれた後に気付いても、売掛債権はすでに売却済みです。条件を見直して別の会社を選び直すことはできません。

説明された手数料率が他社より低くても、追加費用を含めた受取額で比べると、負担が大きくなる場合があります。

入金額が見積もりより少なかった

想定例として、見積もりで示された買取金額をもとに支払計画を立てたものの、契約時に手数料率が引き上げられ、想定より少ない金額しか受け取れなかったケースが挙げられます。

入金額が見積もりと異なる原因は、大きく2つに分けられます。

審査結果による条件変更

申込時の見積もりは、利用者が伝えた売掛金の情報をもとにした概算の場合があります。売掛先の信用力や債権の内容を審査した結果、手数料率や買取金額が変わることは、取引の仕組み上起こり得ます。

説明不足による認識の違い

会社が概算として示した金額を利用者が確定した金額と受け取っていると、条件が変わった時点で双方の認識がずれます。

どちらの原因であっても、提示された見積もりが確定した条件なのか、審査後に変わる可能性がある概算なのかを確かめていなければ、支払計画との差を埋める手段がありません。

繰り返し利用して資金繰りが苦しくなった

ファクタリングで売掛金を早めに資金化すると、その売掛金は将来の入金として当てにできなくなります。翌月に入るはずだった代金をすでに受け取っているため、翌月の入金予定額はその分だけ減ります。翌月の支払いに足りなくなれば、次の売掛金を再びファクタリングで資金化する流れが生まれます。

想定例として、毎月300万円の売掛金を、手数料10%で毎月売却し続けるケースを考えます。1回あたりの手数料は30万円で、1年間続けると合計は360万円です。売上そのものは増えていないため、毎月の売上より30万円少ない金額で支払いを回し続けることになります。

ファクタリングは入金の時期を前倒しする方法です。売上の減少や利益の不足といった資金不足の原因そのものを解消するわけではありません。資金不足の原因が支払時期のずれではなく収益の不足にある場合、利用を重ねるほど手数料の負担が積み重なります。

悪質な業者を避けるための契約前チェックポイント

悪質な業者との契約を避けるには、申込みから署名までの間に、利用者自身で確認を重ねることが欠かせません。確認したいのは、

  • 会社の実態
  • 見積もりの内容
  • 説明と契約書の一致
  • 売掛先が支払わない場合の負担
  • 検討する時間

の5点です。

資金を急いでいると、入金日の早さだけで申込先を決めてしまいがちです。しかし、契約書に署名した後で条件を変えるのは困難なため、確認は署名前に済ませておく必要があります。どの確認も、公的なサイトでの検索、担当者への質問、書類の読み込みで行えます。

登記情報や営業年数で会社の実態を確かめる

会社の実態は、公的なデータベースと登記情報で確かめられます。国税庁の法人番号公表サイトでは、法人番号の指定を受けた法人について、商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地、法人番号の3つの情報を検索できます。

公式サイトに書かれた会社名と所在地が検索結果と一致するかを見れば、実在する法人かどうかの手がかりになります。検索時には公表以後の変更履歴も対象に含められるため、短期間に本店を何度も移している場合は、理由を担当者に尋ねてみてください。

設立年月日や役員は、法務局で取得できる登記事項証明書や、インターネットの登記情報提供サービスで確認できます。あわせて、公式サイトに載っている営業実績や固定電話番号などの連絡先も集め、登記の内容と食い違いがないかを照らし合わせましょう。

ただし、登記があることや営業年数が長いことだけで、会社の信頼性が保証されるわけではありません。一つの情報で結論を出さず、複数の材料を合わせて判断することが大切です。

複数社の見積もりで支払総額と諸費用を比べる

見積もりは複数社から取り、手数料率ではなく、諸費用を差し引いた後の実際の受取額で比べます。売掛金の額面、支払期日、売掛先、2社間か3社間かといった条件をそろえて依頼しなければ、各社の提示額を比較できません。

手数料率が低い会社でも、ほかの費用が上乗せされれば受取額は少なくなります。

見積もりを受け取ったら確かめる費用の有無と金額
  • 事務手数料
  • 債権譲渡登記の費用(登録免許税、司法書士に依頼する場合の報酬)
  • 買取代金の振込費用

見積書に「諸費用」とまとめて書かれている場合や、費用の記載がない場合は、項目ごとの内訳を求めましょう。費用がかからない項目についても「なし」と書面で示してもらえば、後から追加されるおそれを減らせます。

説明された内容と契約書に食い違いがないか見る

担当者の説明と契約書の記載が一致しているかは、署名前に項目ごとに照らし合わせて確かめます。特に確認したいのは、買取代金、手数料、支払条件の3つです。

買取代金説明された受取額と、契約書の買取金額が一致しているか
手数料料率や金額が見積もりと同じか、別の名目の費用が加わっていないか
支払条件買取代金が支払われる日、2社間の場合に回収した代金を渡す期日や方法

意味の分かりにくい条項や、口頭の説明と違う記載があれば、その場で聞き流さず、書面での説明を求めてください口頭の回答だけでは、後から内容を確かめる手段が残りません。

メールなど記録に残る形で回答を受け取っておけば、契約後に疑問が出たときの確認材料になります。

売掛先が支払わない場合の負担を事前に聞いておく

売掛先が倒産した場合や期日に入金しなかった場合に、誰が損失を負うのかは、契約前に担当者へ直接質問しておきましょう。

質問の例
  • 売掛先が倒産した場合、利用者に支払いや買戻しの義務はあるか
  • 売掛先の入金が遅れた場合、利用者に追加の費用は発生するか
  • その内容は契約書のどの条項に書かれているか

あわせて確認したいのは、売掛先の不払いと、利用者側の虚偽申告や契約違反とでは、責任の扱いが異なる場合がある点です。

たとえば、売掛先の信用リスクを買取会社が負う契約でも、存在しない債権を申告した場合や、売掛先から受け取った代金を引き渡さなかった場合には、利用者が責任を問われることがあります。

どのような場合に誰が負担するのかを分けて聞いておけば、契約書の条項が何を定めているのかを読み取れます。

その場で決めず契約書を持ち帰って読む

入金を急いでいる場合でも、契約書の控えを受け取り、署名する前に読む時間を取ってください。契約書には、手数料や支払条件のほか、債権譲渡の通知や契約違反時の取り扱いなど、説明の場で触れられなかった条項が含まれていることがあります。

読みながら疑問点を書き出しておけば、担当者に問い合わせる際の聞き漏らしを防げます。回答に納得できない場合や、条項の意味を自分で判断できない場合は、弁護士などの専門家に相談する方法もあります。金融庁も、ファクタリングの利用で少しでも心配な点があれば、弁護士に相談するよう呼びかけています。

支払期日まで余裕がないと、契約書を読む時間そのものを確保できません。資金が必要になる日から逆算し、検討の時間を含めて早めに申し込むことも、トラブルを避ける方法の一つです。

ファクタリングの利用で資金繰りを悪化させないコツ

ファクタリングで資金繰りを悪化させないためには、

  • 売却する金額
  • 利用する目的と期間
  • ほかの調達手段との比較

の3点を、利用前に決めておく必要があります。

ファクタリングは将来の入金を前倒しする方法で、利用のたびに手数料がかかります。必要以上に売却したり、目的を決めずに繰り返し利用したりすると、手元に残る資金はかえって減っていきます。

一方で、入金と支払いの時期のずれによる一時的な不足であれば、条件を確かめたうえで使える手段です。自社の資金の動きを把握し、ファクタリングが合う場面かどうかを見極めてから利用してください。

必要な金額だけ売却してコストを抑える

ファクタリングで売却する売掛債権は、不足している金額を賄える範囲に絞ります。手数料が債権額に対する割合で決まる場合、必要以上に売却すれば、その分だけ費用も増えます。

不足額は、今後の入金予定と支払予定を日付順に並べると計算できます。例として、月末に400万円の支払いがあり、現在の預金残高と月末までの入金予定の合計が300万円であれば、不足額は100万円です。

複数の売掛債権を持っていても、不足額を大きく上回る分まで売却する必要はありません。ファクタリング会社によっては、複数の請求書のうち一部の債権だけを買い取ってもらえる場合があります。売却する範囲を絞れれば、費用負担を調整できる可能性があります。

ただし、事務手数料など1回ごとにかかる費用がある場合は、少額に分けて何度も売却すると総額がかさみます。売却額を決める際は、手数料以外の費用も含めて計算してください。

一時的な資金不足に限って利用する

ファクタリングを使う場面は、支払いが集中して一時的に資金が足りなくなるときに限るのが基本です。一時的な不足とは、売上は確保できているのに、入金日より支払日が先に来るために生じる不足を指します。受注の増加で仕入れが先行する時期や、賞与や納税の支払いが重なる月が典型例です。

これに対し慢性的な資金不足は、売上の減少や利益の不足によって、毎月の支払いを入金で賄えない状況をいいます。慢性的な不足にファクタリングを使っても、原因が残ったまま手数料の負担だけが加わります。

どちらに当たるかは、資金繰り表で今後数か月の入出金を確認すれば判断できます。資金繰り表とは、月ごとの入金予定と支払予定、月末の残高をまとめた表です。利用前には、売却した債権の分だけ将来の入金が減ることも反映し、利用後の各月の残高がマイナスにならないかまで確かめましょう。

融資や補助金など他の調達手段と比べて選ぶ

資金を調達する方法はファクタリングだけではありません。銀行融資、日本政策金融公庫の融資、補助金・助成金などと比べ、調達までの期間、費用、返済義務の有無、資金の使い道を確かめてから選びます。

スクロールできます
方法調達までの期間主な費用返済義務資金の使い道
ファクタリング審査状況や契約条件で変わる手数料、諸費用なし(売掛先の不払い時の負担は契約による)制限されないことが一般的
銀行融資審査に時間がかかる場合がある利息、保証料などあり申込時に示した運転資金・設備資金など
日本政策金融公庫の融資申込み・審査を経て融資利息などあり制度ごとに定められた使途
補助金・助成金申請・審査を経て支給補助金は対象経費の一部が自己負担原則なし対象として認められた経費など

日本政策金融公庫の国民生活事業は、小規模事業者向けの小口融資を主に扱っており、個人企業の利用も多いと案内しています。

補助金・助成金は申請と審査が必要で、すぐに資金を受け取れるとは限りません。中小企業庁のミラサポplusでは、補助金は公募締切から採択まで通常2か月程度かかり、受け取りは原則として事業終了後の後払いになると説明しています。

直近の支払いにはファクタリング、設備投資や長期の運転資金には融資というように、期間と目的に合わせて使い分ける方法もあります。

監修者情報

株式会社トップ・マネジメント
元代表取締役 大野兼司

事業者金融時代に営業職として中小零細企業の資金調達に従事し延べ500人以上の経営者の資金繰り相談を受け、独立し事業者金融業を開業。延べ1000社以上の資金調達を支援してきました。事業者金融を廃業後、2006年に欧米で主流になりつつあったファクタリングに着目し、ファクタリング会社を起ち上げ。現在では日本でも浸透している2社間ファクタリングの仕組みを弊社が作り、これまでに5.5万社以上の中小零細企業の資金繰りを支援して参りました。トップ・マネジメント代表取締役を退任後、現在は合同会社Success Gateにて、これまでに築き上げた金融に関する幅広い知見を活かし、web広告事業や経営コンサルティングを行っています。

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