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急速に進む資金調達のオンライン化!従来の融資との違いを解説

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金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた事業領域である「フィンテック」の隆盛により、金融業界では様々な革新的なサービスの展開が活発化しています。
インターネットバンキングやスマートフォンを活用した決済など、すでに日常生活に不可欠なサービスがいくつもありますが、フィンテックに含まれるサービスのうち、事業主にとって最も関わりが深いものといえばオンライン融資ではないでしょうか。
オンライン融資はその名称通り、金融機関に出向くことなく、インターネット上で融資に必要なすべての手続きを完了できる融資サービス。従来の融資に比べると、書類の作成や審査にかかる手間や時間の大幅な削減が可能であり、圧倒的なスピードで資金を調達できるようになっています。
経営者のみで事業を行っている企業や、少数精鋭の企業など、人的リソースを抑えた経営においては、効率性と生産性のバランス感覚が特に重要です。その点でも、手間や時間を削減した資金調達が可能なオンライン融資は、心強いサービスであるといえるでしょう。
では、オンライン融資とは具体的にどのような仕組みや特徴があるのでしょうか。

AIとビッグデータの活用によりオンライン上で完全完結可能な融資サービス

AIとビッグデータの活用によりオンライン上で完全完結可能な融資サービス

これまでにも「オンライン完結型」を掲げる融資サービスは複数ありましたが、その多くは、問い合わせや申し込みこそオンライン上で出来るものの、担当者との面談が必要になるほか、審査についても人的なチェックがされるものがほとんどでした。
一方、昨今において普及が進むオンライン完結型の融資は、「AI」や「ビッグデータ」を活用することにより、人的なコンタクトを極限まで排した仕組みで実行されるサービスです。
このような「完全オンライン型融資」は「オンラインレンディング」ともよばれており、申し込みから、審査、着金までのすべての流れをオンライン上で完結できるようになっていることから、利用者側だけでなく、提供する側の金融機関にとっても、利便性向上の恩恵を受けられるようになっています。
迅速かつ手間を省いて資金調達をしたい事業者と、煩雑な審査を簡素化したい金融機関の双方のニーズに応えられるオンラインレンディングは、現在最も注目度の高い資金調達手段のひとつであることは確かです。

オンラインレンディングの3つのサービス形態

オンラインレンディングの3つのサービス形態

オンラインレンディングのサービス形態は、大きく3つに分けられます。

スコアレンディング

ひとつめは、「スコアレンディング」です。
スコアレンディングは、システムに搭載されたAIが融資を申し込む個人や団体の返済能力や信用力をスコア化(点数化)し、自動的に審査結果を導き出すサービス形態です。
スコア算出にあたっては、事前に登録した情報や提示される質問に対する回答内容が基にされ、その結果から融資可能額、利率などが決定されます。
また、数値のみでは表せない評価や価値、たとえば「経営者個人の年収や年齢、住所」「持ち家の有無」「SNSでの投稿内容」「製品やサービスの購買状況」などのプロフィール情報などについてもスコア化される点がスコアレンディングの特徴です。
したがって、従来までの“数値第一主義”ともいえる審査とは異なり、定性的な評価や価値も加味された審査によって融資の可否を判断できるようになったといえます。
そもそも、スコアリングによる審査自体はかねてより銀行が実施していたこともあり、決して目新しい手段ではありません。ただ、このスコアリングを申し込み者がインターネットを通じてオンライン上で行えるようになり、審査結果の通知を速やかに得られるようになった点が、スコアレンディングの魅力ということになります。

バランスシートレンディング

ふたつめは「バランスシートレンディング」です。
バランスシートレンディングは、インターネットバンキングや会計ソフトにおける入出金状況をデータ化し、それを基にした審査によって融資の可否を判断するサービス形態です。
従来の融資審査で判断材料とされてきた過去の決算書類や取引状況などの静的なデータとは異なり、口座データや商取引データといった動的なデータを基にした審査が可能になることで、事業のリアルタイムの状況や実績を評価対象とすることができます。

トランザクションレンディング

みっつめは「トランザクションレンディング」です。
トランザクションレンディングは、ECサイトなどの特定のプラットフォームを通じて融資の可否を判断するサービス形態。売上データや決済データなどの集積された取引情報をAIが分析したうえで信用力を調査し、融資の可否を判断します。
バランスシートレンディングと同じように、従来のような財務情報にとられることなく、リアルタイムの状況や実績をもとにした審査が可能になるため、至急の資金需要にも迅速に応えられる点が大きなメリットだといえます。

オンライン融資のメリットとデメリット

オンライン融資のメリットとデメリット

ではオンライン融資(オンラインレンディング)には、どのようなメリットとデメリットがあると考えられるのでしょうか。従来の融資との違いを踏まえながら解説していきます。

メリット

ネット環境が整っていればすべての手続きが可能

オンライン融資の最大のメリットは、やはりインターネットの利用環境があればいつでもどこからでも申し込みから着金までの流れを完結できることです。
従来の融資では、銀行や信用金庫のサービスを利用するのであればわざわざ窓口まで足を運ぶのが当たり前でした。また、先述したように「オンライン型」を掲げていても、結局のところ、担当者との面談が必要になるなど、オンライン完結型とはいえないサービスがほとんどでした。
対して、AIとビッグデータを基にしたシステムの構築により、窓口などへ足を運ぶ必要がないのはもちろん、担当者と対話をすることもなく、インターネットの利用のみで融資の可否が判明するのは大きなメリット。細かい話にはなりますが、銀行などへ向かうための交通費も不要になりますし、わざわざ面談のためにスケジュールを調整する必要もなくなるわけです。

審査に必要な書類の作成や提出の省略

オンライン融資では、集積されたビッグデータを基にしてAIによる審査が実行されます。
たとえば、「バランスシートレンディング」であればインターネットバンキングや会計ソフトにおける入出金状況、「トランザクションレンディング」は特定のプラットフォームにおける取引情報などが用いられることになるため、あらためて書類を作成したり、決算書や資金繰り表などを提出したりする必要がなくなります。
従来の融資を利用した経験があれば理解できるかと思いますが、審査に必要な書類の作成や準備にかかる労力や時間は悩ましい限りです。
もちろん、サービスによっては特定の書類の提出を求められるものもありますが、オンライン融資の仕組み上においては原則不要。いわば、審査に必要な情報は提出済みの状態で、すぐに審査に移れる状態からの申し込みが可能になるのです。

保証人や担保なしでの契約が可能

信用力がそう大きいとはいえない中小企業や個人事業主が民間の金融機関から融資を受けるためには、保証人や担保の用意が必要。これが従来の融資における“常識”ともいえる契約です。
保証人や担保が求められる理由は、現在もしくは将来的な売上や利益から十分な返済能力があるとはいえないと判断、あるいはそのリスクに備えるための対策として。担当者としても、貸し倒れのリスクを回避するうえでは合理的な判断のもとで要求しているものです。
対して、オンライン融資の審査はAIが実行することになるため、集積データの分析によって返済能力に問題がないと判断されれば、保証人や担保を求められることなく融資を受けられる可能性があるのです。

デメリット

データの集積までは申し込みができない

従来の融資は、金融機関やノンバンクを問わず、新規の申し込みがいつでも可能であるというメリットがあります。
一方、オンライン融資の審査は集積されたデータに基づいて行われるという仕組みであることから、十分なデータがない状態では審査に至れないということになります。
たとえば、会計ソフトのデータを基にして審査が行われるオンライン融資であれば、該当する会計ソフトの使用期間が短いと、申し込みすら叶わないというケースもありえるということです

金利は高めの傾向

オンライン融資の金利は、3〜15%の範囲で設定されることが多いといわれていますが、これは低金利政策の続く現在の日本では決して低いとはいえない数値です。
ノンバンクはともかく、銀行の一般的な融資では1%台からの金利も珍しくなく、金利を含めた最終的な返済額は、オンライン融資を利用した場合のほうが増すケースもあるわけです。
金利が高めな傾向の理由は、AIの導入や維持にかかるコストを反映する必要があるため。また、人的な審査の省略は手続きの簡素化につながる反面、金融会社として貸し倒れ等のリスク対策が軽薄になるといった事情もあるためたでもあります。

まとめ

今回は、サービスの普及が進むオンライン融資について解説しました。
オンライン融資は、AIとビッグデータの活用により、申し込みの簡素化や審査にかかる時間の短縮といった、従来の融資が抱えていた課題を解決できるサービスです。

まだまだ一般的な資金調達手段になったとはいえず、利用率もそれほど高くないのが現状ですが、フィンテックの取り組みを強化するノンバンクを中心に、今後はさらなるサービスの導入や発展が進むことが期待されます。