コンサルタント

債権譲渡とは?実行するにあたっての注意点を詳しく解説

債権譲渡とは?実行するにあたっての注意点を詳しく解説【コンサルタント】

「債権譲渡」

おそらく、経営者の方であれば一度は耳にされたことのある言葉かと思いますが、多くの方がなんとなく「債権を譲り渡す」ことだろうと思われているはずです。

結論からいえばその解釈に間違いはなく、債権譲渡とは「債権の内容をそのままに譲り渡す」行為であり、債権の回収や買収方法として広く利用されています。

債権譲渡を効果的に利用できれば、回収の見込みがなくなった売掛金や借金をロスなく回収できるといったメリットがありますが、債権譲渡を行うにあたっては、いくつかのルールが存在するなど注意点もあります。

今回は、「債権を譲渡する」行為である債権譲渡の具体的な例や、実行するにあたっての注意点について解説します。

債権譲渡とは?

先に述べたとおり、債権譲渡は「債権の内容をそのまま譲り渡す行為」のことを指します。

たとえばA社とB社が商取引を交わしたとして、A社が売掛金の債権者、B社が債務者となったとします。

このケースでは、B社は期日までにA社に売掛金を支払わなければならないわけですが、もしも何かしらの事情が生じたために、B社が売掛金を支払えなくなった場合、A社はB社が所有する債権の譲渡を受けることが可能になります。

これが債権譲渡の基本的な仕組みです。

なお、債権譲渡においては債権を受け取る側を「譲受人」、
債権を譲渡する側を「譲渡人」といいます。

債権譲渡が行われると、譲渡された債権の債権者は移行することになるため、B社が所有していた債権の譲受人はA社になり、譲渡人となったB社は第三債務者(B社の債権の債務者。C社とします)に対して、債権の主張はできなくなります。

また、譲受人となったA社は第三債務者であるC社に対して、直接の取り立てを行うこともできるようになります。

第三者対抗要件

さて、上記の例は、B社がA社に対して債権を譲渡したケースですが、場合によっては、A社以外の第三者が債権を主張してくる可能性があります。つまり債権を「二重譲渡」される恐れが生じるわけです。

これを防止する目的で取得するのが「第三者対抗要件」です。

第三者対抗要件とは、A社とB社間で交わされた債権譲渡契約に関係のない第三者に対して、譲受人となるA社が正当な譲受人であることを公的に示すための法律要件のこと。

この要件の取得によって、C社はA社に対して債務を弁済することが法的にも認められるということになります。

第三者対抗要件の取得方法

債権譲渡にあたって、非常に重要な手続きとなる第三者対抗要件の取得ですが、どのような方法で行われるのでしょうか。

ここでは、一般的に利用されている2つの方法をご紹介します。

債権譲渡登記

ひとつは「債権譲渡登記制度」の利用です。

債権譲渡登記制度は、債権譲渡登記を行なった旨の記録を登記する制度であり、申請は法務局で行います。

申請は、譲渡人と譲受人の2者によって行われ、登記した日程が債権譲渡における「確定日付」となります。

債権譲渡登記制度の利用は、登記手続きのみで第三者対抗要件を満たすとともに、譲受人が債権を公に主張することができるため、債務者や債権の数が多い場合などに有効な方法であるといえます。

ただし、債務者への対抗要件を取得するためには、一般郵便などによる通知を必要とします。

内容証明郵便

もうひとつは「内容証明郵便」の送付です。

内容証明郵便による通知は、債務者と第三者に対する対抗要件を同時に取得できるほか、わざわざ法務局で登記する必要もないため、債権譲渡登記制度の利用とは反対に、債務者や債権の数が少ない場合などに有効な方法です。

また、内容証明郵便で対抗要件を取得した場合は、局印が「確定日付」の代わりとなります。

いずれの方法を利用するにせよ、重要になるのは債権譲渡の実行を確証する「確定日付」の取得です。

この「確定日付」を取得することにより、第三者への対抗要件を満たすことができるため、いち早く確定日付を取得した者が債権の正当な譲受人として認められることになります。

債権譲渡における注意点

二重債権の恐れ

万が一、第三者対抗要件の取得前に譲渡人がすでに債権を第三者に譲渡していた場合、その債権は二重債権となり、第三者が優先的に取得できることになります。

中には、二重債権と認識しながら、債権の譲渡をチラつかせて債務を免れようとする者も存在するため、債権譲渡の申し出がされた場合は、事前に法務局にて登記事項概要証明書や概要記録時効証明書を取得して確認するようにしましょう。

債権の消滅

債権は、発生から3年を経過すると消滅するという時効が存在します。
したがって、時効間際にある債権の譲渡を受ける際には速やかに手続きをしなければ債権譲受の権利を失う恐れもあるため注意が必要です。

債権譲渡禁止特約の有無

債権者と債務者の間で債権譲渡特約が結ばれている場合は、原則として債権を譲り受けることはできません。

ただし、平成29年の民法改正により、「譲受人が債権譲渡特約を知らないことについて重過失がなく、債務者に対する対抗要件を満たしている」などの場合には債権譲渡を有効にすることが可能です。

まとめ

一般的には、あまり良いイメージを持たれない債権譲渡ですが、譲受人にとっても譲渡人にとっても、ケースによっては資金繰り悪化のリスクを回避できる債権回収方法です。

法的見地からの交渉も可能な上、複雑な手続きも不要ですので、必要があれば注意点に気をつけて上手に活用してみましょう。