資金調達

2024年に活用するべき10の資金調達法を解説

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事業者である以上、資金調達が必要になるケースは度々訪れます。
売上の低迷によって資金繰りが悪化すれば、運転資金を補填する目的。反対に、売上が好調であることからさらなる事業拡大を目指して、設備や人材などへの投資を目的に資金を調達することもあるでしょう。
いずれにせよ、資金調達は事業者にとっての生命線ともいえる行いですので、どのような事業内容であっても必ず付随することになります。
資金調達の代表的な手段といえば、やはり金融機関からの融資が挙げられます。ほかにも、補助金や助成金、株式や社債の発行なども多くの事業者が古くから活用する資金調達手段ですが、現在ではそれら以外にも多様化されており事業者の選択肢は拡大しています。
そこで今回は、2024年現在において事業者が活用を検討するべき10の資金調達手段を紹介します。

3種類に大別される資金調達手段

3種類に大別される資金調達手段

事業者向けの資金調達手段は大枠として3種類、そこからさらに細分化して分類することができます。
3種類の大枠は、「デットファイナンス」「エクイティファイナンス」「アセットファイナンス」とよばれ、それぞれの大枠のなかに具体的な資金調達手段が含まれることになります。各資金調達手段の概要については順次説明していきますが、たとえば銀行融資は「デットファイナンス」、株式発行は「エクイティファイナンス」、設備等の資産売却は「アセットファイナンス」に振り分けられます。
なお、補助金と助成金については3種類の大枠に該当せず、独立した資金調達手段として存在しています。そのため、厳密にいえば大枠は4種類であるという認識がされることもあります。

「デットファイナンス」「エクイティファイナンス」「アセットファイナンス」の概要

「デットファイナンス」「エクイティファイナンス」「アセットファイナンス」の概要

ここからは、「デットファイナンス」「エクイティファイナンス」「アセットファイナンス」の概要についてみていきましょう。

デットファイナンス

まずは「デットファイナンス」。
「デット」とは、返済義務のある資金のこと。つまり、「デットファイナンス」の特徴を一言で表すのなら、「外部からの借入れによる資金調達手段」ということになります。
金融機関やノンバンクをはじめ、事業資金の貸出しを実施する機関や企業は非常に多いこともあり、事業者からすれば最も身近かつ活用のしやすい資金調達手段であるといえます。
借入れということは、当然ながら調達した資金は負債として計上されることになりますので、原則として利息をともなう返済義務が生じます。また、「デットファイナンス」による資金調達に成功したとしても、業績が上がらなければ返済義務が足枷となり、将来的にキャッシュフローを不安定にさせる可能性も否めません。
一方で、民間金融機関や政府系金融機関といった信用度の高い機関から借入れを受けられるということは、事業者としての可能性や将来性を認められた証であるともいえます。返済を滞ることなく続けられれば、追加の借入れにも応えてくれる可能性が高まり、事業資金をさらに盛り込めることもできるでしょう。
また、利息の支払いは税務上における損金扱いとなるため、資金の借入れは税金対策として効果を発揮します。したがって、利息の発生や返済はデメリットのみに留まらないという点も、「デットファイナンス」の特徴だといえます。

「デットファイナンス」に含まれる資金調達手段

「デットファイナンス」に含まれる資金調達手段は、主に以下の5つです。

・融資
・社債の発行
・ソーシャルレンディング
・シンジゲートローン
・コマーシャルペーパー

一般的に認知度の高い融資や社債の発行に対し、ソーシャルレンディングやシンジゲートローン、コマーシャルペーパーはあまり聞きなれないという経営者も多いはず。
ソーシャルレンディングとは、金融機関からの借入れではなく、融資を希望する事業者が専用のマッチングサービスを介して投資家から資金を借り入れる資金調達手段。そのような特徴から「融資型クラウドファンディング」とも呼ばれます。
事業者として十分な実績を築けていなくても、将来性を見込まれれば資金を借入れできる可能性が高まるため、金融機関の融資よりも審査は甘いといってもよいかもしれません。ただし金利が高めであることがネックになるほか、詐欺行為もしばしばみられるため、マッチングサービスの運営元は慎重に選ぶ必要があります。
シンジゲートローンは、複数の金融機関が提携して資金を貸し出す融資です。一社からの借入れよりも多額の資金を調達できる可能性があるため、大型の設備投資などには最適な手段だといえます。また、普段は取引のない複数の金融機関との関係性が構築されるため、資金調達にあたっての選択肢も増加されることになります。
一方で、金融機関間の調整に時間がかかることもあり、緊急性を要する資金調達には不向きです。
もうひとつのコマーシャルペーパーは、無担保の約束手形を発行する資金調達手段です。
無担保という点からも、コマーシャルペーパーによる資金調達は事業者間の高い信頼性のもとで実行されるため、主に大企業向けとなります。

エクイティファイナンス

続いては「エクイティファイナンス」です。
「デット」とは対照的に、「エクイティ」は返済義務のない資金を指します。したがって、「エクイティファイナンス」は出資を受ける資金調達手段です。
返済義務が生じることなく資金を調達できという点は、「エクイティファイナンス」における最大のメリットであり、「デットファイナンス」による資金調達よりも財務基盤を安定させやすくなります。
ただし、出資者は出資を行う代わりに、経営への“口出し”を条件として提示することがあります。そうなれば、資金は得られるものの、経営者が思い描く理想からはかけ離れた経営に舵取りする必要が生じる、または出資者と経営者の間での意見の相違により経営に一貫性が失われるといったデメリットもあります。
また、収益に応じて配当金を求められるということもありますので、名目は異なるものの、実質的には“返済”を求められる条件の提示がされる可能性への留意が必要になります。

「エクイティファイナンス」に含まれる資金調達手段

「エクイティファイナンス」に含まれる資金調達手段は、主に以下の3つです。

・クラウドファンディング
・エンジェル投資家による出資
・ベンチャーキャピタルによる出資

返済の必要がない「エクイティファイナンス」は、近年もっとも注目度の高い資金調達手段であり、多くの経営者が活用を希望しています。
中でも事業者としての規模や形態を問わず、ネット上で出資を募るだけで資金調達が可能になるクラウドファンディングは、知名度や認知度が大きく上昇した資金調達手段だといえます。
ただ、構造自体はシンプルでありながらも、希望金額に到達できなければ出資は受けられません。これから実現を目指す事業や開発を進める商品・サービスがいかに魅力的であるのかを伝えられる発信力にもかかっているといえ、ユーザーからは想像以上にシビアな目線で評価を受けることになります。
その他のエンジェル投資家による出資とベンチャーキャピタルによる出資も、容易に受けられるとは限りません。
エンジェル投資家とは、スタートアップ企業などの新しく将来性の高い事業者をサポートする個人の投資家のこと。個人投資家とのつながりによって、出資を受けられるだけでなく、新たなビジネスパートナーを得られる可能性も生まれるといったメリットもあります。一方のベンチャーキャピタルによる出資は、個人ではなく投資会社から受けられる出資です。
エンジェル投資家もベンチャーキャピタルも、最重視するのはやはり成長性であり、実績を期待できない事業者への出資はありえないと断言できます。

「アセットファイナンス」

みっつめは、「アセットファイナンス」です。
「アセット」とは資産を意味しますので、事業者が保有する資産(売掛債権・機械設備・車両・商品在庫など)を、売却や換金して資金を調達する手段が「アセットファイナンス」です。
売却や換金という性質上、「エクイティファイナンス」と同様に調達した資金の返済義務が生じることはありません。また、開業間もない事業者などのように十分な実績を上げていないことを理由に「デットファイナンス」を利用できない場合でも、資産さえあれば資金を調達できる可能性がある点も「アセットファイナンス」のメリットだといえます。
ただし、調達できる資金額は資産の価値について決まるうえ、価値についての判断も売却先に委ねられるという特徴があります。さらに、価値は情勢をはじめとした様々な要因によって変動を起こすことがあり、場合によっては希望金額から大きく逸れた資金額の提示を受ける可能性もあります。

「アセットファイナンス」に含まれる資金調達手段

「アセットファイナンス」に含まれる資金調達手段は、主に以下の2つです。

・ファクタリング
・保有資産の売却

ひとつめのファクタリングは、売掛債権の売却による資金調達手段です。厳密にいえば、本来の支払い期日よりも早く売掛金を回収できる仕組みであり、調達した資金が負債になることはありません。

融資ほど信用情報を重視しておらず、あくまでも売掛債権の保有が利用条件となるため、利用にあたってのハードルが低く、審査や入金が迅速な点もメリットのひとつに数えられます。
2026年度末までに手形や小切手が廃止される予定であることから、今後はさらに利用率が向上するのではないかと予想されています。
保有資産の売却は、不動産や機械設備、車両などのほか、有価証券や商標権、知的財産まで、あらゆる資産を現金化する手段です。
資産さえ保有していれば、それらの価値に応じた資金を得られるという手軽さが魅力のひとつであるほか、維持費の削減も見込めるため資金繰りの改善策としては非常に有用な手段だといえます。
反面、低い評価となれば調達希望金額に届かなかったり、資産を売却することによって利益の低下を招く可能性があるなど、売却にあたっては慎重な検討が求められます。

まとめ

まとめ

今回は、2024年現在において事業者が活用を検討するべき10の資金調達手段を紹介しました。
事業者向けの資金調達手段は、「デットファイナンス」「エクイティファイナンス」「アセットファイナンス」という3つの大枠があり、それぞれに具体的な手段が含まれるという構成になっています。
融資や保有資産の売却など、古くから活用され続けている手段もあれば、ソーシャルレンディングやクラウドファンディングなどのようにネット社会ならではの資金調達手段も利用率が高まっています。
また、2026年に迎える手形と小切手の廃止という大きな節目を境に利用率が高まると予想されるファクタリングも注目度が上昇しています。
資金を調達する目的や、経営における事情といった様々な要因を踏まえながら、最適な資金調達手段を選択してみてください。