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法人化したら税金はどう変わる?所得税と法人税の違い
「所得税」と「法人税」。
個人事業主であっても、法人であっても、事業を行うかぎりは税金の支払いからは逃れことはできません。しかし、税金の支払いが義務であることには変わりないものの、支払う税金の種類は異なり、そうなれば当然ながら税率や算出方法に違いが生じます。
いずれ法人化を目指しているという個人事業主も、これから起業を目指すという人も、「所得税」と「法人税」の違いを前もって正しく理解しておくとよいでしょう。
所得税とは?
所得税は、所得に対する税金で、サラリーマンやアルバイトといった給与の支払いを受けている人や、法人化はせずに、個人で事業を行なっている個人事業主。また、家賃収入や副業など、何らかの形で収入を得ている“個人”に対して賦課されます。
所得の種類は国税庁によって10種類に分けられており、事業所得や不動産所得、給与所得、退職所得、利子所得、配当所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得。
中でも、個人事業主に対して賦課される事業所得や、サラリーマンやアルバイトに賦課される給与所得などは馴染みのある所得税ですね。
このような所得税は、その種類によって支払い税額の計算方法が異なり、閉扉に形状できる対象にも違いがあります。
法人税とは?
法人税とは、その名前のとおり“法人”が得た利益に対して賦課される税金です。法人税と一言でいっても、会社の形態によって様々な種類があります。「各事業年度の所得に対する法人税」、企業グループをひとつの納税対象とする「各連結事業年度の連結所得に対する法人税」、信託を運用する信託会社を対象とする「特定信託の各計算期間の所得に対する法人税」など。
この中でも一般的な「法人税」とは、それぞれの会社が定める会計期間(事業年度)において得た所得に税金が課される「各連結事業年度の連結所得に対する法人税」のことをいいます。
所得税と法人税の税率の違い
所得税と法人税の税率の違いを知る前に覚えておいてほしい言葉が「比例税率」と「累進税率」です。
「比例税率」は課税標準に大きさに関わらず、一定の税率で課される税率のことで、主に法人税や消費税、固定資産税などが挙げられます。
一方の「累進税率」は、課税所得が大きくなればなるほど課される税率が上がるもので、所得税や相続税などはこちらが適用されます。
なお、「累進税率」は、課税標準が一定額以上になった場合の超過金額に対して課される「超過累進税率」と、その全体に高い税率が課される「単純累進税率」に分けられます。
「所得税」は所得が多いほど高い税率となる「超過累進税率」が適用され、その率は5%〜45%まで。
「法人税」は所得の大小に関わらず一定の税率となる「比例税率」が適用されますが、法人の種類と規模により異なります。
普通法人(株式会社・有限会社など)
年間所得800万円以下……19%(15%)
年間所得800万円超……23.2%
協同組合等(農業共同組合・生活協同組合など)
年間所得800万円以下……19%(15%)
年間所得800万円超……19%
公益法人(社団法人・宗教法人)等(収益事業を行った場合)
年間所得800万円以下……19%(15%)
年間所得800万円超……19%
人格のない社団(PTA・実行委員会)等(収益事業を行った場合)
年間所得800万円以下……19%(15%)
年間所得800万円超……23.2%
括弧内の税率は2018年4月1日〜2019年3月31日までの間に開始する事業年度。
会社が赤字なら法人税はかからないという考え方は禁物
これから法人化を考えている人の中には、法人税について誤った認識をもっている方が多くみられます。中でも最も多いのが「経営が赤字であれば法人税は不要」だという考えです。
確かに法人税は会社の利益に課される税金ですので、そういった考えに陥るのも無理はありません。しかし、企業会計上の利益と法人税法上の利益の計算に違いがあるため、たとえ会社が赤字であっても支払う必要がある場合があります。
会計上の利益を求める計算式は【収益−費用】ですが、法人税法上の利益は【益金−損金】で求めます。このように、利益の求め方しだいでは、異なる金額が算出される可能性があるため、仮に会計上の利益が赤字だと判明したからといって、法人税は支払わなくていいと早合点するのは禁物です。
法人税の支払いの有無は、税務調整を行なって課税所得金額を算出するまで分かりません。法人税の支払いが必要かどうか不安になった際には、自分だけで判断するのではなく、迷わず税理士に確認をとるとよいでしょう。
場合によっては所得税よりも法人税の方が得になることも
所得税よりも少し複雑で金額も高そうなイメージのある法人税ですが、法人税は所得税のように、所得金額によって税率が大きく変動することはなく、基本的に一律ですので、所得税よりも安く済むことがあります。
また、法人税の税率は引き下げが続いており、今後もこの傾向が続くと見込まれています。
今は個人事業主だけど、これから法人化を考えているという人は、現在の所得がどれくらいであるのか。所得税をいくら支払っているのか。また、今後はどれくらいの所得を得られると見込んでいるのか。といった点を、法人税率の推移を踏まえながら、法人化を検討するか判断するようにしましょう。