経営者・社長

経営者の引き際の分岐点 企業の未来を決定づける出口戦略

経営者の引き際の分岐点 企業の未来を決定づける出口戦略【経営者・社長】

経営者の方々の中には、自分のプライドと責任感にかけて経営者として生涯を全うしたいと考えている方もいれば、早々に経営権を譲って残りの人生を謳歌したいと考えている方もいることでしょう。

もしくは、経営に行き詰まりを感じこれ以上の事業の継続は不可能だと判断して、事業の切り離しや倒産を視野にいれざるをえない状況に陥る可能性もあるはずです。

どのような理由にせよ、経営者の方はいつかは経営から退く時が必ず訪れます

経営から身を引く時が訪れたとき、どんな形でどんな選択肢を選んで幕を閉じるのか。

それらを考え、自身と社員、そして事業にとってリスクを最小限に抑えながら最適な選択肢を導き出す戦略を「出口戦略」といいます。

では出口戦略としての手法にはどのようなものがあるのか。

今回は引き際を決断した経営者と企業の未来を決定づけるであろう出口戦略についてお伝えします

出口戦略とは

まずは出口戦略がどのような戦略なのか確認しておきましょう。

出口戦略とは、もともとはベトナム戦争時にアメリカ国防省内で使われていた軍事用語のひとつであり、大きな損害を受けた状況下で、いかにして人命や物資を損なわずに軍を撤退させられるかという戦略に名付けられた名称です。

その後は、経営用語にも転用されるようになり、市場や経営からの撤退を余儀なくされた際に、経済的な損失を最小限に抑えるためにとられる戦略として使われるようになりました。

企業の経営や所有からの撤退というと、どうしてもネガティブなイメージがつきまといますが、手法の選択と実施次第では、事業の継続によってさらなる利益の創出や保持に可能性もあり、ビジネスにおいてはよい意味で使用されることも多くあります。

出口戦略の手法には一般的に大きく分けて以下の3つがあります。

事業承継
M&A
清算・廃業

ひとつずつ確認してみましょう。

事業承継

人手不足が叫ばれるようになって久しい昨今、テレビや新聞のニュースなどで事業承継という言葉を頻繁に耳にする機会が増えています。

特に、経営者の高齢化が進む地方の中小企業においては、問題が顕著に表れており、経営者の引退に伴う後継者選びが最重要課題となっています

事業継承は、経営者の地位を自身の子どもをはじめとする親族や自社の役員、従業員などへ譲る手法であり、経営権の譲渡と合わせて自社株の承継も行うことができます

事業承継によって人材や資産、知的財産を守った上での企業の存続が叶うといったメリットが生まれます。

しかしそれと同時に後継者となる人材が経営に必要な能力やノウハウを身につけているのかどうか、またオーナー経営者であれば自社株式の引き継ぎなどの課題もあります。

そのような問題を未然に防ぎ、事業承継をスムーズに進めるためにはできるだけ早い決断と着実な準備が必要です。

また事業承継に関しては、中小企業における後継者不在の問題を解消するため、一定の条件を満たして事業承継を行った中小企業に対して相続税や贈与税を免除する「事業承継税制」を設けるなど、税制や民法相続法の改正をはじめとする国をあげた対策や優遇策が進められています

M&A

次にM&Aです。

Mとは合併を意味するマージャー、Aは買収のアクイジションのこと

つまりM&Aとは、合併や株式の売却によって企業を手放す手法です。また企業のすべてを手放すだけでなく、営業権や事業用資産なども含めた事業単体の売却が行われる場合もあります。

M&Aのメリットは、売り手と買い手の双方あります。
売り手にとっては後継者の不在や経験不足といった承継問題の解決による自社の存続や、株式の売却による現金化や事業の集中特化などへとつながり、買い手にとっては少ないリスクと他社のノウハウや経営資源の融合によって事業拡大や新規事業の開拓が期待できます

一方、M&Aのデメリットは、親族や旧知の役員、社員などへの事業承継ではないため、買い手先企業の決定までに時間を要するほか、希望通りの値段で売却できるとは限らない点です。また労働条件の変更によって、従業員の離職率の高まりや、取引先からの反発によって契約を切られる可能性もありえます。

清算・廃業

最後は清算・廃業です。

これはその名の通り、経営を続けることなく自社をたたんでしまう手法ですが、廃業には、自主的な廃業赤字による廃業の2種類があります

自主的な廃業の場合は、解散の特別決議の議決により清算手続きを経て債権債務の整理を行います
反対に赤字による廃業の場合は、負債が資金を超え、すべての資金を売却しても返済しきれない債務超過に陥っているはずですから、法的な手続きにしたがって整理しなければなりません

経営から身を引く決断を下したとき、どんな形でどんな手段を選んで幕を閉じるのか。自社の存続や事業の継続、廃業を回避するための最適解はなんなのか。
適切な出口戦略を進めるためにも、できるだけ早い決断と着実な準備が必要です