上場企業のホームページを閲覧すると、投資家や株主に対して経営状況や財務状況、業績などの企業情報を発信するIR(インベスター・リレーションズ)情報のページが設置されているのが分かりますが、その中で「四半期報告書」と呼ばれる資料が公開されているのを目にします。
この「四半期報告書」は、原則として上場企業にのみ提出と開示を義務付けられている資料であるため、中小企業や投資家以外の方にとってはあまり身近なものとはいえないものです。
そこで今回は、「四半期報告書」とはどのような内容の資料なのか。
また、なぜ上場企業には、このようような資料の提出と公開が義務付けられているのかといった理由などについても触れながら、簡潔に解説していきたいと思います。
四半期報告書とは?
四半期報告書とは、その名の通り四半期(3ヶ月)ごとに企業の事業状況や経営状況といった情報を公開するための資料であり、金融商品取引法第24条によって提出が義務付けられています。
提出された四半期報告書の公開期間は3年間。
ただし冒頭でも言及した通り、すべての法人が提出を求められるわけではなく、提出を義務付けられているのは原則として上場企業のみです。
また、上場企業以外の企業も任意で提出することができますが、その場合は継続的な提出が求められることから、経理にかかる負担も大きいことなどを理由にあまり一般的には行われていません。
四半期報告書の役割
ではなぜ上場企業には「四半期報告書」の提出が義務づけられているのでしょうか。
その理由は、株主や投資家に対して迅速かつ適切な投資判断を促すためであるといえます。
上場企業には、「四半期報告書」のほかにも、株主や投資家への情報公開として「有価証券報告書」の提出が義務づけられていますが、こちらは毎事業年度終了後3ヶ月以内の提出です。
つまり「四半期報告書」は、「有価証券報告書」の内容を四半期ごとに補完する資料であると同時に、株主や投資家にとってはより短期的な投資判断の資料として役立てられているものとなっています。
四半期報告制度が制定された理由
「四半期報告書」を提出する制度を「四半期報告制度」とよびますが、この制度が制定されたのは2006年の証券取引法改正時です。
それ以前の日本では、上場企業に対して上述した毎事業年度終了後の「有価証券報告書」と、半期ごとに提出する「半期報告書」のみによる情報開示が義務づけられていました。
しかし、年2回の情報開示だけでは、投資に向けて迅速で適時の情報を望む株主や投資家にとっては、企業情報を目にする機会が少ないといった不満の声が上がるなど問題視されてきました。
そのような問題の改善のために制定されたのが「四半期報告制度」というわけです。
こうして制定された「四半期報告制度」ですが、これまでに何度か改正が行われており、現在では制定時よりも開示内容は簡易的なものになっています。
開示内容の省略や簡略化が認められたことにより、提出が義務づけられた企業にとっては経理業務の負担が軽減されながらも、適切かつ迅速に企業情報を公開することが可能になっています。
四半期報告書の内容
次に、「四半期報告書」にはどのような情報が記載されているのかについてみていきましょう。
記載事項は主に「企業の概況」や「事業の状況」などがあり、原則として以下の資料をすべて提出する必要があります。
1.企業の概況 | ・主要な経営指標等の推移 ・事業内容 ・関係会社の状況 |
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2.事業の状況 | ・生産や販売の状況 ・経営上の重要な契約等 ・財務状態・経営成績・キャッシュフローの状況の分析 |
3.設備の状況 | |
4.提出会社の状況 | ・株式等の状況 ・株価の推移 ・役員の状況 |
5.経理の状況 | ・財務諸表 ・貸借対照表 ・損益計算書 ・キャッシュフロー計算書 (すべて四半期ごとの記録) |
このうち、キャッシュフロー計算書の開示が求められるのは第2四半期であり、第1、第3四半期では特定の条件を満たすことにより省略することが可能です。
また、連結決算を行う上場企業においては、有価証券報告書で個別財務諸表の開示が求められるのに対し、四半期報告書では個別財務諸表は省略され、連結財務諸表が開示されることになります。
そのほか、「四半期報告」に対しても通常の決算と同様に監査法人による監査の必要があり、「四半期レビュー報告書」と呼ばれる監査報告書も添付しなければなりません。
四半期報告書の提出スケジュール
「四半期報告書」は四半期ごと、つまり1年に3回提出することになりますが、提出期限は原則として各四半期終了から45日以内です。
たとえば、3月決算の企業では、以下のようなスケジュールで提出することになります。
第1四半期(4月〜6月)・・・8月 第2四半期(7月〜9月)・・・10月 第3四半期(10月〜12月)・・・1月 |
まとめ
「四半期報告書」とは、原則として上場企業に四半期ごとの開示が義務づけられた企業情報です。
株主や投資家への迅速かつ適時の情報開示を目的としており、「企業の概況」や「事業の状況」などが記載されています。
年に一度の公開となる決算報告書や有価証券報告書よりも、より短期間における上場企業の経営状況や財務状況を把握するのに役立つ資料だということがいえるでしょう。