法人

企業のメインバンクとしてメガバンクが失速し、ネット銀行が急伸しているのはなぜか?

企業メインバンクがネットバンクにアイキャッチ画像

企業のメインバンクといえば都市銀行、もしくは地方銀行や信用金庫というのが、ひと昔前までの定説でした。
しかし昨今、そのような定説に変化がみられるようになっています。
企業信用調査を行う帝国データバンクが2022年12月に発表した「全国企業メインバンク動向調査」によると、実店舗をもたない「ネット銀行」が、企業のメインバンクとして大きくシェアを伸ばしているといいます。
来店することなく、低い手数料での送金をはじめとする利便性の高さが理由のひとつであることはもちろんですが、そもそも店舗型金融機関の役割に変化が現れたことも理由として挙げられるようです。
今回は、帝国データバンクの発表を基に、企業におけるメインバンクの動向とともに、ネット銀行が急伸する理由について解説していきます。

社数とシェアが減少傾向にある3大メガバンク

銀行イメージ画像

企業のメインバンクとしてネット銀行のシェアが拡大しているとはいえ、やはり現在もトップ3に立つのは「三菱UFJ銀行」、「三井住友銀行」、「みずほ銀行」の3大メガバンク。
「三菱UFJ銀行」をメインバンクとする企業は9万5718社で、シェア率は6.53%。これは、帝国データバンクが2009年から開始した調査から14年連続でトップになっています。
次いで「三井住友銀行」の7万6880社(シェア率5.25%)、「みずほ銀行」の6万1831社(シェア率4.22%)。
圧倒的なシェア率ともいうべき結果ではありますが、前年比をみると「三菱UFJ銀行」は約1,000社減少で、13年連続でシェアが縮小しています。
また、「三井住友銀行」も同じく約1,000社、「みずほ銀行」は400社の減。
根強くトップ3に立っているといえど、緩やかながら社数とシェア率へ減少傾向が続いています。
一方、地方・第2地方銀行は、上位10行のうち6行がランクインしました。このうち前年からシェア率を伸ばしたのは福岡銀行や千葉銀行など3行。減少したのは、第四北越銀行のみでした。

時代とともに変わる金融機関の役割

銀行のイメージ画像

目立つのは、やはり3大メガバンクをメインバンクにする企業の減少傾向。業種別にみると、りそな銀行を含めたメガバンクのシェアは19.30%となり、過去最低のシェア率となりました。
対する地方・第2地方銀行は、大きくシェアを伸ばすことはないものの、微増または現状維持といった結果となっています。
絶大なる信頼感と圧倒的な資金力を兼ねるメガバンクがメインバンクとして選ばれにくくなっている理由のひとつとして考えられるのは銀行の役割が時代とともに変化しているからだといえるのではないでしょうか。
従来における企業と金融機関の関係性は、あくまでも「融資元と融資先」。金融機関側は、融資を希望する企業を抱え込み、企業側はいかに低金利で借入を受けられるかに重きを置いて金融機関との付き合いを続けてきました。
ところが、近年顕著にみられる中小企業の事業承継問題やDX、脱炭素に向けた資金需要など、低金利以外の貸出のみならず、企業の方向性や事業の根本的な改革までをも支援する役割を期待する企業が増加しているといえます。
そういったきめの細かいサポートは、膨大な取引を抱えるメガバンクよりも地方銀行に分があり、都市部の企業であってもメインバンクを地方銀行へシフトする動きも今後は増加するのかもしれません。
また、みずほ銀行の度重なるシステム障害が記憶に新しいですが、こういった不祥事は、絶大な信頼感がウリであるはずのメガバンク全体に対する不信感につながることも考えられ、企業のメガバンク離れの一因となっているとも考えられます。

10年前から続くネット銀行のシェア拡大

ネットバンクイメージ画像

減少または緩やかな上昇がみられる実店舗をもつ金融機関に対して、猛追をかけているのが、楽天銀行やPayPay銀行をはじめとしたネット銀行です。
実店舗をもたず、すべての取引をオンライン上で完結できるネット銀行は、2022年の調査結果によると、社数で約2,500、シェアは0.17%。
3大メガバンクに比べれば見劣りする数字ではあるものの、10年前と比較すると社数で5.5倍、シェアは約6倍にまで伸びています。
ネットバンク急伸の大きな要因は、やはり利便性の高さ。
現在では、各金融機関がネット上での取引を可能にするネットバンクを導入していますが、実店舗が存在する以上、手続きや要件によっては実店舗に足を運ばなければならないケースも生じ得ます。
その点、ネット銀行は「足を運ぶ」概念そのものが存在せず、いつでもどこにいても、各種取引を進められる強みを持ちます。
また、送金にかかるコストが抑えられるほか、完全無料で口座を維持できるといった強みも、ネット銀行の魅力のひとつ。経費を極限まで抑えたい企業にとっては、大きなメリットだといえます。
ネット銀行が店舗型金融機関を追い抜いて、たちまち企業のメインバンクとしてトップに立つことは現時点では現実的とはいえないものの、それでも確実にシェアを拡大しているのは事実であり、今後のサービスによっては、3大メガバンクを脅かすほどの存在になりえる可能性もゼロではないでしょう。