経営者のみなさんは、最近小切手を使いましたか?
最近はすっかり使わなくなったという経営者の方もいれば、まったく使ったことがないという方もいることでしょう。
また、起業したばかりの経営者の中には、小切手という存在や仕組みすら知らないという人もいるのではないでしょうか。
確かに、2024年時点ではかつてほど小切手を使う機会が減ってきていることから流通量も減少傾向にあるようですが、小切手を利用するにあたっては現金を用意する必要がないため、その安全性の高さから代金の支払いに利用する経営者も一定数いるようです。
今回は小切手とはどんなもので、どのように扱うのか。また、利用にあたっての注意点や今後の動きなどについても解説します。
目次
小切手とは?
小切手は、決められた金額の支払いを約束する有価証券であり、現金の代わりに支払いを完了できる決済手段のひとつです。
小切手自体にお金としての価値はありませんが、小切手には支払い金額が記載されており、銀行に持ち込むことによって、記載された金額の現金に引き換えることが可能になります。
小切手は発行することを「振出」とよび、振出す側の企業や個人のことを「振出人」、受け取る側を「受取人」といいます。さらに、小切手を現金に引き換える銀行などの金融機関は「支払人」です。したがって、小切手の取引は「振出人」「受取人」「支払人」の3者間で行うことになります。
小切手の振出から現金化までの流れ
口座開設から振出しまで
まず、小切手を振出すためには、代金を支払う側である振出人が、あらかじめ銀行などの金融機関に当座預金口座を開設したうえで審査を受ける必要があります。支払いを受ける側の受取人はあらためて口座を開設する必要はありません。
審査に通過し、当座預金口座を開設して銀行から小切手用紙が綴られた「小切手手帳」が交付されると、小切手の振出が行えるようになります。
振出人は、支払う金額を前もって当座預金口座に預け入れておき、小切手に以下のような8つの要件を記載します。これらは法律で定められた要件ですので、振出す際には必ず漏れなく記載されていなければなりません。
①小切手である旨を示す文字 ②小切手金額 ③支払い地 ④支払人名(銀行など金融機関名) ⑤振出日 ⑥振出地 ⑦振出人の署名(押印) ⑧支払委託文句「上記金額をこの小切手と引換えに持参人にお支払いください」など。 |
なお小切手用紙には、交付された時点であらかじめいくつかの要件は記載されているため、振出人が実際に記載する事項は、「金額」「振出日」「振出人の署名(押印)」のみです。
受取りから現金化まで
記載要件に誤りがないことを確認した後、振出人は小切手を受取人に渡します。
小切手を受け取った受取人は記載要件を確認し、問題がなければ金融機関へ持ち込んで現金に換金することが可能になります。
持ち込み先の金融機関は、原則として振出人に指定された「支払地」とよばれる金融機関となり、振出日の翌日から10日以内に換金しなければなりません。
ただし、何らかの事情によって支払地に出向くのが難しい場合は、最寄りにある自社の取引銀行でも換金できます。これを「取引委任」とよびますが、取引委任にて現金化する場合には、取立手数料が発生し、これを負担するのは受取人となります。ですので、取引委任をする場合は、受取人は振出人に対して前もってその旨を伝えておかなければ、後に大きなトラブルに発展する可能性もあるので注意が必要です。
また、支払地での現金化が持ち込み日の翌日にできるのに対して、取引委任では金融機関が手形交換所にて不渡りの有無を確認する必要があるため、持ち込みから現金化までには最低でも3日ほどの時間を要します。
小切手の種類
小切手と一言でいっても、特定の受取人や現金の受け取り方を指定しできるものなど、種類は主に4つあります。
①持参人払込式小切手
一般的に小切手というと、こちらの「持参人振込式小切手」のことを指します。
持参人振込式小切手の大きな特徴は、小切手を金融機関へ持ち込む「持参人」が現金を受け取ることができる点です。したがって、仮に小切手を紛失や盗難されてしまった場合、それを取得した第三者でも金融機関で現金に引き換えることが可能になってしまいます。
また、換金可能な金融機関を指定されることもありません。
持参人振込式小切手は、最も流通量が高く使い勝手のよい小切手ですが、紛失や盗難によって不正な換金が行われた場合は自己責任となりますので受け取りにあたっては注意が必要です。
②線引小切手
線引き小切手には、「特定線引小切手」と「一般線引小切手」があります。
特定線引小切手は、券面に引かれた2本の平行線の間に金融機関名が記載されており、現金化については記載された金融機関でのみ取り扱っているうえ、受取人の指定口座への入金でのみ現金を取得することができる小切手です。
一方の一般線引小切手は、2本の平行線の間が無記載、もしくは「銀行」「Bank」「銀行渡り」と記載されているタイプです。特定線引小切手と同じく、指定口座への振込でのみ現金を取得することが可能ですが、金融機関を指定されることはありません。
どちらも受取人の口座への振込でしか現金を取得できないため、紛失や盗難にあった場合の不正換金リスクを低下させることができます。
③記名式小切手
「記名式小切手」は、小切手に記載された「上記金額をこの小切手と引換えに持参人にお支払いください」という文言のうち、持参人という箇所に二重線を引いて具体的な受取人名を記載することで、特定の受取人を指定することのできる小切手です。
線引小切手と同様に、不正換金リスクを避けられるメリットがあります。
④先日付小切手
「先日付小切手」は、振出日を振出す当日の日付ではなく、先の日付にすることができる小切手です。
振出人が何らかの事情で振出日当日までに当座預金口座にお金を用意できない状況の中でも小切手を振出さなければならない場合に役立ち、現金化を遅らせることができます。
ただし、受取人は振出日が未到来だからといっても換金を拒否されることはなく、小切手を受けとった時点での換金が可能です(小切手法28条2項)。したがって、もしも振出人の当座預金口座が不足していれば受取人は現金を取得することができなくなります。
これを不渡りといい、振出人は不渡りを2度出すと、金融機関から小切手の取引を停止されてしまいます。
小切手の裏書譲渡
小切手は原則として、受取人が金融機関へ持ち込んで現金に換金する有価証券ですが、第三者である他人に譲渡することも可能です。
他人に譲渡する方法は以下の2通り。
ひとつは、そのまま他人へ譲り渡す方法。
もうひとつは、「裏書」をしたうえで譲り渡す方法です。
裏書とは、その名の通り小切手の裏面に「被譲渡人(譲渡を受ける人)にお支払いください」という文言の記載と譲渡人の署名捺印をするものです。また、譲渡を受けた人も裏書をすれば、さらに別の人へと譲渡することも可能です。
ただし、券面に「裏書禁止」と記載されている場合は、裏書による譲渡はできません。
これにより、特定の受取人を指定しての譲渡が可能となりますが、もしも振出人の当座預金口座の残金が不足していて不渡りとなった場合には、譲渡人が支払わなければならない点に注意が必要です。
小切手の振出す際の注意点
小切手を振出す際の注意点は、やはり事前に当座預金口座の残高を確認して支払い不可となることを避けることでしょう。
前述したとおり、2度の不渡りを出してしまうと金融機関との小切手の取引契約が停止処分となるだけでなく、受取人からの信頼を損うことにもなりかねません。
また、「先日付小切手」を振出す場合は、振出日を先の日付に変更可能ですが、受取人は振出を受けた当日に換金することも可能ですので、他の小切手と同様に前もって当座預金口座の残高を確認しておきましょう。
もしも記載通りの日付以降に換金をお願いしたいのであれば、必ず事前に受取人へ通知しておくべきだといえます。
小切手を受取る際の注意点
小切手を受取る際の注意点は、受けとったその場で「金額」や「振出人の署名や押印の有無」など、しっかりと記載内容をしっかりと確認することです。
記載内容の確認不足のために、換金が遅れたり、受取額に不足があるといったケースも多々発生しているため、確認には最新の注意を払いましょう。
また、裏書をして他人に譲渡する場合、振出人の当座預金口座の残高不足によって不渡りとなれば、譲渡する側に支払い義務が移る点にも留意しておかなければなりません。
2026年をめどに小切手の全廃が決定済み
小切手は、手形とともに2026年を目処にして廃止されることが決定しています。
両有価証券とも、長らく日本の商取引を支えてきた存在ですが、昨今の利用率の低下やデジタル化の推進を踏まえれば当然の決定だといえるのではないでしょうか。
すでに三菱UFJ銀行とみずほ銀行では、2024年1月以降に当座預金口座を新規で開設しても、紙の小切手と約束手形の発行は出来なくなっています。あわせて、2027年4月以降を期日とした小切手と手形の発行も停止されています。
小切手や手形に代わる「でんさい」と、そのメリットやデメリット
小切手や手形の全廃以降に普及が期待される決済手段が「でんさい(電子記録債権)」です。
でんさいの利用にあたっては、当座の預金口座開設は不要であり、紙代や輸送代などのコストや事務作業が発生することなく、オンライン上で金銭債権の処理が可能になるなど、小切手や手形が抱えてきた問題や課題を解消できます。
また、デジタル形式の取引であるため、セキュリティ強化にともなう改ざんリスクの低減といったメリットもあり、取引先との信頼関係を損ねる心配も低減されます。
ただし、現状における認知度は高いとはいえないこともあり、導入や利用が進んでいない地域や企業は多数存在します。そのほか、当座の預金口座開設は不要といえども、取引金融機関との間で「でんさいの利用契約」を交わす必要や、ネットワークの初期設定が必要になるなど、小切手や手形が抱えてきた煩わしさが完全に解消されたとはいえないものです。
全廃後の売掛金回収におすすめなファクタリング
利用率の低下もあり、2026年に予定される小切手や手形の全廃に戸惑う経営者は、そう多くはないはずです。一方で、代替手段である「でんさい」の利用に対しては戸惑いや躊躇いを感じている経営者が多いと予想しています。
そこでおすすめしたいのがファクタリングの利用です。ファクタリングは、発生済みの売掛金を実際の支払い期日よりも前に回収可能な金融サービスであり、買掛先への代金支払いが困難な状況などでは、でんさいとともに小切手や手形の代替手段として活用できます。
また、でんさいのように取引銀行との間で“契約”を交わす必要はなく、ファクタリング事業者への申し込みを行うだけで実行可能であるため、でんさいと比較すると、はるかに効率性の面において優位に立っているといえます。
ファクタリングの相談は株式会社トップ・マネジメントへ
ファクタリング事業開始から15年。これまで55,000社と契約を交わしてきた株式会社トップ・マネジメントは、ファクタリングの基本的な形態である「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」だけでなく、請求書発行前に“発生予定の売掛金”を回収可能な「見積書・受注書・発注書ファクタリング」や、売掛先への債権譲渡通知が不要で3社間ファクタリングと同水準の手数料で契約可能な「電ふぁく(2.5社間ファクタリング)など、複数の商品を取り扱っています。
長きにわたって培ってきた信頼と実績をもとに、経営者のニーズに対する最適解を提供してくれるファクタリング事業者ですので、小切手や手形の廃止にともなう代替手段を探すのであれば、まずは相談してみましょう。
まとめ
今回は、2024年時点での小切手に関する基本的な知識と現金化までの流れ、そして取り扱いに際しての注意点などを解説しました。
小切手は、現金の持ち運びが不要にするだけでなく、受取ることができればすぐに現金化できる、安全性と利便性がとても高い有価証券のひとつです。
その一方で、扱いにあたっては注意しなければならない点がいくつかあります。
小切手を発行する振出人の不備や不手際によっては、不渡りによる銀行取引の停止に陥るリスクや受取人からの信頼を損ねてしまう可能性があります。
また、受取人も紛失や盗難、または確認の不備などによって正しい金額の現金をすぐには受け取れなかったり、最悪の場合には受け取り予定額のすべてを失う恐れもありますので、丁寧かつ慎重に取り扱う必要があります。
小切手自体は金銭として取り扱うことのできない紙切れにすぎないかもしれません。
しかし、振出人も受取人も貴重な資金のひとつとして最新の注意を払いながら振出と受取をしなければならないことを、十分に理解しておきましょう。
なお、小切手は手形とともに2026年をめどに全廃されることが決定しています。全廃後の代表的な代替手段としてはでんさいが挙げられますが、利用にあたっては取引銀行との契約やネットワークの初期設定などの手間がかかります。それらに対して煩わしさを感じたり、抵抗があるようであれば、すぐに利用が可能なファクタリングを検討するとよいでしょう。