ファクタリング

ファクタリングの利用率が高い6つの業種

ファクタリングの利用率が高い6つの業種【ファクタリング】

借金となる融資とは異なり、借りない資金調達法として知名度を高めているファクタリング。売掛債権を売却して資金繰りを改善させられるとあって、返済義務の生じる融資よりも比較的低リスクかつスピーディーに現金を得られる、この資金調達法を利用する中小企業が年々増加しています。

では、実際にどのような業種の企業に利用されているのか。

今回は、ファクタリングを利用すべきケースや、「3社間ファクタリング」と「2社間ファクタリング」ではどのようなメリットやデメリットが生じるかについて、比較的利用の多いそれぞれの業種別に解説します。

基本的なファクタリングの仕組み

まずは、ファクタリングの基本的な仕組みや流れについて理解しておきましょう。冒頭でも軽くふれていますが、ファクタリングとは売掛債権を売却して現金化する金融サービスです。

ファクタリング契約を結ぶためには、「自社」「「売掛先」「ファクタリング会社」の3者の組織が関係します。

ファクタリングの仕組みには「3社間ファクタリング」と「2社間ファクタリング」の2つがありますが、この3者の関わり方によってそれぞれの方法に分けられます。

3者間ファクタリング 

一般的にファクタリングといえば、自社、売掛先、ファクタリング会社の3者が直接的に関わる「3社間ファクタリング」のことを指します。

自社と売掛先との間に売掛金が発生した後、自社とファクタリング会社は売掛先に対して売掛金の買取り契約を通知し承諾を得ます。

売掛先から売掛債権売却の承諾を得られれば、自社はファクタリング会社との売掛金買取り契約を結ぶことが可能になり、締結後に売掛金が現金化されます。

売掛金の回収はファクタリング会社と売掛先との取引となりますので、自社の介入は売掛金が現金化された時点で終了となります。

2者間ファクタリング

一方の「2者間ファクタリング」では、自社とファクタリング会社との間だけで契約を結びます。その際、ファクタリング会社による売掛先への信用調査は行うものの、3社間ファクタリングのように売掛債権を保有する売掛先への通知、承諾は不要となるため、売掛債権の回収も自社が行うことになります。

掛先への通知が行われることがないため、秘密裏に売掛債権を売却できることが「2者間ファクタリング」の大きなメリットですが、売掛先の倒産などにより自社だけでは債権の回収が不可能に陥るリスクがあるため、「3者間ファクタリング」よりも契約手数料が割高になる傾向があります。

どちらの方法でファクタリングが行われるかは、売掛債権の金額や売掛先の経営状況などの様々な条件を考慮して、ファクタリング会社によって提案を受けることになります。

では、どういった業種の企業や団体がファクタリングを多く利用しているのでしょうか。

また、ファクタリングを利用するべきケースや、「2者間ファクタリング」と「3者間ファクタリング」のメリット・デメリットについて、それぞれの業種別に見ていきましょう。

ファクタリングの利用が多い企業

建設業

建設業

ファクタリングの利用が最も多い業種として挙げられるのが「建設業」です。

「建設業」は、非連続性の受注産業構造であるという点から他業種に比べて資金調達が非常に厳しいといわれています。

さらに昨今進められている経済政策の影響もあり大都市の中心部では、大型の建設プロジェクトが次々に立ち上げられている反面、人材の高齢化に伴う人件費の高騰により当初の工事予算ベースよりも労務費が嵩んでしまい、完成工事原価を押し上げ、最終的には収益圧迫要因となることが懸念されております。

このような深刻な資金繰りの問題に直面している「建設業」は、ファクタリングを労務費用補填や人手不足解消のための採用活動費の捻出のために有効活用している傾向にあります。

そのほか、以下のような資金繰りの問題の解決のためにファクタリングを利用する企業が多いようです。

ファクタリングが利用される主なケース

・工期の延期による先出し分の不足

・資金不足によって、先出し分を当座決済できない

・工事が完了したものの請元の倒産により未入金

・手形支払など、想定外の支払いによる資金ショート

製造業

製造業

円安傾向によって、輸出業を中心とした製造業の業績は上昇していますが、中小零細企業は素直に喜べないのが現状です。

2000年代前半に再来した円高傾向によって製造業の拠点は次々にアジア地域に移転。これに伴い製造業の雇用は大きく減少し、特に地方の中小零細企業では人材不足の問題が顕著にみられました。

近年は人件費や材料費、燃料費などの高騰によって、海外での生産がコスト高になっているため、中国を中心としたアジア地域から国内回帰する企業も多く、外国人労働者の受け入れにも積極的になっています。

商品製造費用だけでなく、建設業と同じように人手不足に悩む製造業においても、人件費の捻出や報酬待遇改善のためにファクタリングを利用する企業が増えています。

ファクタリングが利用される主なケース

・手前の製造費用の捻出ができない

・利益率が低いため、資金に余裕がない

・手形や小切手での支払いによる資金ショート

・取引先の長い支払いサイトの圧縮

トラック運送業

トラック運送業

1990年の規制緩和によって新規参入ハードルが下がり、国内事業者が6万社を超えるほどにまで成長した運送業ですが、その後は需要と供給のバランスが崩壊し、多くの企業が運送料金の値下げを余儀なくされました。

現在ではネット通販の隆盛により、仕事の受注こそ増加しているものの、低運賃、人材不足、トラック不足、燃料の高騰といった問題が起きており、非常に厳しい資金繰りを強いられているのが現状です。

そんな中で、ファクタリングを利用することで、つなぎの資金確保を目指す企業が増えています。

ファクタリングが利用される主なケース

・繁忙期の増車や人材増員のための先出し分不足

・自社車両の故障、事故など想定外の出費

・燃料費や人件費の高騰による資金不足解消

・取引先の支払いサイト圧縮

人材派遣業

人材派遣業

1986年に施工された派遣法により、急速な市場拡大を遂げた人材派遣業。

以来、規制緩和も度々行われ、派遣を利用する企業も派遣スタッフも急増していますが、一方で派遣業は景気の影響を受けやすいという側面も持ち合わせています。

企業側が希望する即戦力の人材を、必要に応じて確保できることが派遣の最大のメリットであるため、求人倍率が好況時には派遣を希望する企業が増加し市場規模は拡大します。ただ、一転不況の波が押し寄せると、真っ先に経費削減の対象となるのは人件費となる点から、景気の影響を受けやすい業界といえます。それに伴い一旦、資金難に陥るようなことになれば、風評被害も大きく、即業績悪化につながりかねない業界であるとされています。

ファクタリングが利用される主なケース

・派遣先の経営状況の悪化による支払いの滞り

・派遣したスタッフが起こしたトラブルによる違約金の発生

・価格競争の激化によって生じた、薄利多売による資金難

・派遣人材不足により同業者に対して人材の割り振りを依頼

小売業

小売業

特に地方においては、総合スーパーや大型ショッピングセンターの開業によって経営状況の悪化につながっている小売業。

また、災害や悪天候の影響もダイレクトに受けやすいのも小売業の特徴のひとつです。

値下げ競争では大型商業施設に勝つことは難しく、短期的かつ継続的な資金調達が欠かせない企業も多くなっています。

ファクタリングが利用される主なケース

・卸先の倒産による資金ショート

・スポット受注の仕入れ金額の確保

・急な支払い方法の変更によるキャッシュフローの改善

・卸価格の値下げによって生じる粗利の低下

歯科医業

歯科医業

今やコンビニエンスストアよりも数が多い歯科業界は、まさに供給過多の時代。人口減少に反して、歯科医師の増加問題は今後も簡単には解消されないと予想されています。

独立を志す歯科医は多く、いざ開業に至ったとしてもあっさりと廃業に追い込まれるケースも頻繁に起こっているのが歯科業界の現状です。

実際に、医療関係事業の年間倒産件数の約4割が歯科医院だともいわれています。

そのような状況下のため、歯科業界でのファクタリング利用も一般的になっており、歯科診療報酬債権買取で短期の事業資金繰り改善を試みる歯科医院が急増しています。

ファクタリングが利用される主なケース

・レセプト請求に対して、予想以上の返戻分が発生

・開業時に受けた多額の融資やリース契約による負債

・客の減少による資金難

・スタッフ雇用のための人件費確保

「3者間ファクタリング」を利用するメリットとデメリット

  • メリット

売掛金を早期に現金化できるだけでなく、請元からしても支払いサイトを変更する手間が省けます。また、たとえ売掛先が倒産に到ってもファクタリング会社が債権を負担するケースもあるため未払いを防ぐことができます。

医療関係事業へのファクタリングを得意とする業者であれば、社保や国保の口座変更を代行することもあります。

  • デメリット

売掛先からの承諾が必要になるため、現金化に時間がかかるため資金繰りの早期改善は期待できません。

医療関係事業へのファクタリングでは、社保・国保に対し申請手順を踏むため、現金化までに時間がかかる場合があります。

2者間ファクタリング」を利用するメリットとデメリット

  • メリット

仮に売掛先からの入金が予定日より遅れ、当座の支払いに支障をきたしても、2者間ファクタリングであれば、売掛先への通知・承諾が不要になるため即日で資金を調達できる可能性があります。

  • デメリット

売掛先への与信審査の結果によっては、3者間ファクタリングよりも掛目が低く設定される場合があります。

今回は、ファクタリングの利用率が高い6つの業種をご紹介しました。ファクタリングが必要なケースとして共通するのは、やはり人件費不足や、売掛先の支払いサイトの長期化による資金難のようです。

もしも金融機関からの融資を受けることができず、資金繰りが厳しい状況であるならば、積極的にファクタリングの利用を検討しましょう。