QRコードやバーコードを用いた決済手段が普及するなど、世の中のキャッシュレス化が急速に進む昨今の中でも、クレジットカードは数十年以上前から利用が続けられ、今も昔もキャシッシュレス決済の中心的存在です。
そんなクレジットカードには、個人名義の「個人カード」と、事業を行う法人の代表者や個人事業主名義となる「法人カード」があります。
法人カードは、経費の支払いをまとめられたり、経理・会計業務の効率化に役立つほか、事業をサポートする様々なサービスが付帯するなど、今やビジネスには欠かせないアイテムのひとつになっています。
すでに多くの事業主様が法人カードを所有されていることかと思いますが、中には、法人カードの特徴や所有するメリットが分からず、導入されていない企業様も少なからずいるようです。
また、法人カードは作りたいと思っているけど、個人カードよりも手続きが煩雑そうで面倒臭いと思われている事業主の方もいることでしょう。
そこで今回は、法人カードの特徴や所有することで生じるメリットのほか、発行の方法までを解説し、法人カードの魅力を存分にお伝えしたいと思います。
これまでは法人カードに興味がなかった方も、これから法人カードを検討したいと考えられている方も、ぜひ参考にしてみてください。
目次
法人カードとは?
法人カードとは、その名の通り「法人のみに所有が許される」ビジネス専用のクレジットカードです。
ここでいう法人とは、株式会社や合名会社などの「営利法人」のほか、NPO法人や学校法人などの「非営利法人」、さらには法人化していない個人事業主も対象となります。
つまり、法人カードは何かしらの事業を行う企業や団体、個人であれば、その事業規模や会社規模を問わず発行することが可能です。
法人カードの種類
法人カードは、クレジットカード会社によっても異なりますが、大きく分けて主に2種類のタイプに分かれます。
ひとつは「ビジネスカード」です。
ビジネスカードは、従業員数が20名以下の中小企業や個人事業主向けの法人カードで、基本的に引き落とし口座は法人名義の口座となります。
もうひとつは「コーポレートカード」です。
コーポレートカードは、従業員が20名以上在籍するような大企業向けの法人カードです。ビジネスカードに比べて、高い利用限度額が設定される傾向にあるほか、引き落とし口座には法人口座はもちろん、事業主や役員の個人口座を設定できるものあります。
法人カードのランク
法人カードにも、個人カードと同様に利用者のステータスに応じたランクが設けられています。
個人カードには、「一般」「ゴールド」「プラチナ」「ブラック」の4段階のランクが設定されている一方、法人カードのランクはブラックを除いた3種類であることが一般的です。
もちろん、ランクが高いカードほど審査基準は厳しく、年会費も高額となりますが、利用限度額が高く設定されるだけでなく、受けられる特典や付帯保険もそれに見合う非常に充実した内容になります。
支払い方法
法人カードの支払い方法は、一部の個人事業主向けのカードを除けば1回払いが原則となります。個人カードでは当たり前のように利用できる分割払いやリボ払い、現金の引き出しが可能なキャッシング機能といったサービスは付帯していません。
法人カード所有のメリット
経費の把握を簡素化
ビジネスを行うにあたっては、オフィスの賃料や事務用品などの小さな備品の購入まで、大なり小なり様々な経費が発生するものです。そのような支払いを法人カードで行い、引き落とし口座を一本化すれば、利用内容も利用明細サービスにより一目で確認できるため、経費の内容を容易に把握できるようになります。
また、請求書払いにおける銀行振込には不可欠な振込手数料の支払いも不要となるため、経費の削減も期待できます。
事務・経理業務の負担軽減
経費の支払いを法人カードで一本化することは、事務や経理業務の負担にもつながります。たとえば、従業員が出張に出かける際などであれば、従業員がその費用を立て替える必要はなくなり、後々に清算する煩わしさや清算漏れの心配もありません。
また、最近主流となっているクラウド型の会計や経理ソフトには、法人カードの利用データを紐づけて、各項目に仕分ける機能が搭載されているため、領収書を確認しながら数字を入力する手といった間も省けますし、思わぬ入力ミスの防止にも効果的です。
管理体制の強化
経費利用をすべて確認できる法人カードの導入により、従業員が「いつ、どこで、どんなものに、いくら支払ったか」が明確になります。これは、従業員による経費の不正使用や不透明な支払いの防止にもつながるため、社内の管理体制をより強化できることになります。
キャッシュフローの安定
法人カードも個人カードと同様に、利用料金の引き落としは少なくとも1ヶ月です。したがって、経費の支払いを法人カードに一本化すれば、実際の支払いまでには猶予が発生するため、その間の事業資金を口座に残すことができます。急な受注により仕入れが必要な場合などにも備えることができるなど、法人カードの導入はキャッシュフローの安定化にも役立ちます。
ビジネスをサポートするサービスの付帯
個人カードにはない、法人カード特有の付帯サービスといえるのが、様々なビジネス関連のサポート特典です。
特典の内容は、カードの種類やランクに応じて異なりますが、たとえばレンタルオフィスや貸し会議室の利用料割引、特別セミナーの招待、税理士や司法書士などの財務や法律の専門家への相談料が、回数限定で無料になるといったものがあります。
法人カードの発行方法
法人カードの発行方法は、提出書類の違いを除けば基本的には個人カードと変わりありません。カード会社への資料請求や電話申し込みのほか、銀行提携カードなどであれば各店舗などでも申請できますが、最も主流の方法はweb上からの申し込みです。
ここでは、webからの申し込み手順をご紹介していきます。
①申し込み
ネットで、たとえば「VISA 法人カード」などと検索すると、様々な申し込みサイトが閲覧できるかと思いますので、その中から最も適した条件の法人カードを申し込むことになります。
申し込みにあたっての記入事項は、申し込み者(事業主など)の個人情報のほか、資本金や業種などの事業や会社に関する情報が必須です。
② 書類の提出
申し込みとともに必要となるのが、いくつかの書類の提出です。書類は、画像のアップロードのみで済む場合や、郵送が必須となる場合などカード会社によって様々です。
個人カードの申し込み時には、基本的には本人確認書類のみの提出となりますが、法人カードは申し込み者の本人確認書類とあわせて以下のような書類の提出が必要です。
・登記簿謄本(現在事項全部証明書or履歴事項全部証明書) ・収入証明書(個人事業主の場合) |
また、ランクの高いカードを希望する場合や審査結果によっては、決算書などの追加書類の提出を求められることもあります。
③与信審査
法人カードの与信審査では、申し込み者個人の信用情報とともに、会社や団体の規模や業績なども対象となります。ですので、仮に会社や団体の審査には通過できても、申し込み者個人の信用情報に問題があれば、カードの発行は難しくなる可能性があります。
④発行
与信審査に通過できれば、2〜3週間ほどで法人カードが手元に届きます。
法人カードを選ぶポイント
ここまでは、法人カードの特徴やメリット、さらには発行方法までをご紹介してきました。しかし法人カードと一言でいっても、種類や発行会社は様々です。では、実際に法人カードを申し込む際には、どういった点を重視して選ぶべきなのでしょうか。
利用限度額とランク
まずは利用限度額です。法人カードの利用限度額はカード会社によって異なりますが、基本的にはランクによって変動します。一般カードであれば10万円〜100万円、最上級のプラチナカードであれば100万円〜500万円程度に設定されています。
ですので、法人カードを申し込む際には月間のおおよその経費を算出した上で、その金額に適した利用限度額のクラスを選ぶとよいでしょう。
ただし、カードのランクが上がれば年会費も高額となり、大きな負担となる可能性になることも考慮しなければなりません。
審査基準
毎月の経費が多く、年会費も負担にならないのであれば、迷わず利用限度額の高いランクの法人カードを選びたいところですが、やはり個人カードと同じようにランクが上がれば審査基準も高くなります。
事業を開始したばかりの企業や個人事業主は、業績や信用度が決して高いとはいえないため、高いランクの法人カードを申し込むのは無謀といわざるをえません。
そのような場合には、まずは審査の甘い一般カードを選んで、発行を確実にするようにしましょう。また、法人カードも個人カードと同じように複数社のカードを所持することができるので、もしも利用限度額が毎月の経費に届かないなどの理由があれば、いくつかのカード会社に申し込むのも、ひとつの手段です。
ビジネスに役立つサービスや特典の有無
メリットの項目でもご紹介しましたが、法人カードにはビジネスに役立つ様々なサポートサービスや特典が付帯します。もちろんこれらもカードのランクに応じて変更されます。
各法人カードに付帯するサービスや特典が自社や事業主様に適しているか、また、それらが毎年支払う年会費と見合っているかを判断することも、法人カードを選ぶポイントのひとつになります。
今回は、法人カードについてご紹介しました。
個人カードに比べると、分割払いやリボ払いができない点や、申し込み時に追加の提出書類が必要になるなど、デメリットが少々あることは確かですが、法人カードにはそれを補えるだけのメリットが多々あります。
今や法人カードは、経費管理の簡素化や経理業務の効率化など、ビジネスを円滑にする必須アイテムのひとつです。まだ未導入だという事業主様は、ぜひこの機会に発行されてみてはいかがでしょうか。