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会社にお金を残すための11の節税対策を解説します!

貯金箱を手のひらで大事に包む画像

会社が年間の事業活動で利益を得ると、その所得に応じて法人税を納めなければなりません。
そこで大切になるのが「節税対策」です。
もしも節税対策をしていなければ、所得からおよそ30%もの税金を納めなければならなくなる可能性もあり、言うまでもなくその額が高ければ高いほど手元に残る資産は減ることになります。

なるべく多くの資産を残すためにも、効果的な節税対策を適切に行っていきたいものですが、いくら施しても税金額を抑えられないという悩みを持った経営者は少なくありません。特に、起業したばかりの経営者であれば、その悩みも強い傾向にあるようです。
そこで、今回はなるべく多くの資産を残すためにぜひ実施してみてほしい11の節税対策をご紹介します。

節税方法の基本は「損金」を減らすこと

損金についてのイメージ画像

これから紹介していく節税対策に共通するポイントは、「損金」を増加させるというものです。「損金」とは、会社の経営において資産が削れる要因となったお金のこと。税法上と会計上の概念に違いこそあれ、経費もそのうちのひとつにあたります。

法人税は、会社が得た所得の合計から所得控除を差し引いた「課税所得」に応じて決定されます。つまり税額を抑えるためには、この「課税所得」を減らすことが大切になるわけです。
その方法のひとつになるのが、損金の額を増加させること。損金が増加すると、利益が減少するため「課税所得」も下がり、税額も抑えられるようになるということになります。

法人税の節税対策には、国が実施する特別控除制度を活用する方法もありますが、まずはそれぞれの会社による節税に向けた自助努力が求められます。

効果的な11つの節税対策

税金が削減されていくイメージ画像

ここからは、具体的な節税対策をみていきます。どれも難しい知識は必要ありませんが、高い効果をもたらすものばかりですので、ぜひ参考にしてみてください。

1.役員報酬の設定見直し

会社の節税対策としてよく知られているのが「役員報酬の見直し」です。役員報酬については、同額の報酬を支払うといった条件を満たすことにより、損金に算入することが可能です。そこで、役員報酬を増やす、あるいは役員を新たに追加するといった方法で損金を増やし、課税所得をさげるというのがこの対策になります。

ただし、役員報酬の支払い額を上げすぎると、その分、所得税や住民税の金額に響くことにもつながりますので、節税対策だからといって無闇に上げるのは厳禁です。

なお、役員報酬の設定見直しは、事業年度の開始から3ヶ月以内に行わなければ損金への算入が認められなくなりますので、この点にも注意しておきましょう。

2.賞与を決算のタイミングで支給する

決算のタイミングで社員への賞与を支給すると、決算の前後を問わずにその金額を損金として算入できます。この対策を実施すると、たとえば決算前に予想以上の利益を得られた場合などでも、課税所得の調整ができるようになります。仮に未払いの状況であっても、当期の損金として認められますので、急ぎで税金の額を調整したい場合なので有用です。

3.中古資産を購入する

中古車の購入が節税対策として効果的であることはよく知られていますが、そのほかにも、土地や建物、設備といった使用済みの中古資産の購入は節税対策として大きな効果を発揮します。

中古資産を購入すると、資産の価値に応じて、その購入費を減価償却費として毎年損金へ計上できるようになります。

4.新たに会社を設立する

新たに会社を設立すれば、法人税が増えるのではないかと思うかもしれませんが、年間の所得によっては、節税対策のひとつとなります。

年間所得が800万円以上の会社は、23.2%の法人税が課せられるのに対し、800万円以下であれば、軽減税率が適用されて15%になります。つまり、新たに会社を設立して、この制度をうまく活用すれば、所得を分散して節税につながるというわけです。さらに、事業税にも軽減税率が適用されますので、両方の適用によっていっそう節税効果は高まるといえます。

ただし、正当な業務の実態がみられず、節税目的での会社設立だと断定されれば、追徴課税などの罰則を受ける可能性もあるので気をつけましょう。

5.オフィスの賃貸費を全額前払いにする

一定の条件を満たす必要はありますが、オフィスの賃貸費などの「家賃」を前払いにすると、「短期前払費用」という名目で、支払額を損金に計上できます。ただし、効果を発揮するのは最初の1年のみ。翌期以降も年払いが必要になるため、「課税の繰り延べ」としてとらえておく必要があります。

6.福利厚生を充実させる

健康診断や社員旅行、保養施設やトレーニングジムの利用など、福利厚生には様々なものが挙げられますが、条件を満たすことにより、これらにかかる費用を福利厚生費として損金に計上することができます。

たとえば、健康診断であれば、会社がその費用を負担するとともに、全社員を対象とすることで、福利厚生費として認められます。

また、社員旅行については、4泊5日以内の旅行期間や全社員の50%以上が参加、社員1人につき10万円以下の旅費は会社が負担するという条件をすべて満たすと、福利厚生費として損金に計上できます。

会社の資金的に規模の大きな福利厚生の導入は難しいといった事情もあるかもしれませんが、福利厚生は社員の満足度を高めると同時に節税効果もあるということを覚えておきましょう。

7.団体定期保険に加入する

団体定期保険とは、会社が保険契約者となり、役員や従業員などが加入できる定期保険です。遺族の生活保障を準備するためにもぜひ加入しておきたい保険ですが、この保険料も当然ながら損金となります。

8.出張旅費規程を定める

社員の出張が多い会社であれば、「交通費」や「宿泊代」も経費計上が可能であり、損金に算入できます。
ただし、「出張」の定義をしっかりさだめておかなければ、税務調査において、使途の指摘を受ける可能性があるため、出張の「定義」や「交通費の限度額」、「出張先において経費計上可能な費用」などを細かく決めておくことが大切になります。

9.経営セーフティ共済への加入

取引先の倒産が影響する「経営難」や「連鎖倒産」に備えるための共済制度が「経営セーフティ共済」です。
支払った掛金は損金計上できるほか、たとえば経営難になると、掛金の10倍の資金を借り入れできるようになります。8,000万円の上限こそあるものの、節税対策としてだけでなく、倒産リスクの回避策としても非常に有用です。

10.社宅を提供する

これも福利厚生のひとつになりますが、社員に社宅を提供すると、その関連費用を損金として算入できます。
従業員にとっては、低い家賃で入居できるメリットがあり、会社にとっては節税対策になりますので、こちらも可能であれば導入したい施策です。注意点を挙げるのであれば、「社宅」の提供ではなく「住宅手当」の支給については、給与扱いとなりますので、しっかりと違いを理解しておく必要があります。

11.使用しない固定資産を処分する

中古資産の購入とは反対に、不要になった古い固定資産を処分することも節税対策のひとつです。処分にかかった費用の損金計上はもちろん、固定資産税や維持費の支払いが不要にもなります。また、減価償却の期間が終了する前に処分すれば、残った減価償却費も損金計上することができます。

節税対策の注意点

スーツの男性が人差し指をたてて、注意を促す画像

法人税額を抑えられる節税対策を実施すれば、なるべく多くの資金を会社に残すことができます。一方で、節税対策を実行するにあたっては、意識しておかなければならない注意点もいくつかあります。

ひとつは、節税対策だからといって無闇やたらと会社のお金を使いこまないことです。経営者のなかには、損金を増やす目的で、必要以上に中古資産を購入したり、交際費や飲食費を好き放題に経費計上する人もいますが、このような行為が繰り返されると、損金が増えて税金額は抑えられても、会社に必要なお金まで減っていくばかりのケースに陥る可能性があります。

ですので、税金対策を実施するのであれば、しっかりと会社に残すべきお金を把握し、バランスをとりながら実施しなければなりません。

また、過度な節税によって「脱税」を疑われる可能性があることも忘れるわけにはいきません。損金を増やして税額を抑えるという行為は、決して違法ではありません。しかし、「納税義務から逃れようとする」意図がみえる節税対策は、脱税とみなされ、重い罰則を受けることになります。

節税対策は「税金から逃れるの」が目的ではなく、「納税額をできるだけ抑えて、健全かつ円滑な経営を持続」させることが目的。「脱税」と「節税」はまったく異なる概念です。節税対策を実施する場合は、「納税から逃れる」ことなく、会社の規模や利益に応じた「適切な対策」にとどめるようにしましょう。

まとめ

まとめ

今回は、なるべく多くの資産を残すためにぜひ実施してみてほしい11の節税対策を紹介しました。

すでに実施している節税対策もあれば、初めて耳にしたものもあったのではないでしょうか。また、すぐに始められそうな対策から、入念な検討が必要な対策など様々ですが、節税対策は決して難しい行為ではないことがお分かりいただけたかと思います。

節税対策のポイントは「損金を増やすこと」です。だからといって必要以上に増やそうとする行為は許されるわけではありませんが、今回紹介した節税対策を実施すれば、確実に節税につながるはずですので、ぜひ実施を検討してみてください。