以前の記事で「事業型ファンド」について解説しました。
事業型ファンドは、複数の投資者から資金を集めたファンドと呼ばれる機関や個人が、不動産事業や太陽光発電事業といった企業や個人が展開する事業そのものに資金を投じて利益の獲得を目指し、獲得した利益を投資者に分配するという投資の仕組みです。
ファンドを介した事業への投資であることから、事業型ファンドと呼ばれますが、事業への投資自体は事業投資と呼ばれます。
それに対し、それそのものには価値のない紙切れやデータに過ぎないものながら、その所有権の獲得や売却を通じて利益を狙う投資手法を金融投資といいます。
では、金融投資には具体的にどのような種類があるのか。また、金融投資と事業投資とで
金融投資の種類
金融投資は、企業が発行する株式や債権など、本来価値を持たない紙やデータの保有権の獲得や売却によって、定期的な配当金や利息、売却益を得る投資手法です。
金融投資の種類は主に3つです。
株式投資
まずは株式投資です。
株式投資は、東証1部をはじめとする証券取引所に上場した企業が発行する株式の一部を売買する投資手段です。
株式の価値である株価は日々変動しており、株価が購入時よりも売却時に上昇していれば、その差額の分だけ利益を得られるということになります。
また、株式の発行企業が得た営業利益などに応じて、利益の分配に当たる配当金を得ることも可能になります。
債券投資
次に債券投資です。
債券投資は、企業や団体、さらには国や地方自治体などが資金調達を目的に発行した債券を購入する投資手段です。
債券の発行時には、元本の償還日(満期)や利息が設定されるため、債券の発行元は融資と同じように償還日が訪れるまでの間は、債権の保有者に利息を支払い続けることになります。
この利息の獲得によって利益拡大を目指すのが債権投資です。
投資信託
3つ目は投資信託です。
投資信託は、資産運用を専門とする機関や個人に資金の運用を任せ、運用によって獲得した利益の分配を受ける投資手段です。
複数の投資家から資金を集めるという仕組みから、投資信託もファンドと呼ばれますが、事業型ファンドとは違い、株式や債権、FXといった金融取引をメインに扱います。
では、投資手段として金融投資か事業投資かを選ぶ場合、どちらの方がより大きな利益を狙えるでしょうか。また、どちらの方がリスクを軽減して安定した利益を得られるのでしょうか。
それを見極めるための手段のひとつが、利益が生じるパターンを考えてみることです。
キャピタルゲインとインカムゲイン
投資によって利益を得られるパターンは2種類あります。
それが、キャピタルゲインとインカムゲインです。どちらも投資用語で「投資家が受け取る利益」を指しますが、双方には大きな違いがあります。
キャピタルゲイン
キャピタルゲインは、保有する権利や商品などの売却によって得られる利益です。
たとえば株式の場合、10万円で購入した株式を株価が20万円に上昇したタイミングで売却すれば、10万円の利益を獲得できます。これがキャピタルゲインです。
つまり、キャピタルゲインは、株価のように価格が変動する権利や商品を売却することによって得られる利益ということがいえることから、購入時よりも数倍以上もの高い利益を狙える一方、大きな損失を被るリスクもはらんでいるハイリスク・ハイリターンのパターンだといえます。
インカムゲイン
一方、インカムゲインは権利や商品を保有しているだけで継続的かつ安定的に得られる利益のことです。
不動産投資を行えば、価格が変動することのない定期的な家賃収入を得られますね。これがインカムゲインです。
価格の変動がなく安定的な利益獲得が狙えるという点では、キャピタルゲインよりもローリスク・ローリターンであることがわかります。
金融投資と事業投資
以上の2つの利益獲得パターンを踏まえて、金融投資と事業投資を比較してみましょう。
たとえば、金融投資である株式投資では株価の変動によるキャピタルゲインがある一方で、配当金というインカムゲインもある場合があります。
対して、事業投資である不動産投資では、家賃収入というインカムゲインが得られるほか、売却すれば変動する価値に応じたキャピタルゲインを得ることになります。
つまり、金融投資と事業投資は、どちらの利益獲得パターンも有していることがほとんどであり、ハイリスク・ハイリターンとローリスク・ローリターンを兼ね備えているといえます。
ただし、多くの金融投資はキャピタルゲインの側面が強いといえ、大きな利益を狙える一方、元本割れに陥って多大な損失を受けるリスクを同時に背負うことになります。
反対に、事業投資はインカムゲインの側面が強いほか、同じインカムゲインである金融投資で得られる配当金よりも高い利益を継続的に得られる可能性が高まります。
しかし、事業投資の配当金の多くは「固定配当」であることがほとんどのため、価格の変動によっては、数十倍以上もの利益を獲得できる金融投資のキャピタルゲインほどの爆発力はないといえます。
まとめ
大きなリスクを背負いながらも爆発的な利益を狙える金融投資か、金融投資ほどの爆発的な利益は見込めないものの、継続的に安定した利益を獲得できる事業投資か。投資を検討する際には、投資資金や目標とする利益とそれに伴うリスクを踏まえた上で選択するべきだといえるでしょう。