資金繰り改善の方法10選!悪化する原因と資金調達の具体策を解説

資金繰り改善の方法10選!悪化する原因と資金調達の具体策を解説

「売上はあるのに月末の支払いが苦しい」という状況は、中小企業や個人事業主の経営で珍しくありません。資金繰りの悪化は、売上の減少だけでなく、売掛金の回収条件や在庫、借入の返済負担など複数の要因が重なって起こります。

この記事では、資金繰りが悪化する主な原因を整理したうえで、自社で取り組める改善方法10選と、資金が足りないときに使える資金調達の手段を解説します。

結論として、資金繰り改善は

  • お金の出入りを時系列で把握
  • 社内でできる対策から順に実行
  • 足りない分を外部調達で補う

という順番で進めるのが基本です。この順番を守ると、対応の遅れや借入の増やしすぎを減らせます。

目次

資金繰り改善が必要になる主な原因

資金繰りが悪化する原因は、売上の減少だけではありません。売掛金の回収、在庫、設備投資、借入金の返済、入出金の管理などが手元資金に影響します。

黒字でも、入金より支払いが先に続けば預金残高は減ります。対策を選ぶ前に、どの原因が資金不足につながっているかを確認しましょう。

主な原因資金への影響確認すること
売上の減少・赤字営業活動で得る資金が減る売上高・粗利益・固定費
売掛金の回収遅れ入金までの立て替えが続く取引先ごとの入金日・未回収額
過剰在庫・不良在庫現金が商品にとどまる在庫の回転期間・滞留状況
事業拡大・設備投資売上が増える前に支出が発生する投資後に残る運転資金
借入金の返済毎月の返済が支出に加わる借入先ごとの返済額・返済日
入金日と支払日のずれ一時的に預金残高が不足する日付ごとの入金・支払い予定
資金の出入りの管理不足不足に気づくのが遅れる数か月先までの資金残高

売上が減ると固定費の支払いが資金を圧迫する

売上が減っても、家賃や人件費、借入金の返済はすぐには減りません。入金が支出を下回る月が続けば、預金を取り崩して支払いを続けることになります。

赤字が続くと、本業の営業活動だけでは支払いに必要な資金を生み出せず、預金や追加の借入れに頼る状態になります。資金の減り方を判断するときは、売上高だけでなく、粗利益と固定費も合わせて確認しましょう。

確認する数字減少している場合に考えられること次に確認すること
売上高受注や販売が減り、入金額が小さくなっている減少が一時的か、複数月続いているか
粗利益値引きや原価上昇で、売上から残る利益が減っている販売価格や仕入価格を見直せるか
固定費を差し引いた後の金額家賃や人件費などを支払うと、現金が残りにくい固定費の規模が現在の売上に合っているか

売上高だけが下がっているなら、受注や販売の減少が主な課題です。売上が保たれていても粗利益が減っている場合は、値引きや原価上昇が利益を押し下げている可能性があります。粗利益を確保できていても固定費を支払うと赤字になるなら、現在の売上規模に対して固定費が重くないかを見直してください。

このように原因を分けると、売上を増やすのか、価格や仕入条件を見直すのか、固定費を抑えるのか、取るべき対策を選びやすくなります。資金繰り表で預金残高の推移も確認し、対策を始める時期を決めましょう。

売掛金の回収が遅いと入金までの立て替えが増える

納品やサービス提供を終えても、売掛金が入金されるまでは、仕入代金や外注費、人件費を自社の資金で支払います。回収までの期間が長いほど、立て替える金額や期間が大きくなります。

売上が伸びている会社でも、入金より先に仕入れや人件費が増えれば、売上の拡大が資金不足につながる場合があります。

  • 取引先ごとの締め日と支払日
  • 入金予定日と予定額
  • 支払期日を過ぎた売掛金の有無

入金日を取引先ごとに確認すると、立て替えが発生する時期や金額を特定しやすくなります。

在庫が滞留すると現金に戻らない資金が増える

在庫は、仕入れた商品に現金が形を変えたものです。販売して代金を回収するまでは、支払いには使えません。売れ残りが増えるほど、現金が商品にとどまる期間が長くなります。

保管中も倉庫代や管理の人件費がかかります。値下げや廃棄が必要になれば、仕入れに使った金額の一部を回収できない場合もあります。

確認する項目分かること見直しの方向
仕入れから販売までの日数商品に現金がとどまる期間仕入量や発注頻度を販売実績に合わせる
一定期間動いていない在庫販売見込みを上回っている商品追加発注を止める、販路や販売方法を見直す
値引き・廃棄による損失仕入額を回収できていない金額値下げや処分の時期を早め、損失の拡大を防ぐ

販売までの日数が長い商品や、長期間動いていない商品が増えているなら、仕入れの量や時期が販売実績に合っていない可能性があります。

まず該当商品の追加発注を見直し、販売方法や処分の時期を検討しましょう。保管を続ける費用と、値下げして早く現金化する場合の損失を比べると、対応を決めやすくなります。

事業拡大や設備投資では売上より先に支出が発生する

新店舗の開設、設備の購入、人員の増加では、売上が増える前にまとまった支出が発生します。設備代や敷金、採用後の給与などを先に払い、投資による入金は後から始まるためです。

利益が見込める投資でも、売上が立つまでの期間を短く見積もったり、投資額が手元資金に対して大きすぎたりすると、仕入れや給与に使う運転資金が不足します。投資後の資金残高まで試算してから、実施時期や規模を決めましょう。

確認項目確認する内容判断への反映
支出の時期と金額設備代、敷金、採用費、人件費などがいつ、いくら必要か資金が大きく減る時期を予測する
売上が増える時期投資後、売上や入金がいつから増える見込みか支出から入金までの期間を見積もる
投資後の運転資金仕入れや給与など、日常の支払いに使える現金がいくら残るか不足する場合は投資時期や規模を見直す

売上の増加が遅れた場合も想定し、投資後の預金残高が最低限必要な水準を下回らないか確認してください。運転資金が不足する見込みなら、投資を延期する、段階的に実施する、規模を小さくするといった調整を検討します。

借入金の返済が重なると毎月使える資金が減る

借入れをすると、調達時には手元資金が増えますが、その後は元本と利息の返済が続きます。返済額が本業で生み出す資金に対して大きいと、仕入れや給与などに使える資金が圧迫されます。

売上が計画どおりに伸びないときや、元本返済の据置期間が終わったときに、返済負担が資金繰りに表れる場合があります。

  • 借入先ごとの毎月の返済額と返済日
  • 借入残高と返済期間
  • 複数の借入れを合わせた月々の返済総額

返済日が特定の日に集中していないかも確認します。日付ごとの残高を見れば、返済後に一時的な資金不足が起きる時期を見つけられます。

入金より支払いが先に来ると一時的に現金が足りなくなる

月単位で利益が出ていても、仕入代金や給与の支払日が売上代金の入金日より先なら、入金までの間は自社の資金で支払う必要があります。

たとえば、仕入先への支払いが毎月25日、取引先からの入金が翌月10日なら、仕入代金を入金まで立て替える期間が生じます。月末や賞与の支給月、納税時期など、支払いが重なる時期は預金残高が大きく減ることもあります。

月ごとの収支だけでなく、入金日と支払日を日付ごとに並べて確認しましょう。残高が最も少なくなる日と金額が分かれば、資金不足に備えやすくなります。

資金の出入りを追えていないと対応が後手に回る

入金予定や支払予定を確認していないと、資金不足に気づくのが支払日の直前になり、取れる対応が限られます。原因が売上減少や回収遅れにあっても、発見が遅れれば資金不足が深刻になる可能性があります。

損益計算書や試算表から分かるのは、主に過去の利益や現時点の財務状況です。売掛金の入金日、借入金の元本返済、税金や賞与の支払日を含めた将来の預金残高までは分かりません。

数か月先までの入金と支払いを予定ベースで並べ、残高の推移を確認しましょう。資金が不足する時期と金額が早めに分かれば、金融機関への相談や売掛金の早期回収などを検討する時間を確保できます。

資金繰りを改善する方法10選

資金繰りを改善する方法は、入金を早める、支出を抑える、資産を現金化する、返済条件を調整する方法に分けられます。どの施策が合うかは、資金不足の原因や必要な時期によって異なります。まず不足する時期と金額を確認し、効果が見込める対策から進めましょう。

方法主な内容確認する点
①資金繰り表を作る入金・支払いを時系列で確認する不足する時期と金額
②売掛金の回収条件を見直す入金日を早められないか相談する取引先との合意、請求業務の遅れ
③買掛金の支払条件を相談する支払日を調整できないか交渉する契約条件と法令上の期限
④在庫を見直す仕入量を調整し、滞留品を販売する販売数、保管費用、処分価格
⑤固定費を削減する契約や料金プランを点検する削減による売上・業務への影響
⑥遊休資産を売却する使っていない資産を現金化する事業への必要性、維持費、売却価格
⑦投資時期・金額を見直す支出の時期や規模を調整する緊急度、投資後の運転資金
⑧返済条件を相談する金融機関に返済条件の変更を相談する変更後の返済額と審査
⑨前受金を取り入れる着手金や手付金を受け取る条件を検討する取引先の合意、業界慣行
⑩資金調達を早めに準備する不足が見込まれた段階で申込みを進める必要額、期限、審査にかかる時間

社内でできる見直しと、取引先・金融機関との相談は、必要に応じて並行して進めます。資金調達には審査や手続きに時間がかかる場合があるため、不足が確定するまで待たず、早めに準備してください。

①資金繰り表で不足する時期と金額を確認する

資金繰り改善の出発点は、今後の入金と支払いを日付または月ごとに並べ、預金残高の推移を確認することです。現在の残高に予定入金を加え、予定支払いを差し引くと、資金が不足する時期と金額が見えてきます。

入金に含めるもの売掛金の入金、その他の入金予定
支払いに含めるもの仕入代金、給与、家賃、借入返済、税金、社会保険料など

金額がまだ確定していない項目は、契約内容や過去の実績をもとに見込み額を入れます。残高がマイナスになる時期だけでなく、事業継続に必要な最低残高を下回る時期も確認してください。

不足が数か月先に分かれば、経費の見直しや取引先との交渉、金融機関への相談に時間を使えます。感覚だけで判断せず、予定を更新しながら資金繰り表を確認しましょう。

②売掛金の入金を早める条件を取引先と相談する

売掛金の回収を早めるには、支払サイトや締め日、入金日を見直せないか取引先に相談します。新規契約や契約更新の時期なら、翌々月末払いを翌月末払いにする、締め日を月2回にするといった提案ができる場合があります。

一方、長い支払サイトが取引慣行になっている場合、条件変更が受注に影響する可能性もあります。取引額や相手先との関係を踏まえ、交渉する相手や変更幅を検討してください。取引先との交渉と並行して、請求業務も点検しましょう。

自社で進められる主な対応
  • 納品後、請求書を速やかに発行する
  • 請求書の発行漏れや記載ミスを防ぐ
  • 入金予定日と未入金額を取引先ごとに確認する
  • 期日を過ぎた売掛金は、状況を確認して連絡する

③買掛金の支払日は契約と法令を確認して相談する

仕入先や外注先への支払日は、契約内容を確認したうえで、相手先と変更を相談できる場合があります。たとえば、支払日の調整によって、売掛金の入金まで立て替える期間を短くできることがあります。

相手先にとっては入金が遅くなる提案です。自社の入金サイクルを説明し、取引の継続や発注量なども踏まえて、合意できる条件を話し合いましょう。一方的に支払いを遅らせると、信用低下や取引停止、契約上の遅延損害金につながるおそれがあります。

また、取引内容によっては支払期日に法令上の制限が適用されます。変更を相談する前に、契約条件と適用されるルールを確認してください。

参照元:公正取引委員会 取適法

④在庫を見直し売れ残りにとどまる資金を減らす

在庫を減らすときは、品目ごとの販売数と在庫数を比べ、販売見込みを超えた商品や、一定期間動いていない商品を確認します。仕入れから販売までの期間も見ると、資金が長くとどまっている品目を見つけやすくなります。

今後の仕入量を販売実績に合わせ、すでに滞留している商品は販路の追加やセット販売、値下げなどで販売を検討します。在庫が減れば、仕入れに必要な資金や保管費用を抑えられる場合があります。

値下げや処分を決めるときに比べる金額
  • 販売・処分で回収できる金額
  • 保管を続けた場合にかかる費用
  • 値下げによって生じる損失

⑤毎月の固定費を点検して継続的な支出を抑える

固定費を見直すには、毎月の支出を一覧にし、契約の必要性や料金プランを点検します。対象となるのは、事務所・店舗の賃料、通信費、保険料、月額サービス、外注費、リース料などです。

使っていない契約の解約、プランの変更、複数社からの見積もりによる単価交渉は、支出を抑える方法です。月々の固定費を1万円削減できれば、1年間で12万円の支出減になります。

ただし、広告費や人件費などを削ると、売上や業務に影響する可能性があります。事業に必要な費用まで減らさないよう、削減額だけでなく、売上やサービスへの影響も確認してから進めましょう。

⑥使っていない資産を売却し維持費も見直す

稼働していない設備や車両、不動産、備品などは、売却して現金化できる場合があります。保有を続けると固定資産税、自動車税、保険料、駐車場代、保守費用などがかかる資産もあります。

売却前に、事業で再び使う予定がないか、代替手段が必要か、売却価格がいくらかを確認します。売却価格と帳簿価額の差は、会計・税務上の処理にも関わります。

金額が大きい場合は、税理士に相談してから売却時期を決めてください。

⑦投資の時期や規模を調整し支出の集中を避ける

設備更新や新規事業への投資は、実施時期をずらす、複数回に分ける、規模を小さくすることで、一時期に資金が出ていくのを抑えられる場合があります。

予定している投資を、先送りできないものと時期を選べるものに分けて検討しましょう。延期できる投資は、預金残高に余裕が出る時期へ移す方法があります。

一括購入をリースや割賦に切り替えると、初期の支出を分散できる場合があります。ただし、手数料や金利を含む総支払額は購入方法によって異なるため、契約前に比較してください。投資後に運転資金がどれだけ残るかも確認が必要です。

⑧返済が厳しくなる前に金融機関へ条件変更を相談する

借入金の返済が資金繰りを圧迫している場合は、返済が滞る前に金融機関へ相談しましょう。返済期間の延長や、一定期間の元本返済の据え置きなどを協議できる場合がありますが、変更の可否は金融機関の審査によります。

相談時には、現在の状況と変更後の返済計画を数字で説明できるよう、次の資料を準備します。

  • 直近の試算表
  • 今後の資金繰り表
  • 条件変更後の返済計画
  • 売上回復や経費削減の計画

複数の金融機関から借りている場合は、一行だけでなく、各行への相談が必要になることがあります。条件変更後の返済負担や今後の融資への影響も確認したうえで判断してください。

⑨着手金や前受金を受け取れる契約条件を検討する

受注時に着手金や手付金、前受金を受け取る契約にできれば、納品や業務完了までの立て替え負担を抑えられる場合があります。建設、製造、システム開発など、着手後に材料費や外注費が発生する取引では、取引先と相談する余地があります。

導入できるかは、業種の慣行や取引先の合意によって異なります。新規取引や大型案件から提案する、着手金の割合を調整するなど、相手先が検討しやすい条件を提示しましょう。

⑩資金不足が見込まれた段階で調達準備を始める

資金調達は、預金が尽きてからではなく、資金繰り表で不足が見込まれた段階で準備を始めます。融資は書類提出や審査に時間がかかる場合があり、補助金・助成金も公募時期や入金時期が決まっているためです。

準備で明確にするポイント
  • 必要な金額
  • 資金が必要になる日
  • 返済が必要な方法を使う場合の返済計画

決算書、試算表、資金繰り表、事業計画などを早めに用意しておけば、調達方法を検討するときに手続きを進めやすくなります。必要額や期限が分かった時点で、金融機関などの申込先にも相談してください。

資金繰り改善では資金繰り表で現金の動きを確認する

資金繰り表は、一定期間の入金・支払いと預金残高の推移を記録し、将来の資金状況を確認する資料です。損益計算書と異なり、実際にいつ現金が入り、いつ出ていくかを確認できます。

資料主に分かること
損益計算書一定期間の売上や費用、利益
資金繰り表入金・支払いの時期と、各期間に残る預金

売掛金の入金や借入金の返済、設備代金の支払いは、損益が計上される時期と一致しないことがあります。資金繰り表を作成し、実績を反映しながら更新すると、資金不足への対策や外部調達を検討する時期を決めやすくなります。

入金と支払いを分け確定額と見込み額を記録する

資金繰り表は、縦に入出金の項目、横に月や週などの期間を並べて作ります。期間ごとに入金と支払いを集計し、預金残高の推移を確認します。

入金売掛金の回収、現金売上、借入金の入金など
支払い仕入・外注費、給与、家賃、借入返済、税金、社会保険料など

支払いは、売上に応じて変わる費用、家賃や給与など毎月発生する費用、賞与や納税、借入返済など時期が決まっている支出に分けると、記入漏れを防ぎやすくなります。

金額には、確定したものと見込みのものがあります。請求済みの売掛金や契約で決まった家賃は確定額、来月以降の売上予測は見込み額として区別しましょう。月が終わったら見込み額を実績に置き換え、予測との差を確認すると、その後の予測に反映できます。

期末残高の推移から対策を始める時期を決める

資金繰り表では、期間ごとの入金・支払いだけでなく、期間末に残る預金額を確認します。

期末の預金残高 = 期首の預金残高 + 入金額 − 支払額

この計算を期間ごとに続けると、残高が減る時期や、資金が不足する時期を予測できます。最低限必要な支払額や、自社で決めた確保水準を下回る時期があれば、そこから逆算して対策を始めます。

確認する数字対策を考える目安
期間末の預金残高支払いに必要な額や自社の確保水準を下回る時期がないか
残高が最も少なくなる時期支出の見直しや資金調達の準備をいつ始めるか

確保したい残高は、業種や売上の季節変動によって異なります。残高がゼロにならないことだけを基準にせず、予定外の支払いにも対応できる余裕を考慮して、自社の基準を決めてください。

支払いが集中する時期は週単位・日単位で確認する

月単位の資金繰り表では、給与や税金、借入返済など、特定の日に支払いが集中することを見落とす場合があります。月全体では入金が支払いを上回っていても、入金日より前に支払いが続けば、一時的に預金が不足するためです。

手元資金に余裕が少ない時期は、週単位または日単位の資金繰り表、いわゆる日繰り表を使います。日ごとの入金・支払い・残高を記録し、残高が最も少なくなる日と不足額を確認しましょう。

管理方法使う場面確認する内容
月次の資金繰り表通常時の資金管理月ごとの入金・支払い・期末残高
週次・日次の日繰り表残高に余裕がなく、短期の不足が気になるとき日ごとの入金・支払い・残高の最小値

不足する日が分かったら、その日までに入金を早められる売掛金や、支払日を相談できる取引先がないかを確認します。日繰り表は、資金に余裕がある時期まで毎日作る必要はありません。月次表を基本とし、短期の不足が見込まれる期間に絞って併用すると、管理の負担を抑えられます。

資金繰り改善に利用できる主な資金調達の手段

社内での見直しだけでは資金が足りない場合は、融資、ビジネスローン、ファクタリング、補助金・助成金も検討します。資金を受け取る仕組みや、調達後にかかる負担は方法ごとに異なります。

選ぶときは、必要な金額と時期、資金の用途、返済額や手数料を確認しましょう。調達までの速さだけで決めると、費用や返済が重くなり、資金繰りに影響する場合があります。

方法資金を得る仕組み主な負担・確認点
銀行融資金融機関から借り入れる元本・利息の返済、審査、融資までの期間
日本政策金融公庫の融資制度に基づく融資を受ける制度ごとの対象要件、審査、返済条件
ビジネスローン事業者向けローンを借り入れる適用金利、返済総額、毎月の返済額
ファクタリング売掛債権を譲渡して期日前に資金化する手数料、契約条件、売掛先の不払い時の責任
補助金・助成金制度の要件を満たした事業者に資金が給付される公募・審査、対象経費、入金までの時期

審査や利用条件は、申込者の状況や制度・商品によって異なります。申込みの前に、各機関の公式情報で対象要件や最新の条件を確認してください。

銀行融資は返済計画を立てて運転資金や設備資金を借りる

銀行融資は、銀行や信用金庫などから資金を借り、契約に定められた期間で元本と利息を返済する方法です。仕入れや人件費に使う運転資金、機械や店舗設備などの購入に使う設備資金を調達できます。

資金繰り表で確認するポイント
  • 既存分を含む毎月の返済額
  • 返済後に仕入れや給与などを支払えるか
  • 売上が計画を下回った場合も返済を続けられるか

返済期間や金利は、資金の用途、金融機関、申込者の信用力、担保・保証の有無などによって異なります。信用保証協会の保証を付ける場合は、金利とは別に保証料がかかることがあります。

申込みでは、決算書や試算表、資金使途を示す資料、事業計画書などをもとに審査が行われます。希望する金額や金利で借りられるとは限りません。

日本政策金融公庫は小規模事業者や個人事業主向けの融資を扱う

日本政策金融公庫は、政府出資の政策金融機関です。国民生活事業では、小規模事業者や個人事業主、創業企業などへの事業資金融資を扱っています。

融資制度には、創業資金、一般的な運転資金・設備資金、経営環境の変化に対応するための資金などがあります。制度ごとに対象者、融資限度額、返済期間、金利が異なるため、希望する資金使途に合う制度を確認してください。

公庫の融資にも審査があり、申込みだけで融資が決まるわけではありません。制度や金利は変更されることがあるため、申込前に日本政策金融公庫の事業資金ページで最新情報を確認しましょう。

ビジネスローンは返済総額と毎月の負担を確認して利用する

ビジネスローンは、法人や個人事業主が事業資金に使うローン商品です。銀行や、貸金業登録を受けた貸金業者が提供しています。商品によって申込条件や融資額、金利、返済期間、審査方法が異なります。

商品によっては、銀行の融資より短い期間で審査・融資を行うものもあります。ただし、金利や返済条件も商品ごとに異なるため、表示された金利の下限で借りられるとは限りません。

申込み前に同じ条件で比べてる項目
  • 適用される金利と手数料
  • 借入額に対する返済総額
  • 毎月の返済額と返済期間
  • 遅延損害金や繰上返済の条件

短期間の資金不足を補う目的で利用する場合も、返済後の資金残高を確認しましょう。貸金業者から借りる場合は、金融庁の登録貸金業者情報検索サービスで登録状況を調べられます。

ファクタリングは売掛債権を譲渡して支払期日前に資金化する

ファクタリングは、保有する売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、支払期日前に資金を受け取る方法です。金融庁は、一般的なファクタリングを、売掛債権などを期日前に手数料を差し引いて買い取るサービスと説明しています。

売掛債権の売買であれば、借入れのような元本と利息の返済はありません。一方、手数料が差し引かれるため、受け取る金額は売掛債権の額面を下回ります。継続利用を考える場合は、手数料を含めた資金繰りへの影響も確認してください。

契約前の確認点確認する内容
契約方式利用者と業者の2者で契約するか、売掛先を含む3者で契約するか
費用手数料や諸費用を差し引いた後の振込額
売掛先への通知通知や承諾が必要か
回収できない場合の責任買戻しや弁済を求める条項があるか

契約名だけで取引の性質は判断できません。金融庁は、売掛先が支払わない場合に利用者が買い戻す、または自分の資金で業者に支払う契約などについて、実質的に貸付けと同じ機能を持つ可能性があると注意を促しています。条項の有無だけで結論を決めず、契約全体を確認してください。

仕組みや契約方式は、ファクタリングの解説ページで説明しています。

補助金・助成金は対象経費と後払いに備えて検討する

補助金・助成金は、国や自治体などが制度の要件を満たす事業者に資金を給付する仕組みです。原則として返済は不要ですが、対象者や経費、申請期間などは制度ごとに決まっています。申請しても採択や受給が確約されるわけではありません。

補助金は、事業の実施と支払いが終わり、実績報告や確認を経てから支払われる後払いが原則です。対象事業の支出をいったん自社でまかなう資金が必要です。

参照元: 経済産業省 ミラサポPLUS 補助金入門 STEP3:補助の審査・交付・報告

申請前に確認するポイント
  • 対象となる事業者と経費
  • 公募期間や申請に必要な書類
  • 採択後に事業を始められる時期
  • 支出から補助金の入金までをつなぐ資金

補助金・助成金は、すぐに必要な資金を埋める手段として見込まず、申請条件と入金時期を確認したうえで、他の資金調達方法と組み合わせて検討しましょう。

資金繰り改善は優先順位を決めて順番に進める

資金繰りの改善は、現状の確認、社内での対策、不足額の算出、調達手段の比較の順に進めます。不足額と必要な時期が分からないまま調達すると、必要以上に借りたり、手数料を負担したりするおそれがあるためです。

ただし、資金が近く不足する見込みなら、社内の見直しと外部調達の準備を並行して進めます。改善策を実行した後も計画と実績を比べ、状況に応じて更新してください。

段階行うこと確認できること
1. 現状を確認現預金と入出金予定を並べる不足する時期と金額
2. 社内で対策支出や回収条件を見直す対策で減らせる不足額
3. 不足額を算出対策後の資金繰りを再計算する外部から必要な金額と期限
4. 調達手段を比較費用、入金までの期間、返済負担を見る自社の収支に合う方法
5. 計画を更新計画と実績を定期的に照合する予測とのずれや再発の兆候

現預金と入出金予定を並べ資金不足の時期を確かめる

最初に、今日時点の現預金残高と、向こう1〜3か月の入金・支払いを日付と金額で一覧にします。

入金予定請求済みの売掛金、現金売上の見込みなど
支払予定給与・社会保険料、仕入・外注費、家賃、税金、借入返済など

予定を並べたら、残高と入金で支払いをまかなえるかを確認します。不足する場合は、いつ、いくら必要になるかを算出してください。不足までの期間によって、取引先との交渉や資金調達に使える時間が変わります。

確定額だけでなく、見込みの入金や支出も加えます。見込み額の根拠が弱い項目は、楽観的な数字にせず、余裕を持った金額で計算しましょう。

社内で実行できる対策を始め効果を資金繰りに反映する

資金不足の時期と金額が分かったら、支出を減らす、入金を早めるなど、社内で進められる対策を検討します。固定費の見直しや請求書の早期発行などは自社で着手できますが、回収条件や支払条件の変更には取引先の合意が必要です。

対策は、不足する時期までに効果が出るかを基準に優先します。

すぐ着手できるもの

不要な契約の解約、請求書の発行漏れの解消

交渉や販売に時間がかかるもの

回収・支払条件の変更、滞留在庫の販売

実行した対策の効果は、金額に換算して資金繰り表に反映します。たとえば固定費を月5万円削減できた場合は、その後の支払予定から月5万円を差し引き、不足額がどれだけ小さくなるかを確認します。

社内対策だけで不足が解消すれば、外部調達は必要ありません。不足が残る場合は、対策後の数字を使って調達額を決めます。

対策後に残る不足額と資金が必要な期限を算出する

社内対策を資金繰り表に反映したら、預金残高が最も少なくなる時点を確認します。その残高が自社で決めた最低水準を下回る場合は、差額が外部から確保する資金の目安です。

不足額の目安 = 確保したい最低残高 − 最も少なくなる時点の予測残高

予期しない支出に備える金額を加えるかどうかも、この時点で決めます。必要額だけでなく、資金が必要になる日も明確にしておきましょう。

入金時期や費用と返済負担を比べて調達方法を選ぶ

不足額と期限が決まったら、融資、ビジネスローン、ファクタリング、補助金などを同じ項目で比べます。

調達額必要額を確保できるか
入金時期支払期限までに資金を受け取れるか
費用利息、手数料、諸費用を含めていくらかかるか
返済・資産への影響毎月の返済が発生するか、売掛債権や資産を手放すか
申込条件審査、必要書類、対象となる事業者や債権の条件

必要以上の金額を調達すると、使わない資金にも利息や手数料がかかる場合があります。調達後の返済や費用を支払っても資金繰りが続くかを確認し、不足額に見合う金額を選びましょう。

借入以外の方法も費用と事業への影響を比べる

返済負担を避けたい場合は、売掛債権の早期現金化や遊休資産の売却も、借入れと合わせて比較します。ただし、返済がないことだけで有利とは判断できません。

方法主な負担・注意点
借入れ利息と毎月の返済が発生する
売掛債権の売却手数料が差し引かれ、受取額が額面を下回る
資産の売却売却価格や諸費用が発生し、事業に必要な資産を失う可能性がある

資金化までの期間、費用、事業への影響を比べ、自社が受け入れられる負担を基準に選びます。資産売却では、売った後に同じ機能を借りる・外注する費用がかからないかも確認してください。

計画と実績を定期的に照合し予測を更新する

資金不足を解消した後も、売上の変化や仕入条件の変更、新たな投資、借入返済の開始によって、資金繰りは変わります。計画と実績を比べ、ずれがあれば今後の予測に反映しましょう。

  • 予定した日と実際の入金日に差がなかったか
  • 予定した支出額と実際の金額がどれだけ違ったか
  • 差が一時的なものか、今後も続く変化か

たとえば、主要な取引先からの入金が繰り返し遅れている場合は、入金予定を実績に合わせて修正し、不足が再発しないかを確認します。売上や支出の変化が大きい時期は確認の頻度を上げ、計画を現状に合わせて更新してください。

資金繰り改善が必要なときに避けたい対応

資金が不足すると、支払いを遅らせる、条件を十分に確認せず資金を調達する、資金計画なしで投資するといった対応を急ぎがちです。一時的に現金を確保できても、取引先との関係や返済負担、その後の資金繰りに影響が残る場合があります。

避けたい対応と、代わりに確認することをまとめました。

避けたい対応起こりうる問題代わりに行うこと
資金が尽きてから調達を始める選択肢や比較する時間が限られる不足する時期から逆算して準備する
取引先に連絡せず支払いを遅らせる信用や取引関係に影響する支払期日前に相談し、条件を確認する
手元資金を確認せず投資する日常の支払いに使う資金が不足する投資後の残高と運転資金を試算する
金利や手数料だけで調達先を決める返済額や入金時期が合わない場合がある総費用や契約条件も比較する

資金が尽きる前に調達にかかる時間を見込んで準備する

預金残高がほとんどなくなってから資金調達を始めると、審査や契約に必要な時間を確保できず、選択肢が限られることがあります。融資は審査や契約に時間がかかる場合があり、補助金も申請から入金まで数か月以上かかる制度があります。

時間に余裕がないと、複数の方法を比べる前に契約を決め、手数料や金利などの負担を十分に検討できないおそれがあります。調達後の費用が翌月以降の資金繰りを圧迫し、再び資金が不足することも考えられます。

資金繰り表で不足する時期が見えたら、調達に必要な期間から逆算して準備を始めましょう。必要な期間は調達方法や申込先によって異なるため、申込先の公式情報で確認してください。

支払期日を過ぎる前に取引先へ連絡して相談する

資金が足りない場合でも、取引先に連絡せず支払期日を過ぎる対応は避けましょう。契約上の問題となるほか、取引先からの信用を損ない、今後の取引条件に影響する可能性があります。契約に遅延損害金の定めがあれば、その負担が生じることもあります。

期日までに支払えない可能性が分かった時点で、取引先に事情を説明し、支払日や分割払いについて相談します。相談時は、いつまでにいくら支払えるかを具体的に伝えてください。

ただし、取引先と合意すれば、どの取引でも自由に支払期日を変更できるとは限りません。取適法などが適用される取引では、支払期日に法令上の制限があります。変更の前に契約内容と適用されるルールを確認してください。

支払いが複数の取引先に及ぶ場合は、自社だけで支払先の順番を決めず、状況を整理して、必要に応じて税理士や弁護士などの専門家にも相談しましょう。

投資の前に売上が立つまでの運転資金も見積もる

売上の増加が見込める投資でも、実行後の預金残高を確認せずに進めると、仕入れや給与などの日常の支払いに影響することがあります。設備代や出店費用は先に発生し、投資による売上は後から入るためです。

投資額だけでなく、売上が立つまでに必要な運転費用も見積もります。

  • 設備代や出店費用など、投資に必要な金額
  • 売上が増えるまでの期間
  • その間にかかる人件費、広告費、家賃など
  • 投資後に残る預金と、最低限必要な運転資金

売上が計画どおりに伸びない場合も想定し、一定期間の支払いを続けられるか確認してから投資を決めましょう。

金利や手数料だけでなく調達後の負担まで比べる

金利や手数料が低くても、必要な金額を調達できない、入金が間に合わない、返済額が収支に収まらない場合は、資金繰りの解決につながりません。商品や業者を選ぶときは、費用以外の条件も合わせて確認します。

調達額必要な金額を確保できるか
入金時期支払期限までに資金を受け取れるか
費用利息・手数料・諸費用を含めた総額はいくらか
返済・契約条件毎月の返済額や、売掛先が支払わない場合の責任はどうなるか
申込条件審査基準、必要書類、対象となる事業者や債権の条件は何か

金利が幅で表示されている商品は、下限の金利が適用されるとは限りません。実際の条件を申込先に確認し、返済予定額や手取り額を書面で比較してください。

ファクタリングでは、手数料だけでなく契約方式や債権回収ができなかった場合の条件も確認しましょう。

監修者情報

株式会社トップ・マネジメント
元代表取締役 大野兼司

事業者金融時代に営業職として中小零細企業の資金調達に従事し延べ500人以上の経営者の資金繰り相談を受け、独立し事業者金融業を開業。延べ1000社以上の資金調達を支援してきました。事業者金融を廃業後、2006年に欧米で主流になりつつあったファクタリングに着目し、ファクタリング会社を起ち上げ。現在では日本でも浸透している2社間ファクタリングの仕組みを弊社が作り、これまでに5.5万社以上の中小零細企業の資金繰りを支援して参りました。トップ・マネジメント代表取締役を退任後、現在は合同会社Success Gateにて、これまでに築き上げた金融に関する幅広い知見を活かし、web広告事業や経営コンサルティングを行っています。

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