ファクタリング

【2021年度最新版】ファクタリングの法的根拠と注意点

【2021年度最新版】ファクタリングの法的根拠と注意点

ファクタリングは、売掛金を本来の受け取り日よりも早期に回収することができる金融サービスです。

金融機関やノンバンク各社の提供する資金融資と比べて審査のハードルが低い上に、金利上乗せの負担もないため、効率的かつ低リスクの資金調達手段として知られており、すでに利用経験をお持ちの事業主の方も少なくないのではないでしょうか。

しかし、債権譲渡という契約の性質上、利用にあたって不安を抱える方や「貸金業に該当するのでは?」といったような法的根拠を疑われている方が、今も数多くいるのが事実です。

また、毎年のようにファクタリングに関連した詐欺事件が発生するなど、ファクタリングを装った違法な金融サービスを提供する事業者はあとを絶たない点も、ファクタリングに対するイメージの低下につながっているものと考えられます。

そこで今回は、ファクタリングの法的根拠を示すとともに、法的な範囲を超えた違法性の高いファクタリングを判別する上での注意点もあわせて解説します。

ファクタリングを定義・規制する法律はない

ファクタリングを定義・規制する法律はない

まず、なぜ多くの方がファクタリングの法的根拠を疑われるのかについて解説していきましょう。

端的に言えば、これは「ファクタリングを定義・規制する法律がないから」です。ちなみに2021年度においても従来通り、ファクタリングを明確に定義・規制する法律はできていません

たとえば、事業資金融資にせよ個人融資にせよ、貸金業は貸金業法にてその事業や契約のあり方が定義・規制されています。一部では、ファクタリングが「貸金業に該当するのではないか」と疑問視する方もいますが、ファクタリングは金銭の貸付ではなく、あくまで売掛債権の譲渡ですので、提供事業者に貸金業法が適用されることは当然ありません。

このように、ファクタリングは貸金業のように利用者が簡単に法的な正当性と問題点を判別・認識しづらいがために、法的根拠を疑われがちな金融サービスであると考えられます。

ファクタリングの法的根拠

ファクタリングの法的根拠

では、法律上において明確な定義・規制のないファクタリングの法的根拠はどこにあるのでしょうか。

すでにご存知かと思いますが、ファクタリングには3社間ファクタリングと2社間ファクタリングの2種類の契約があり、それぞれの契約の性質上、異なる法的根拠が存在します。

3社間ファクタリング

3社間ファクタリングの法的根拠は「民法第466条」と第「467条」に基づきます。

民法第466条「債権の譲渡性」

第1項 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りではない。

第2項 前項の規定は、当事者が反対の石を表示した場合には適用しない。ただし、その意思表示は善意の第三者に対抗することができない。

第1項で示されている通り、債権の譲渡は譲渡人(利用者)と譲受人(ファクタリング会社)の合意の上で自由に行える行為であり違法性はありません。ここでいう債権とは、もちろん売掛債権も当てはまります。

ただし第2項の通り、債権譲渡は第三者である債務者(売掛先)には有効でないため、3社間ファクタリングの場合は、譲受人であるファクタリング会社が債務者である売掛先に対して債権者であることを主張する必要があります。

その主張に必要な手続きが次の民法第466条に基づく「対抗要件」です。

民法467条「指名債権の譲渡の対抗要件」

指名債権の譲渡は譲渡人が債務者に通知をし、または債務者が承諾をしなければ債務者その他第三者に対抗することができない。

前項の通知または承諾は、確定日付の証書によってしなければ債務者以外に対抗することができない。

つまり、譲受人であるファクタリング会社は、債務者である売掛先に対して「債権譲渡の事実」を確定日付のある証書によって通知しなければなりません。

このような手続きを通して、ファクタリング会社が債権者であることを主張することにより、法的根拠に基づく3社間ファクタリングの契約が成立することになります。

2社間ファクタリング

では、売掛先の同意が不要となる2社間ファクタリングはどうでしょうか。

2社間ファクタリングも、3社間ファクタリングと同じく「債権の譲渡契約」であるため、民法第466条の第1項が適用されることから違法性はまったくありません。

ただし、2社間ファクタリングの場合は、譲受人であるファクタリング会社が売掛先への通知を不要とする契約です。

この契約の法的根拠は民法第555条の「売買契約」が適用されます。

民法第555条

売買は、当事者の一方がある財産権と相手型に移転すること約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによってその効力を生ずる。

売買契約とは、一般的な「買い物」などのように金銭と物やサービスを引き換える契約ですが、2社間ファクタリングもこれと同様に、当事者同士の債権と金銭を引き換える契約となるため、民法第555条の売買契約が適用されることになるわけです。

違法性の高いファクタリングを判別する上での注意点

違法性の高いファクタリングを判別する上での注意点

以上が、3社間ファクタリングと2社間ファクタリング双方の法的根拠です。

先にも述べた通り、ファクタリングを明確に定義・規制する法律こそ存在しませんが、2021年度においてもファクタリングは上記の法的根拠に基づいてサービスの提供が行われています。また、ファクタリングが貸金業とはまったく異なる債権譲渡契約あるいは売買契約であることもお分かりいただけたかと思います。

しかし、近年増加傾向にある、いわゆる「ファクタリングを装った悪質な金融サービス」の多くは、そのような債権譲渡や売買契約の範囲を超えた「金銭賃貸消費契約」となっています。

たとえば、ファクタリング業者を名乗りながらも、買取りした債権分の全代金を支払うことなく一部を預かり、利用者からの売掛金の回収を待って残りの代金を支払うという契約があります。

これは債権の譲渡契約や売買契約とはいえず、「債権を担保にした貸付」とみなした金銭賃貸消費契約であるといえるため、貸金業登録を行っていない業者が実施できる契約ではないのです。

また、そのような契約の場合は利息制限法に基づく法定金利が適用されることになりますが、ファクタリングを名目とした契約であることから「利用手数料」と偽った上での実質的な高利を要求するケースも多々生じていますので、くれぐれも注意が必要です。