世界的に物価の上昇が続く昨今。
新聞やニュースなどでは各国の「政策金利」に関する話題が度々報じられていますが、中には「政策金利」がどういったものかイマイチ理解できなかったり、それが私たちの日常生活や企業の経営にどのような影響を与えるのか分からないという人も多いかと思います。
日本では、2016年からマイナス金利政策が導入されており、日銀当座預金の一部にマイナス0.1%の金利が適用されています。
これは、金融機関が日銀の口座にお金を預け入れる際に、0.1%の金利が発生することを意味するわけですが、この「マイナス0.1%」こそが現在の日本の「政策金利」ということになります。
順を追いながら詳しく解説していきます。
「政策金利」の設定や変動は「金融政策」の手段のひとつ
国が主導する経済対策は大きく分けて2種類あります。
ひとつは政府が主体となって進める「財政政策」です。
「財政政策」は、各種税金の増税や減税、国債発行の増減、公共事業の拡大や縮小などを通じて、国総需要の調整や雇用の拡大などを目的とします。
もうひとつが「金融政策」です。
政府が主体となる「財政政策」に対し、「金融政策」を主導するのは各国の中央銀行。
例えば、日本では「日本銀行」、アメリカでは米連邦準備理事会(FRB)がその役割を担っています。
主な目的は「景気や物価の安定」そのための政策手段として挙げられるのが、通貨供給量の調整や金利の調整といったもの。
したがって、「政策金利」の設定や変更は「金融政策」のひとつであり、景気や物価の変動に応じて調整が行われるということがいえます。
「政策金利」は金融市場の調節手段
では、「政策金利」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。
端的に説明すると、「政策金利」とは「金融政策」を主導する各国の中央銀行が、一般の金融機関に貸し付けを行う際の金利のことです。
金融市場の調節手段として用いられることから、その設定によって、金融機関の貸出金利や預金金利などに影響を与えることになります。
「政策金利」と景気や物価の関係性
次に、「政策金利」と景気や物価の関係性についてみていきましょう。
まず考えたいのが、景気や物価の変動が消費者や企業の経済活動にどのような影響を与えるかです。
たとえば物価が下落した場合、消費者にとっては安い出費でモノやサービスを購入することができますが、それらを販売する企業は売上や利益の減少に悩まされることになります。
反対に、物価が上昇した場合には、企業にとって売上や利益の上昇を期待できるものの、消費者は出費を控える傾向が顕著になります。
つまり、物価がどちらか一方に大きく傾けば「景気の悪化」につながるということがいえます。
そのようなバイアスを回避し、景気を安定させるために用いられるのが「政策金利」の上げ下げです。
一般的に、物価の上昇を狙う際には「政策金利」は引き下げられます。
「政策金利」を引き下げることにより、金融機関が日本銀行から低金利で資金の調達ができるようになるため、個人や企業に対する貸出金利も同じように低下します。
その結果、個人消費や企業の設備投資も活発化し、景気の上昇とともに物価の上昇にも期待できるというわけです。
一方、物価の上昇と景気の過熱が見られる際には、「政策金利」は引き上げられます。
すると、日本銀行は金融機関への貸付を高金利で行うようになるため、個人や企業の貸出金利も上昇します。
そうなれば、個人も企業も金融機関からの借入とともに消費を控えるようになるため、物価の上昇を抑えられるというわけです。
日本でマイナス金利政策が続く理由
さて、日本では2016年からマイナス金利政策が続けられていますが、「政策金利」の役割や作用が理解できると、なぜこのような政策に及んでいるのかが分かるかと思います。
その目的は、物価の下落によるデフレからの脱却。
したがって、日銀は「政策金利」を引き下げることによって、金融市場を活性化させ、消費の上昇に伴う景気回復を目指しているということになります。
ところが、日銀が2013年に掲げた「前年比+2%の消費者物価指数」は未だ達成には至っていないことからも、その効果に対する疑問視は続くなど、マイナス金利政策への批判の声は民間の金融機関を中心に年々高まっているといえます。
しかし、目標達成に至っていないだけでなく、現在も続く新型コロナウイルスの影響によって引き起こされた景気の低迷も重なっている現状を鑑みても、今後しばらくは、景気浮揚を狙うマイナス金利政策の継続が予想されます。
まとめ
今回は「政策金利」について解説しました。
「政策金利」とは、国が主導する経済政策のひとつである「金融政策」の手段であり、中央銀行が一般の金融機関に貸し付けを行う際の金利です。
景気と物価を安定させるために上げ下げが行われ、景気の悪化時には引き下げを試み、逆に景気の過熱時には引き上げられます。
「政策金利」の変動は、私たちの生活や企業の経営にも大きく影響するため、日銀の今後の意向や動向を注視していきたいものです。