ファクタリング

銀行系ファクタリングとは?仕組みや利用方法を分かりやすく解説

銀行系ファクタリングとは?仕組みや利用方法を分かりやすく解説【ファクタリング】

皆さまは「銀行系ファクタリング」という金融サービスをご存知でしょうか?

最近では、インターネットで「ファクタリング」と検索すると、ノンバンクのファクタリング会社が多く表示されるようになってきていることから、ファクタリングといえばノンバンクの金融事業者が提供する金融サービスという認識をお持ちの方が多いかもしれません。

ですが、実は銀行や銀行が出資する関連会社などの、いわゆる銀行系の企業もファクタリングサービスを積極的に実施しています。

では、銀行系ファクタリングとは具体的にどのような仕組みの金融サービスなのか。ノンバンクのファクタリングとの違いはなんなのか。

また、銀行系と呼ばれるだけに、銀行融資のように厳しい審査基準と長い審査期間を要しそうなイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか。

今回は、銀行系ファクタリングの仕組みや利用方法のほか、利用によって生じるメリットやデメリットなどについても解説していきます。

銀行系ファクタリングとは?

銀行系ファクタリングとは?

銀行系ファクタリングとは、その名の通り、銀行が提供するファクタリングサービスを指します。また、銀行が出資するファクタリング専門の子会社が提供するファクタリングサービスも同様に銀行系ファクタリングと呼ばれます。

具体的には、みずほ銀行や三菱UFJ銀行、三井住友銀行などの大手都市銀行は、それぞれ「みずほファクター」や「三菱UFJファクター」といった、銀行名が冠されたファクタリング専門の子会社を保有しているのに対し、地方銀行などはファクタリングサービスを直接提供しているという特徴がみられます。

<3大メガバンクが出資するファクタリング会社>

・みずほファクター
・三菱UFJファクター
・三井住友ファイナンス&リース

<ファクタリングを提供する地方銀行(一部)>

・スルガ銀行
・百十四銀行
・足利銀行
・山口銀行
など

近年では、経済産業省が中小企業に対して、借り入れや不動産担保融資に頼ることなく、売掛債権を活用した資金調達を推奨していることから、各銀行系の企業も積極的にファクタリングサービスの提供に乗り出しているようです。

https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2004/download/040203urisai_panhu2.pdf
<売掛債権の利用促進について 経済産業省>

銀行系ファクタリングの仕組み

銀行系ファクタリングの仕組み

銀行系ファクタリングとノンバンクのファクタリングに基本的な仕組みに違いはありません。

銀行系ファクタリングも、ノンバンクのファクタリングと同じように発生済みの売掛債権を売却し、本来支払われる期日よりも早期に売掛金を回収できるサービスです。それぞれに定められている利用手数料を差し引かれた金額が入金され、後日精算するという仕組みも同じです。

大きな違いを挙げるとするならば、銀行系ファクタリングは「3社間ファクタリング」のみの提供であることです。

ノンバンクのファクタリングでは、取引先(売掛先)への債権譲渡通知が必要なく、利用企業様とファクタリング会社のみで契約を交わすことのできる「2社間ファクタリング」の提供もされていますが、銀行系ファクタリングでは「3社間ファクタリング」の一択となります。もちろん、登記所への債権譲渡登記も必須です。

つまり銀行系ファクタリングには「2社間ファクタリング」か「3社間ファクタリング」かの選択肢がなく、利用すれば、必ず取引先にファクタリングの利用を知られることになります。

国際ファクタリングと保証ファクタリング

国際ファクタリングと保証ファクタリング

3社間ファクタリングの利用に限られる銀行系ファクタリングですが、一方で、ノンバンクのファクタリング会社ではみられない、銀行系企業ならではの2つのサービスがあります。それが「国際ファクタリング」と「保証ファクタリング」です。

国際ファクタリング

貿易事業を行う企業が、輸出取引における代金を確実に回収するためのファクタリングで、主に国際的なつながりの強い大手銀行が出資するファクタリング会社が取り扱っています。

輸出代金を回収する手段は、銀行からの保証状や取消不能信用状の入手が一般的です。これは、代金回収不能といった貿易リスクの回避手段のひとつであり、銀行が輸出企業の信用情報に基づき支払いを保証するもの。いわば「貸付に近い手段」です。ただし、輸入国によっては信用状の発行が困難であったり、手続きの煩雑さや代金取得までに時間がかかるといったデメリットがあります。

一方の国際ファクタリングは、売掛け金の売買という仕組み上、信用状の入手は不要であるほか、輸出の証明を行えば直ちに代金を回収できるというメリットがあります。

なお審査対象となるのは、通常の3社間ファクタリングと同じように取引先、つまり輸入業者ですので、利用にあたっては輸入業者の同意が必要になります。

保証ファクタリング

保証ファクタリングは、通常のファクタリングのように売掛債権の売買による資金調達手段とは異なり、「売掛債権の回収を保証」するサービスです。

売掛先の倒産などによって売掛債権が回収不能となった場合でも、保証ファクタリングを契約しておくことで、ファクタリング会社からの保証を受けることが可能になります。

利用会社と取引先の共倒れ回避に効果的なサービスであることから、国から助成金が交付されるなど、銀行系ファクタリングの中でも積極的な利用が勧められるサービスのひとつといえます。

銀行系ファクタリングの利用方法

銀行系ファクタリングの利用方法

銀行系ファクタリングの利用方法も、ノンバンクの3社間ファクタリングと変わりありません。

①銀行系ファクタリングに申し込み
取引先の信用情報が調査され、調査結果に基づき買取限度額が設定されます。

②債権譲渡通知
銀行から取引先へ債権譲渡通知が行われます。債権譲渡の承諾後、買取代金から手数料が差し引かれた金額が入金されます。

③売掛債権の回収
銀行が取引先から売掛債権を回収・精算となります。

銀行系ファクタリングのメリット

銀行系ファクタリングのメリット

高い信用度

銀行系ファクタリングの最大のメリットは、なんといっても提供事業者が信用度の高い銀行か銀行の子会社である点です。

最近では、ノンバンク系のファクタリング事業者が続々と市場に参入していますが、残念ながらすべての事業者が信用できるとはいえず、中にはヤミ金まがいの不利な契約提示や不明瞭な手数料を要求する、といった悪徳業者が存在するのが事実です。

対して、銀行系ファクタリングであれば、銀行でも銀行の子会社でもすべての企業が違法な行為は行わないという信頼感があるといえるので、安心して利用できます。

割安な手数料

銀行融資とノンバンクのビジネスローンでは、利率に大きな差があるのと同じく、銀行系ファクタリングもノンバンクのファクタリングと比べて利用手数料が割安になるというメリットがあります。

ノンバンクのファクタリングは3社間ファクタリングの場合、5%〜20%が相場とされていますが、銀行系ファクタリングは5%未満という設定が一般的です。

これは、ノンバンクにとっては利用手数料が主な収益源となるのに対して、銀行系の企業は、預金のほか投資信託や保険商品など、様々な金融商品の販売によって高い収益を得られるため、ファクタリングに割高な利用手数料を設定する必要がないからといえます。

銀行系ファクタリングのデメリット

銀行系ファクタリングのデメリット

2社間ファクタリングは無し

前述の通り、銀行系ファクタリングには2者間ファクタリングの取り扱いはなく、必ず3社間ファクタリングでの契約となります。

3社間ファクタリングを利用するということは、必然的に売掛先への債権譲渡通知は必須であるため、ファクタリングの利用が知られてしまいます。

日本では、債権の譲渡に対するネガティブなイメージが、まだまだ根強く残っているため、ファクタリングの利用発覚によって取引先からの信頼性が失われる可能性もあります。

ですので、何かしらの理由や事情によってファクタリングの利用を取引先に知られたくないという方には、銀行系ファクタリングは不向きだといえます。

親会社の銀行に利用が通知される

みずほファクターや三菱UFJファクターなどの、銀行系のファクタリング会社を利用した場合、その親会社である銀行に利用の通知がされることになります。

ファクタリングの利用は、企業格付けに影響を与えることがあるため、もしも将来的に銀行融資を希望するのであれば、利用するファクタリング会社を慎重に決める必要があります。

審査期間が長い

銀行系ファクタリングの審査期間は、銀行融資の審査期間に比べれば短いといえます。

ただ、申し込みから入金までの期間は少なくとも1週間前後、最長で2〜3週間ほどと、条件や売掛先への調査次第によっては銀行融資と同じくらいの期間を要する場合もあります。

審査基準は高い

審査基準に関しても、融資と比べればハードルは低く、通過はしやすいといえますが、やはり銀行系らしく、ノンバンクに比べれば審査は慎重かつ厳しめに行われます。

また、ノンバンクのファクタリング審査(3社間ファクタリング)では、利用企業の信用情報はほとんど重視されませんが、銀行系ファクタリングでは、売掛先とともに、利用企業の信用情報も審査通過のための重要な要素になります。

したがって、「赤字決済」や「税金滞納」など、ノンバンクの審査では支障にならないマイナス要素がある場合、審査通過はほぼ不可能だといえるでしょう。

利用するなら銀行系かノンバンクか

利用するなら銀行系かノンバンクか

銀行や銀行が出資する子会社が提供するファクタリングサービスが、銀行系ファクタリングです。

悪徳業者のまぎれ込みが目立つノンバンクのファクタリングに比べれば、信用度が高く、手数料も割安となるため、安心して利用できます。

その反面、取引先への債権譲渡通知が必須となる3社間ファクタリングのみの契約となるため、取引先に利用を知られたくないという事業主様にとっては、やや都合の悪い金融サービスといえるのではないでしょうか。

また、審査基準や審査期間はノンバンクよりも“厳しく長め”ですので、もしも経営面で何かしらの事情を抱えていたり、至急で資金繰りの改善が必要な場合であれば、迷わずノンバンクのファクタリングを利用するべきでしょう。