ファクタリングと融資の違いは、売掛債権を売って資金を得るか、返済を前提に資金を借りるかにあります。支払期日が迫っていて融資の審査を待てない場合はファクタリング、設備投資など長期で使う資金が必要な場合は融資が検討の対象になります。
売掛金の入金待ちで仕入れ代金や給与の支払いに不安を抱える経営者や個人事業主にとって、どちらを選ぶかは費用と資金繰りに直接響く判断です。
本記事では、審査・費用・返済の有無など8つの項目で両者を比較しました。資金の使い道と期限から、自社に合う調達方法を判断するための基準もまとめています。
ファクタリングと融資の違いは売掛債権の売却か借入かにある
ファクタリングと融資は、どちらも事業資金を手元に用意する方法ですが、契約の性質が根本から異なります。
ファクタリングは、自社が持つ売掛債権を売り、その代金として資金を受け取る取引です。一方の融資は、金融機関などから資金を借り、決められた条件で返していく契約にあたります。
資金が入金される点は共通していても、売却では入金予定の売掛金を期日前に現金化し、借入では新たに返済の義務を負います。売却か借入かという違いは、契約後に負う義務や申込み時に確認される内容など、後に続く比較項目すべてに影響します。
ファクタリングは売掛金を期日前に買い取ってもらう取引
ファクタリングは、商品の販売やサービスの提供で発生した売掛金を、支払期日より前にファクタリング会社へ売却して現金化する取引です。
金融庁は、ファクタリングを売掛債権などを期日前に一定の手数料を差し引いて買い取るサービスと説明し、法的には債権の売買(債権譲渡)契約にあたるとしています。
取引では、利用者が売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、その対価として買取代金を受け取ります。債権の譲渡に伴い、売掛先が支払期日に支払う代金を受け取る権利も、ファクタリング会社に移ります。利用者が手にするお金は借入金ではなく、売った債権の代金です。
債権を売る取引である以上、売却できる債権を持っていることが利用の前提になります。一般的に対象となるのは、納品や役務の提供が済み、請求金額と支払期日が確定している売掛金です。売却できる債権がなければ、ファクタリングは利用できません。
融資は返済を約束して金融機関などから資金を借りる契約
融資は、銀行や信用金庫、日本政策金融公庫などの貸し手から事業資金を借り入れ、契約で定めた条件に従って返済する取引です。
契約の基本は民法上の金銭消費貸借契約で、借り手は受け取った金銭と同じ額を返す義務を負います。利率や利息の支払方法は、融資契約の中で取り決められます。
返済が終わるまで、借り手は貸し手に対する債務を抱え続けることになります。運転資金や設備資金など、使い道によって融資の種類は分かれますが、資金を借りている状態はどの融資でも変わりません。
ファクタリングとの違いは、取引で動くものにあります。ファクタリングでは売掛債権という資産が動き、売却後は債権が自社の手元を離れます。融資で動くのはお金そのもので、借りたお金は返済によって貸し手へ戻る仕組みです。売掛金を持っていなくても申し込める点も、債権の売却とは異なる特徴といえます。
ファクタリングと融資の違いを8つの項目で比較
ファクタリングと融資を8つの項目で並べると、違いの多くは「売掛債権を売るか、資金を借りるか」という取引の性質から生じていることがわかります。審査で確認される相手、必要書類、費用の名目、返済義務の有無は、それぞれの性質に合わせて異なります。
一方、入金時期と調達額は、どちらの方法でも申込状況や契約条件によって変わるため、一律には比べられません。
下の表は、一般的な債権買取型のファクタリングと通常の事業融資を前提にした傾向です。実際の条件には、利用するサービスや融資の種類、契約方式による違いがあります。
| 比較項目 | ファクタリング | 融資 |
|---|---|---|
| 仕組み | 売掛債権の売却 | 資金の借入 |
| 審査 | 売掛先の支払能力などを重視 | 申込企業の返済能力などを重視 |
| 必要書類 | 請求書や取引の証明資料など | 決算書や確定申告書、事業計画書など |
| 費用 | 買取手数料など | 利息や保証料など |
| 返済義務 | 真正な債権売買では原則なし | 契約に基づく返済義務あり |
| 入金時期 | 契約方式や審査状況による | 審査や契約手続きによる |
| 調達額 | 売掛債権の額面や買取条件による | 返済能力や融資条件による |
| 売掛先への通知 | 契約方式や対抗要件の具備方法による | 売掛債権を担保にしない融資では通常不要 |
ファクタリングと融資の審査の違いは評価される相手にある
ファクタリングと融資の審査は、確認する相手と目的が異なります。ファクタリング会社が見るのは、買い取る売掛債権が期日どおりに支払われるかどうかで、判断の中心は売掛先の信用力です。
融資では、貸したお金を回収できるかを確かめるため、申込企業自身の返済能力が審査の中心になります。どちらも申込者の状況をまったく見ないわけではなく、審査の基準や必要書類には申込先ごとに違いがあります。
審査の結果は個別の条件で決まり、どちらが通りやすいかを一律に判断することはできません。
ファクタリングでは売掛先の支払能力が主に確認される
ファクタリングの審査では、買取対象となる売掛債権について、売掛先が支払期日に代金を支払えるかが主に確認されます。ファクタリング会社は最終的に売掛先が支払う代金で資金を回収するため、売掛先の支払能力が買取の可否や条件を左右します。
確認の対象には、売掛先の経営状況や業種、利用者と売掛先との取引実績などがあります。請求書や契約書、過去の入金記録をもとに、債権が実在するか、請求内容が実際の取引と一致しているかも調べられます。
ただし、売掛先の信用力が高ければ必ず利用できるわけではありません。利用者自身の事業内容、同じ債権がほかに譲渡されていないか、債権の譲渡を制限する特約があるかといった点も審査の対象になり得ます。審査の項目や重視する点は、ファクタリング会社や契約方式によって変わります。
融資では申込企業の決算内容と返済能力が問われる
融資の審査では、申込企業が借りたお金を期日どおりに返せるかどうかが問われます。判断材料の中心は決算書で、売上高や利益の推移、手元資金の状況、既存の借入金の残高などを確認されます。
決算の数字だけで結論が出るわけではありません。事業を続けられる見通し、資金を何に使うのか、返済計画に無理がないかといった点も判断材料になります。代表者個人の資産や信用状況、これまでの金融機関との取引内容が考慮される場合もあります。
審査の基準は、銀行や信用金庫、日本政策金融公庫など金融機関ごとに異なり、同じ金融機関でも融資制度によって変わります。赤字決算であっても、赤字の理由や今後の改善見込みを説明できれば、検討の対象になることがあります。赤字かどうかの一点で、利用の可否が決まるわけではないのです。
申込みで求められる必要書類の種類と量はどちらが多いか
申込みで求められる書類は、ファクタリングでは取引を確認する資料、融資では経営状況を確認する資料が中心です。書類の種類や量は申込先や契約内容によって変わるため、どちらが少ないと一律には決められません。
| 区分 | 主な書類の例 |
|---|---|
| ファクタリング | 請求書、売掛先との契約書や発注書、通帳の入出金履歴、本人確認書類など |
| 融資 | 決算書、試算表、事業計画書、資金繰り表、確定申告書、登記事項証明書など |
ファクタリングでは、買い取る債権と売掛先との取引が確認できれば足りる場合があり、決算書の提出を求めない申込先もあります。一方で、売掛先との基本契約書や過去の入金記録など、取引が継続していることを示す資料を追加で求められるケースも見られます。
融資では直近数期分の決算書を提出するのが一般的ですが、創業間もない企業向けには、決算書の代わりに創業計画書などを提出する制度も設けられています。申込み前に申込先の公式サイトや窓口で必要書類の一覧を確認しておけば、手元にない書類を事前に把握できます。
ファクタリングと融資の費用は手数料と金利で計算方法が違う
ファクタリングと融資は、費用が発生する仕組みが異なります。ファクタリングでは売掛債権を買い取ってもらう対価として買取手数料を負担し、融資では借りたお金に対して利息を支払います。手数料は売掛金の額面に対する割合で、1回の取引ごとに決まるのが一般的です。
一方、利息は年利で示され、借りている期間が長いほど金額が増えます。計算の基準と対象期間が違うため、手数料率と年利の数字を並べただけでは、どちらの負担が重いかは判断できません。
ファクタリングのコストは売掛金から差し引かれる金額で確かめる
ファクタリングの実際の負担は、手数料率よりも、売掛金の額面から差し引かれる金額の合計で確かめるとわかります。一般的な債権買取型では、売掛金の額面に対して買取手数料が設定され、その分を差し引いた金額が買取代金として支払われます。
差し引かれるのは買取手数料だけとは限りません。契約内容によっては、事務手数料、債権譲渡登記にかかる費用、契約書に貼る印紙代、振込手数料などが別に発生する場合があります。債権譲渡登記は、売掛先に通知しないまま、売掛先以外の第三者に対して債権の取得を主張できるようにするための手続きです。
見積書を受け取ったら、手数料率だけを見るのではなく、差し引かれる費用の合計額と、口座に実際に入金される金額を確認してください。表示されている手数料率が低くても、ほかの費用を含めた差引総額で比べると、負担の大小が入れ替わることがあります。
融資の利息は借入金利と返済期間によって金額が変わる
融資の利息は、借入残高に金利と借入日数を掛け合わせて計算されます。同じ金利と借入額でも、返済方式によって残高の減り方が異なるため、支払う利息の総額も変わります。
| 返済方式 | 元金の減り方と各回の返済額 |
|---|---|
| 元金均等返済 | 毎回同じ額の元金を返す。利息は残高の減少に合わせて少なくなり、各回の返済額は回を追うごとに減る |
| 元利均等返済 | 元金と利息を合わせた毎回の返済額が一定。初めのうちは利息の割合が大きく、元金の減り方は遅い |
| 期日一括返済 | 期間中は元金を返さず、期日にまとめて返す。残高が減らないため利息の総額は大きくなる |
借入額・金利・期間が同じ条件であれば、利息の総額は多い順に期日一括返済、元利均等返済、元金均等返済となるのが一般的です。
費用は利息だけではありません。信用保証協会の保証付き融資では保証料が、契約時には事務手数料や印紙代がかかる場合があります。金利の数字に加えて、保証料などを含めた総額で負担を確認してください。
手数料と金利は資金調達額と利用期間をそろえて比較する
ファクタリングの手数料率と融資の年利は、計算の基準が異なる指標です。手数料率は1回の取引に対する割合、年利は1年間借りた場合の割合を表します。例えば「手数料10%」と「年利3%」の数字を並べても、費用の重さは比べられません。
比較するときは、次の手順で条件をできるだけそろえます。
- 実際に手元に入る資金の額をそろえる
- 資金が必要な期間をそろえる
- 手数料や利息以外の費用も含めて、その期間内に負担する総額を出す
同じ資金額と同じ期間で負担する金額同士を比べれば、どちらの負担が重いかを判断できます。
ファクタリングの手数料を年率に換算する方法もありますが、換算した数値は参考指標にとどまります。融資の金利とは計算の前提が異なるため、年率換算した手数料を融資の実質的な年率と同じものとして扱うことはできません。
売掛金100万円・手数料10%・30日後回収の場合の計算例
売掛金100万円を手数料10%でファクタリングした場合、手数料は10万円で、受け取る金額は90万円です。手数料10%は計算のために置いた仮の数値で、実際の手数料の水準を示すものではありません。
売掛金の回収予定が30日後であれば、この取引は「30日早く資金を得るために10万円を負担する」ことを意味します。同じ90万円を30日間借りた場合の利息と比べると、期間をそろえた比較ができます。
参考までに年率に換算すると、10万円÷90万円×365日÷30日で約135%になります。売掛金の額面100万円を基準にすると約122%となり、基準の取り方によって数値が変わります。
入金日から回収日までの日数が30日より短ければ、換算値はさらに上がります。これらの換算値は参考にとどめ、融資金利と直接比べないでください。
返済の有無で比べるファクタリングと融資の財務への影響
ファクタリングと融資では、資金を受け取った後に負う義務が大きく異なります。融資は借りたお金のため、契約で決めた期日に元金と利息を返す義務があります。
償還請求権のない真正な債権売買としてのファクタリングでは、売掛先が支払わないリスクを買取会社が負います。利用者が買取代金を返す義務は、原則として生じません。
ただし、契約書の名称がファクタリングでも、売掛先の不払い時に利用者が債権を買い戻す内容であれば、借入と変わらない負担が残ります。こうした義務の違いは、決算書での扱いにも表れます。
償還請求権なしの債権売買では原則として返済義務を負わない
償還請求権のない真正な債権売買では、売掛先が代金を支払わなくても、利用者は原則として受け取った買取代金を返す必要がありません。
償還請求権とは、売掛先から代金を回収できなかった場合などに、買取会社が債権を譲渡した利用者へ支払いを求める権利のことです。金融庁は、売却した売掛債権等が返済不能になっても、売却した事業者に返済義務が生じないことをノンリコースと説明しています。
償還請求権の有無によって、利用者の負担は大きく変わります。償還請求権付きの契約では、売掛先が支払わないと利用者が支払いを求められるため、資金を借りた場合に近い負担を抱えます。
一方で、償還請求権がなくても、すべての責任が免除されるわけではありません。存在しない売掛金を売った場合や、同じ債権を二重に譲渡した場合、売掛先から受け取った代金を買取会社に渡さなかった場合は、契約違反として損害賠償などを求められることがあります。
売掛先が倒産した場合の損失を誰が負担するか
売掛先が倒産して売掛金を回収できなくなった場合、損失を誰が負担するかは、契約内容と取引の実態によって決まります。償還請求権のない真正な債権売買であれば、売掛先の信用リスクは債権とともに買取会社へ移るため、通常は買取会社が損失を負担します。
金融庁が紹介している裁判例でも、売掛先の不払いリスクが実質的にファクタリング業者へ移転しているかどうかが、債権の売買と認められるかを判断する要素の一つになっています。
契約書にノンリコースと書かれていても、売掛先に支払い停止などの兆候がないことを利用者に保証させていた取引が、金銭消費貸借契約に該当すると判断された例も示されています。
倒産による未回収と、利用者側の義務違反は区別して考えます。2社間の契約で、倒産前に売掛先から利用者へ支払われていた代金は、未回収の損失にはあたりません。その代金は、契約に従って利用者が買取会社へ引き渡す必要があります。
融資は元金と利息を決められた期日に返していく
融資を受けた企業は、契約に従って、借りた元金と発生した利息を決められた期日までに返済する義務を負います。この義務は業績や売掛金の入金状況にかかわらず続くため、売上が落ちた月でも返済額を用意しなければなりません。
返済の方法には、毎月一定の時期に分割して返す方法や、期日に元金をまとめて返す期日一括返済などがあります。毎月返済では、毎月の資金繰りの中から返済額が出ていきます。期日一括返済の場合、期間中の負担は利息が中心になる一方、期日には元金をまとめて準備しなければなりません。
返済が遅れると、遅延損害金が発生します。遅延損害金の利率は、融資契約で定められているのが一般的です。遅れが続いたときに期限の利益(分割で返済できる権利)を失い、残りの元金を一括で求められる条項を設けた契約もあります。
貸借対照表での扱いと信用情報への登録は契約によって異なる
通常の融資では、借りたお金は貸借対照表に借入金として負債に計上されます。一方、真正な債権売買としてのファクタリングでは売掛金を売却した処理となり、資産の売掛金が減って現金に置き換わるのが一般的です。
ただし、会計上で売却として扱えるかどうかは、契約内容や取引の実態によって判断されます。企業会計基準の「金融商品に関する会計基準」では、債権に対する支配が譲受人に移転しているかが売却処理の要件です。利用者が実質的に買戻し義務を負う契約などは、借入と同様の処理が求められる可能性があります。
法人の借入の扱いや、代表者が連帯保証人になった場合の登録の有無は、融資の種類や信用情報機関によって異なります。ファクタリングは債権の売買であり、通常は借入として登録される取引ではありません。詳細は、契約先や各信用情報機関の公表内容で確認してください。
ファクタリングと融資の入金時期・調達額・通知の違い
ファクタリングと融資では、入金までの手続き、調達できる金額の決まり方、取引先への知られ方が異なります。ファクタリングは買い取る売掛債権の確認と契約が手続きの中心で、調達額も売掛金の額面が基準になります。
融資は申込企業の返済能力を審査したうえで借入額が決まり、売掛金の額に直接は縛られません。どちらも入金時期や金額は申込先の審査や契約条件で変わるため、一方が必ず早い、必ず多く調達できるとはいえません。取引先への通知はファクタリング特有の論点で、契約方式によって扱いが分かれます。
ファクタリングの所要日数は契約方式と書類の準備で変わる
ファクタリングの入金までの期間は、契約方式、審査の進み具合、書類がそろうまでの時間によって変わります。一般的な流れは、申込み、書類提出、審査、契約、入金の順です。
3社間の契約では、売掛先に債権譲渡を通知し、承諾を得る手順が加わります。売掛先の社内手続きを待つ時間も必要になるため、2社間よりも入金まで日数がかかる傾向にあります。
2社間は売掛先の手続きを挟まない分、書類と契約がそろえば短い期間で資金化できる場合もあります。ただし、契約内容によっては債権譲渡登記が求められ、その手続きの分だけ時間を要します。
追加の書類提出や売掛先への確認を求められれば、予定より入金が遅れる可能性も出てきます。即日の入金を案内している申込先でも、申込みの時刻や審査の状況によっては当日中に入金されないことがあります。
融資は審査や契約手続きによって入金までの期間が変わる
融資の入金までの期間は、審査、書類の確認、契約手続きの進み具合によって変わります。申込み後は、書類の確認、面談や事業内容の聞き取り、金融機関内での決裁を経て、契約と入金に進むのが一般的な流れです。
必要な手続きは融資の種類によって異なります。銀行融資で信用保証協会の保証を付ける場合は、金融機関の審査に加えて協会の審査も行われます。
日本政策金融公庫などの公的融資では、融資制度ごとに定められた要件を満たしているかが確認されます。事業者向けローンには、提出書類を絞り、短期間での審査を案内している商品もあります。
ファクタリングで受け取れる金額は売掛金の額面を下回る
ファクタリングで資金化できる金額の基礎は、買取対象となる売掛債権の額面です。実際の入金額は、額面から買取手数料などを差し引いた金額となるため、売掛金の額面を下回ります。
売掛金の額面が希望する調達額を上回っていても、必要な金額を確保できるとは限りません。ファクタリング会社が売掛先の信用力や取引状況を踏まえて、債権の一部だけを買い取ったり、買取を見送ったりする場合があるためです。買取額に上限を設けている申込先も見られます。
複数の売掛先の債権をまとめて売れば調達額を増やせる可能性はありますが、売掛先ごとに審査されるのが一般的で、すべてが買い取られる保証はありません。利用前には、売却したい売掛金の合計額ではなく、見積もりで示された入金予定額が支払いに必要な金額を満たしているかを確認してください。
融資は返済能力や担保などの条件によって借入額が決まる
融資で借りられる金額は、申込企業の返済能力、資金の使い道、事業計画、既存の借入額などをもとに判断されます。返済に充てられる利益や手元資金の見通しが、借入額を決める土台です。
金融機関や融資制度によっては、担保や保証の内容も判断材料に加わります。不動産などの担保を提供する場合や、信用保証協会の保証を付ける場合は、担保の評価額や保証の限度額が借入額に影響します。公的融資では、融資制度ごとに貸付限度額が定められています。
ファクタリングとの違いは、売掛債権の額面に借入額が直接縛られない点にあります。設備資金のように売掛金の額を超える資金も、返済の見通しが立てば借入の対象になります。
2社間と3社間では売掛先への通知や承諾の扱いが異なる
3社間ファクタリングでは売掛先への通知や承諾を伴うのが一般的で、2社間ファクタリングでは売掛先に通知しない形で契約できる場合があります。
2社間は利用者とファクタリング会社の2者で結ぶ契約、3社間は売掛先も関与する契約です。3社間では売掛先が債権譲渡を承諾し、支払期日に代金をファクタリング会社へ直接支払います。売掛先に資金調達の事実が伝わるため、取引関係への影響を事前に考えておく必要があります。
2社間でも、売掛先に知られる可能性がないわけではありません。債権譲渡登記を行った場合、登記の概要は第三者でも法務局で証明書を取得して確認できます。
利用者が支払期日に代金を引き渡さないなどの契約違反があれば、ファクタリング会社が売掛先へ債権譲渡を通知することもあります。契約前に、どのような場合に通知が行われるのかを契約書で確認してください。
融資と比べたときにファクタリングを使う長所と短所
融資と比べたとき、ファクタリングの長所は、担保や保証人を用意する負担が小さい点です。一方で、短い期間の資金調達でも手数料がかかるため、受け取る金額が売掛金の額面より少なくなるという短所があります。
売掛金がなければ利用できない点も、融資との大きな違いです。事業計画に合わせて必要な額を借りる融資とは異なり、ファクタリングで調達できるのは手元にある売掛金の範囲に限られます。
長所と短所のどちらが大きく影響するかは、資金が必要な期間、売掛金の量、手元資金の状況によって変わります。ファクタリングが担うのは借入の代わりではなく、入金の時期を早める役割です。
売掛債権の売却では担保や保証人を求められないことが多い
真正な債権売買では売掛債権そのものが取引の対象になるため、融資で求められるような不動産担保や保証人を用意しないケースが多く見られます。
買取会社は売掛先から代金を回収する前提で取引するため、利用者の資産や保証人に回収の手段を求める必要が通常はないからです。
不動産などの担保を持たない企業や、創業から間もない企業でも、保有している売掛金があれば資金調達に活用できます。保証人を頼める相手がいない場合や、代表者個人の保証をこれ以上増やしたくない場合にも、検討の対象になります。
ただし、担保や保証人が不要な点は、ファクタリングだけの特徴とはいえません。融資にも、無担保の商品や経営者保証を求めない融資制度があります。
ファクタリングでも、債権が実在することなど利用者側が守るべき義務について、代表者の保証を求める契約が見られます。
契約前に、保証を求める条項が含まれていないかを確かめてください。
短期間の資金調達では手数料の負担が大きくなる場合がある
ファクタリングでは、売掛金の支払期日までの期間が短くても、契約で定めた買取手数料が差し引かれます。手数料は売掛金の額面に対する割合で決まるのが一般的なため、数日から数週間だけ資金を前倒しする場合でも、受け取る金額は額面より少なくなります。
手数料の分だけ、売上として計上した金額のうち実際に手元に残る資金が減ります。利益率の低い取引の売掛金を売る場合、手数料によって取引で得られるはずだった利益の多くが失われることもあります。受取額が想定を下回れば、仕入れや給与などの支払いに必要な金額を満たせず、別の資金を手配しなければならない可能性も出てきます。
融資の利息は借りている期間に応じて増えるのに対し、ファクタリングの手数料は期間が短くても一定の負担として生じるのが一般的です。利用する前に、売掛金を売った後に残る利益と、支払いに必要な金額を照らし合わせておけば、経営への影響を事前に把握できます。
売掛金がなければ利用できず継続的な資金調達には注意が必要
ファクタリングは売却する売掛債権があって初めて成り立つ取引で、対象となる債権がなければ原則として資金を調達できません。創業直後で取引実績がない企業や、現金での取引が中心の事業では、利用できる場面が限られます。
利用を繰り返す場合は、資金繰りへの影響にも目を向ける必要があります。ファクタリングで得る資金は、将来入金される予定だった売掛金を前倒しで受け取ったものです。
今月の不足を来月分の売掛金で補うと来月の入金が減り、再び売掛金を売らなければならない状況に陥ることがあります。
同じ流れが続けば、手数料の負担が毎回積み重なっていきます。
資金不足が一時的な入金のずれによるものか、利益や手元資金そのものの不足によるものかで、取るべき対応は異なります。継続的な不足が続いている場合は、ファクタリングだけに頼らず、資金繰り全体を見直すことが求められます。
売掛債権担保融資とファクタリングの違いも押さえておく
売掛債権担保融資は、売掛金を活用する点ではファクタリングと似ていますが、法的には借入にあたります。ファクタリングが売掛債権を売って代金を受け取る取引であるのに対し、売掛債権担保融資は売掛債権を担保として差し入れ、資金を借りる取引です。
そのため、売掛債権担保融資では借りた資金を返済する義務があり、売掛先からの入金とは別に返済の約束が残ります。どちらも売掛金をもとに資金を得るため名称や手続きが似ていますが、契約の性質と返済義務の有無を確認すれば区別できます。
売掛債権担保融資は売掛金を担保にして資金を借りる方法
売掛債権担保融資は、企業が持つ売掛債権を担保として、金融機関などから事業資金を借りる方法です。不動産などの固定資産を持たない企業でも、売掛金を担保に入れることで借入を検討できます。
担保の設定には、売掛債権を担保の目的で貸し手に譲渡する方法が多く用いられます。売掛先への通知や承諾によって対抗要件を備える方法のほか、法人であれば債権譲渡登記を利用する方法もあります。信用保証協会にも、売掛債権などを担保とする融資に保証を付ける制度が設けられています。
融資の条件は、担保となる売掛債権の金額や売掛先の信用力に加え、借り手の返済能力なども踏まえて判断されます。売掛債権を活用していても取引の性質は融資であり、借り手は契約に従って借入金を返済する義務を負います。売掛先から代金が支払われなかった場合でも、返済の義務はなくなりません。
売掛債権の所有権と返済義務の有無によって扱いが異なる
ファクタリングと売掛債権担保融資は、売掛債権を「売る」か「担保に入れる」かで扱いが異なります。ファクタリングでは売掛債権が買取会社のものになり、利用者が受け取る資金は売却の代金です。売掛債権担保融資では、売掛債権は返済を確保するための担保として扱われ、利用者が受け取る資金は借入金にあたります。
注意したいのは、担保の設定でも債権譲渡の形が使われる場合があることです。譲渡担保と呼ばれる方法では、売掛債権の名義が貸し手に移りますが、目的はあくまで貸付の担保にあります。借入金を返済すれば、担保としての拘束は解かれます。
このため、債権の名義が移るかどうかだけでは、売買か担保かを判断できません。契約書で、受け取る資金が売却代金なのか借入金なのか、返済の約束があるのかを確認すると、取引の実質を把握できます。
ファクタリングと融資の選び方は資金の使い道と期限で考える
ファクタリングと融資のどちらを選ぶかは、資金を何に使うのか、いつまでに必要なのかを整理すると判断できます。入金待ちによる一時的な不足を埋めるのか、設備投資のように長い期間をかけて回収する資金なのかで、適した方法は変わります。
あわせて、必要な金額、売掛金の有無、借入を返していける見通しがあるかも確認します。調達の速さや審査の通りやすさだけで選ぶと、手数料や返済の負担が後の資金繰りを圧迫するおそれがあります。
支払期日が迫り融資が間に合わないときはファクタリングを検討
仕入代金や外注費の支払期日が迫り、融資の実行が間に合わない場合は、ファクタリングが検討の対象になります。融資は審査と契約に一定の日数を要することがあり、支払期日に入金が間に合わなければ取引先からの信用に影響しかねません。
検討の前提は、支払期日より前に売却できる売掛金があることです。そのうえで、買取の審査と契約が支払期日までに終わるかを申込先に確認し、間に合う見込みが立ってから手続きを進めます。
調達の速さだけで決めるのは避けてください。手数料を差し引いた受取額で支払いを賄えるか、売掛金を売った後の月に入金が減って別の不足が生じないかも、あわせて見ておく必要があります。取引先に支払期日の延長を相談できる場合は、その方法と比べて判断することも考えられます。
設備投資など長期の資金需要には融資が向いている
設備の購入や新しい拠点の開設など、効果が何年にもわたって現れる資金需要には、返済期間を設定できる融資が向いています。設備が生み出す売上や利益から少しずつ返済していく形にすれば、投資と返済の時期をそろえられるからです。
融資を検討するときは、事業計画をもとに必要な金額と返済期間を決めます。判断の目安は、設備によって増える利益で毎回の返済額を賄えるかどうかにあります。設備の使用期間に比べて返済期間が極端に短いと、投資の効果が出る前に返済の負担が重くなります。
ファクタリングで設備資金を賄う方法は、多くの場合なじみません。調達できる額が手元の売掛金に限られるうえ、運転資金に回すはずだった入金を前倒しで使うことになり、仕入れや給与の支払いに影響するおそれがあるためです。
赤字決算で融資を受けにくい場合は売掛先の信用力を生かす
赤字決算で融資の審査が厳しくなる場合でも、売掛先の信用力を重視するファクタリングは選択肢になり得ます。審査の中心が利用企業の決算内容ではなく、売掛先が期日に代金を支払えるかどうかにあるためです。
ただし、利用企業が赤字でも必ず買い取ってもらえるわけではありません。売掛金が実在するか、取引内容に問題がないか、売掛先に支払能力があるかが確認され、条件を満たさなければ利用は難しくなります。
判断の前に、赤字の原因と、資金不足がどのくらい続くのかを確かめておいてください。一時的な受注の減少や大口の支出によって生じた赤字であれば、売掛金の資金化でつなぐ方法が成り立つ場合もあります。
一方、毎月の収支そのものが赤字の状態では、ファクタリングで得た資金も早い段階で尽きる可能性が高くなります。その場合は、取引のある金融機関への相談や経費の見直しを含め、資金繰り全体の改善を先に進める必要があります。
継続的な運転資金は融資を軸にファクタリングで補う
仕入れや人件費など毎月発生する運転資金は、資金繰りの計画を立てたうえで、融資を中心に確保する方法が考えられます。融資であれば必要な期間に合わせて返済の予定を組めるため、毎月の支出と返済を計画の中で管理できます。
ファクタリングは、その補助として使う位置づけです。大口の受注で仕入れが一時的に増えた月や、売掛金の入金日が支払日より後になる月など、入金のずれで不足が生じる場面に限って活用します。
組み合わせる場合は、それぞれの負担を分けて把握してください。融資では毎月の返済額と利息が、ファクタリングでは利用のたびに差し引かれる手数料が負担になります。
ファクタリングを融資の代わりに使う前に確認したい注意点
ファクタリングを融資の代わりに使う前には、契約が本当に債権の売買になっているかを確かめる必要があります。債権の買取をうたいながら、実際には高い利息を取る貸付と変わらない取引が存在するためです。
契約書では、手数料の内訳や、売掛先が支払わなかった場合に利用者が負う義務を確認します。利用者の側にも、売却する売掛金を正しく管理し、同じ債権を重ねて売らない責任があります。契約の名称ではなく中身で判断し、不明な点を残したまま署名しないことが、トラブルを防ぐ基本になります。
実質的な貸付にあたる偽装ファクタリングを見分ける
偽装ファクタリングとは、売掛債権の買取を装いながら、実際には貸付と同じ働きをする取引のことです。金融庁は、ファクタリングを装って高金利の貸付を行うヤミ金融業者の存在を確認しているとして、注意を呼びかけています。
金融庁の注意喚起では、次のような取引が問題のある例として示されています。
- 受け取る買取代金が債権の額面に比べて著しく低い(偽装ファクタリングの疑い)
- 債権の回収を任された利用者が集金できなかった場合に、利用者が債権を買い戻すこととされている(貸金業に該当するおそれ)
- 同じく集金できなかった場合に、利用者が自己資金で業者へ支払うこととされている(貸金業に該当するおそれ)
契約書に「債権譲渡契約」と書かれていても、貸金業に該当するかどうかは取引の実態から判断されます。貸付を業として行うには財務局または都道府県の登録が必要で、無登録での営業は刑事罰の対象です。契約前に不安な点があれば、金融庁の金融サービス利用者相談室や弁護士に相談してください。
契約書で手数料の内訳と買戻し義務などの条件を確かめる
契約前には、利用者が実際に受け取る金額がわかる形で、契約書や見積書に費用が記載されているかを確認します。
| 確認項目 | 見ておく内容 |
|---|---|
| 費用 | 買取手数料の金額、事務手数料や登記費用などの追加費用の有無 |
| 振込額 | 費用を差し引いた後の入金額と入金日 |
| 支払方法 | 2社間の場合、回収した代金を業者へ渡す期日と方法 |
| 不払い時の扱い | 買戻し義務や償還請求権の有無、損害賠償の条件 |
| 解除の条件 | 契約違反とされる行為と、その場合に生じる負担 |
売掛先が支払わなかったときに利用者が何を負担するかは、契約によって大きく異なります。買戻しや償還請求に関する条項があるだけで、直ちに違法な取引と決まるわけではありません。
ただし、そうした条項を含む契約は利用者が不払いのリスクを負うため、借入に近い性質を持ちます。金融庁も、売主が債権を買い戻すこととされている取引などは、貸金業に該当するおそれがあるとしています。内容が曖昧な条項や口頭でしか説明されない条件があれば、署名する前に書面で示すよう求めてください。
同じ売掛金を複数の業者に売却する二重譲渡を避ける
二重譲渡とは、同じ売掛債権を複数の相手に譲渡することです。すでにファクタリング会社へ売却した売掛金を、別の業者にも売った場合が典型的な例にあたります。
二重譲渡が起きると、どの譲受人が債権を取得するかをめぐって争いが生じます。民法では、確定日付のある証書による通知や承諾、または債権譲渡登記といった対抗要件を先に備えた側が優先されます。
権利を得られなかった業者に対して、利用者は契約違反として損害賠償などの責任を負うおそれがあります。意図的に同じ債権を売って代金をだまし取った場合は、詐欺罪などの刑事責任に問われかねません。
うっかりした二重譲渡を防ぐには、売却した請求書や売掛金を一覧で管理し、譲渡済みであることがわかるようにしておきます。複数のファクタリング会社を利用している場合は、どの売掛金をどこに売ったかを記録し、申込みのたびに照合してください。





