まもなく4月です。
今年は、新型コロナウイルスの蔓延という予想だにしなかった事態に見舞われているため、新たな年度を不安な気持ちで迎えられる方が多いのではないでしょうか。
そのような不安定な状況の中でも、新年度を迎えるにあたり、起業して新たに会社を設立する方や、フリーランスとして独立して開業する方、もしくは、これから独立や起業を目指して計画を立て始めているという方も数多くいらっしゃることでしょう。
しかし、どれだけ大きな自信や経験、知識を兼ね備えて起業・独立・開業をしても、事業が100%成功する保証はどこにもありません。
起業・独立・開業は、常に失敗と隣りあわせの大チャレンジであり、特にスタート直後は、「思ったように売り上げが伸びない」、「運転資金の確保が順調にいかない」、「早期の倒産を余儀なくされる」といった想定外の事態に陥る可能性も、十分に考えられます。
起業家やフリーランスとしてデビューされる方は、おそらくそのようなリスクなど百も承知の上で、起業・独立・開業を決断されていることとは思いますが、できれば前もってどのような失敗事例があるのかを把握し、リスクヘッジしたいもの。
しかし、事業の成功を紹介する書籍やブログ記事などはありふれているものの、リアルな失敗事例を掲載しているメディアはそう多くありません。
そこで今回は、弊社にご相談に訪れた先輩起業家の方々が実際に経験した失敗事例や原因の中から、新人起業家の方にぜひ把握しておいてほしい2つのケースをご紹介します。
高すぎる目標をクリアできず自信喪失に
まずは都内の広告代理店から起業を果たしたAさんのケースです。
広告プランナーとして会社員時代から持ち前の企画力と実行力を活かし、数多くの広告案件を成功させてきたAさんは、確固たる自信と経験を身につけて独立・起業。初月の売り上げ高を1000万円、年間の売り上げ高も1億円と高い目標を設定し、1人で事業をスタートさせました。
ところが、会社員時代から付き合いの深いクライアントをつたって、新規クライアントの開拓にも努めたものの、契約数は思ったように伸びることはなく、売り上げ確保は難航。
結局、起業初月の売り上げは目標金額には遠く及ばない15万円でした。
その翌月もまたその翌月も目標の1000万円に届くことはなく、次第に自信とモチベーションを失っていったAさん。万年間売上額は会社員時代の給与に満たない250円ほどに終わってしまったそうです。
Aさんのように会社員時代の実績を基に、高い目標を設定して起業される方はたくさんいます。
起業・独立にあたって目標を高く設定することは決して間違いではなく、むしろ成功のためには不可欠である強い心意気が伝わります。
しかし、高く設定した目標が重くのし掛かり、事業に対するモチベーションや自信が削がれてしまっては本末転倒です。
ちなみにAさんは会社員時代に営業活動を経験したことがなかったとのこと。営業経験がないことを自覚しないまま、自身の経験と実績だけを基に売り上げ目標を設定したといいます。
1人で事業を進めて成功させるには、自身の得意業務だけでなく総合的な能力を高めていかなければなりません。
起業時の目標を設定する際には、現状の能力やこれまでの経験・実績だけでなく、自身の苦手業務も冷静に俯瞰することが大切です。
苦手分野が事業にどこまで影響するかを考慮にいれ、現実的な設定を心がける必要があるでしょう。
詐欺師まがいの経営者に出会い資金難に
続いては独立して建設事務所を開設したBさんのケース。
Bさんは、会社員時代から熱心に独立の準備を進めていたようで、起業家志望者やそのサポートを目的とする経営者などが参加するセミナーやパーティにも積極的に参加していました。
そのような場でBさんは建設機材のリース会社を経営すると話す経営者の方と出会い、意気投合。
独立後の機材や案件の安定的な提供をはじめとするサポートを約束されたBさんは、すぐに独立を決断。
目標としていた開業資金が貯まる前に事務所を開設し独立を果たしました。
少ない開業資金を元手に、前出の経営者の会社から建設機材のリース契約を交わしたものの、その後は音沙汰が無くなり、約束していた案件の提供もなし。
この経営者をアテにしていたBさんの運転資金は独立から数ヶ月で底をつき、途方に暮れたといいます。
最近の起業志望者数の増加に乗じた、このような詐欺まがいの行為は頻繁に発生しているようで、弊社にも似たようなケースの相談が相次いでいます。
詐欺まがいの経営者の行いはもちろん許されるものではありませんが、信憑性のない誘いに乗って不透明な約束事を交わし、それをアテに見切り発車で独立してしまったBさんにも問題があるのは明白です。
独立・起業には、常に冷静な判断と決断、それに組織の後ろ盾を必要としないクラアントとの個人的な信頼関係の構築が求められます。他者から自身にメリットの高い誘いや約束を持ちかけられても即座に鵜呑みにすることなく、まずは時間をかけて信頼関係を構築できる人物かを分析・判断するようにしましょう。
目標設定に失敗したことでモチベーションと自信を失ったAさん。
初対面の相手が提示した甘い誘いに乗ったがために、運転資金を数ヶ月で失ったBさん。
両者の失敗事例に共通する原因は、分析力の欠如だったのではないでしょうか。
起業・独立・開業の失敗は、判断力や決断力の欠如に加え自身や他者に対する分析力の欠如も絡み合って引き起こす場合もあります。
まずは自身と周りを冷静に分析できる力を養い、的確な判断と決断を重ねて事業を成功に導く準備を進めていきましょう。