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税務調査はなぜ行われる?法人が納める税金の種類と税務調査の実態を解説!

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経営者であれば、「税務調査」という言葉に不安や緊張を感じるものです。
そもそも税務調査とは、納税者に罰則を課す目的で行われるものではなく、公正な税負担を実現し、税法の遵守を促進するために行われる重要なプロセスです。
したがって、税務調査がどのような目的や手順で進むのかを明確に理解することにより、調査に対する不安や緊張は緩和され、適切な準備を進めておくことができます。
そこで今回は、法人に納税が義務付けられている税金を確認したうえで、税務調査の実態について解説していきます。税務調査のプロセスを理解しておき、適正な税務管理とリスク対策に役立てましょう。

法人が納税しなければならない主な税金の種類

法人が納税しなければならない主な税金の種類

まずは、法人が納税する主な税金の種類について簡単に確認しておきましょう。

法人税

法人が事業活動を通じて得た所得に対して課される税金が、法人税です。
所得とは、法人としての収益から経費や損失を差し引いた後の課税所得のこと。
この課税所得に法人税率(約23.2%)を適用して税額を算出します。

法人事業税

法人事業税は、都道府県が課税主体となる地方税のひとつ。国税である法人税と同様に、法人が事業活動で得た所得に対して課税されます。税率は都道府県によって異なるほか、所得金額によっても変動するため、基本的には大企業ほど高い税率が適用される傾向にあります。
また、法人の事業内容や規模に応じて「外形標準課税」という仕組みも導入されており、一定の規模を超える法人には、所得だけでなく資本金や従業員数に基づく課税も行われます。

法人住民税

法人住民税も地方税のひとつであり、納税先は都道府県および市町村となります。そのため、法人住民税は、都道府県民税と市町村民税の2種類に分けられており、納税の際にはそれぞれの税額を合算して納付します。
課税標準は、こちらも事業活動で得た所得。なお、一定の所得金額に対して定額で課される均等割もあり、赤字の場合でも均等割の支払いが求められます。均等割の税額は、資本金や従業員といった法人の規模によって異なります。

法人事業所税

法人事業所税は、法人が所有する事業所の床面積と従業員数に基づいて課される税金です。地方税のひとつであり、事業所が所在する市町村に対して納税します。
事業所税の税率は自治体によって様々ですが、基本的には事務所の床面積や従業員数といった特定の基準が設定され、その基準を超える法人に対して課税されます。

消費税

消費税は、商品やサービスの取引において課される間接税です。間接税とは、納税が義務づけられた担税者が直接納めるのではなく、事業者をはじめとした納税義務者によって間接的に収める税金を指します。
したがって、本来の担税者である消費者に代わり、商品やサービスを提供する事業者が、それらの価格に消費税率をかえて算出した消費税を徴収。納税額は、売上に対する消費税から仕入れに対する消費税を差し引いて納税額を確定させます。

固定資産税

土地や建物、償却資産を所有する法人には、固定資産税も課されることになります。固定資産税は、地方税のひとつであるため、納税先は事業所が所在する市長村。
納税額は、各自治体が定める固定資産の評価額に基づいて算出されます。なお、評価額は各自治体によって定期的に見直され、資産の市場価値に近づけられます。

印紙税

契約書や領収書など、印紙税法で定められた証憑書類には税金が課されます。この税金を印紙税とよび、印紙税は収入印紙を購入して書類に貼り付けすることにより納税を証明します。
契約書や領収書の金額が高額になるほど、高い金額の収入印紙を購入する必要が生じます。

特別法人事業税

通常の法人事業税に追加して課税される税金を特別法人事業税といいます。地方自治体の財源確保や、特定業種に対する税負担の調整を課税目的としており、地域ごとの経済状況や産業構造に応じて自治体が独自に設定しています。
特定の業種や事業規模に応じて課税されるなど、通常の法人事業税とは異なる税率や計算方法が適用され、それらは各自治体によっても差異があります。

税務調査の実態

税務調査の実態

ここからは、税務調査の実態についてみていきましょう。

税務調査とは?

税務調査とは、法人や個人事業主などの納税者に対して、税額や財務内容といった税務申告に関する正確性や、適切に税金を納税しているかを確認するために税務局が行う監査のことをいいます。

税務調査を実施する目的

税務調査を実施する目的は主に3つあります。
ひとつは、「公正な税負担を実現」させるため。
社会全体の税負担を公平にするためには、法人や個人事業主、個人を問わず、すべての納税者が法律に基づいた適正な税金を納めなければなりません。
そのうえで、一部の納税者が税金を不正に逃れる、または過少申告したりすれば、他の納税者がその分の負担を余儀なくされ不公平が生じてしまいます。
こうした不公平を取り除き、納税の公平性を保つことが税務調査を実施する目的のひとつです。
ふたつめは「税収を確保する」ためです。
税収は、国や地方自治体の財政の根幹をなすもの。言い換えれば国も地方自体も税収が確保できなければ成り立たず、ビジネスや個人の生活にも悪影響を及ぼしかねません。
公共サービスやインフラの整備、福祉などの財源を安定的に供給するためには、必要な税収の確保が求められます。税務調査は、納税者が本当に納めなければならない正確な納税額を算出するための監査であり、必要な税収の確保にあたっても必要不可欠な機会であるといえます。
みっつめは、「法令遵守の促進」です。
税務調査は、納税者が税法を遵守しているかを確認するための場でもあります。
法令違反や脱税行為を未然に防ぎ、適正な申告と納税を促進できるほか、調査を通じて納税者の意識を高めることにより、自発的な法令遵守を促す効果も期待されます。

税務調査における2つの種類

税務調査の種類には、「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。

任意調査

任意調査は、あらかじめ税務署から発せられる事前通知のもとで実施される税務調査です。あくまでも任意であるため、事前通知を受けたからといって必ず調査に応じなければならないというわけではありませんが、拒否することによって脱税や過少申告を疑われる可能性もあります。
適正な税務管理と納税が行われていれば、特に心配する必要はありませんので、事前通知を受けたのであれば素直に応じるべきだといえるでしょう。

強制調査

一方の強制調査は、脱税などの重大な違法性が疑われる場合に行われる税務調査です。また、任意調査を拒んだ場合には強制調査に切り替えられることもあります。
税務局が裁判所から取得した令状をもとに実施されることになるため、任意調査のように調査を拒むことは不可能です。違法性がほぼ断定された段階での実施となるため、強制調査を受けることになれば、多くの場合において法的措置がとられることになります。

税務調査の流れ

税務調査の流れ

次に、税務調査の流れについて確認していきましょう。

税務調査の予告と通知の種類

強制調査の要件を満たさない限り、税務調査は通常、事前に通知されます。通知では調査の目的、日時、場所、対象となる税務期間が示され、この段階で対象者は調査に向けた準備を始めることができます。
また、通知は電話連絡か書面にて行われます。一般的には電話連絡による通知の割合が多いようですが、電話が通じない場合などの事情があれば、書面による通知がされることになります。

税務調査に向けて必要な準備

通知を受け取ったら、まずは税務調査官から開示を求められる可能性の高い帳簿や書類を整理しておきます。
具体的には、以下のような帳簿や書類が挙げられます。

・財務諸表(損益計算書、貸借対照表など)
・総勘定元帳
・補助簿(売掛金台帳、買掛金台帳など)
・取引先との契約書
・領収書、請求書、納品書
・銀行取引明細

内部監査や専門家への相談を行う

調査前に内部監査を行うことで、事前に問題点を把握・修正できます。これにより、調査中の指摘事項を最小限に抑えることが可能になるでしょう。
また、顧問の税理士や会計士などの専門家に調査への対応を相談・確認することができれば、より適切な対応を講じられるようにもなります。

税務調査官による調査の開始

事前に指定された日時に税務調査官が訪問し、調査が開始されます。調査の際には、上記で挙げた帳簿や書類の確認が行われるほか、納税者や担当者との面談が行われることもあります。
書類の確認にあたっては、主に「収益の計上方法が適正であるか」「経費の計上が正確か」「特定の取引や経費が不自然でないか」「税法に基づいた適正な申告が行われているか」などの点に注意が払われます。
一方、納税者や担当者との面談では、書類の内容や取引の詳細について問われることがほとんどです。嘘偽りなく誠実な回答を心がけて、対応するようにしましょう。
さらに、こうした書類の確認や面談での回答内容によっては、特定の取引に関する詳細な記録や、取引先との通信記録など、追加の書類や資料の提出を求められることもあります。

調査の終了と結果の報告

税務調査が終了すると、税務調査官は調査結果をまとめ、納税者に報告します。報告書に記載されるのは、調査の概要、確認事項、指摘事項、修正が必要な点といった内容です。
調査の結果、特に問題がなければそのまま終了となりますが、もしも申告内容に誤りや不足があった場合には修正申告が求められます。その場合は、速やかに修正申告書を提出し、不足分の税金を納付しなければなりません。

税務調査の影響とリスク管理

税務調査の影響とリスク管理

税務調査の結果次第では、企業経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。お咎めなしで完了すれば問題はありませんが、調査によって修正申告や追徴課税が求められるようであれば、財務状況に直接的な影響を与えることになるでしょう。また、事前準備や調査当日など、対応に多大な時間と労力がかかるため、通常業務に影響を与えることも想定できます。
こうした税務調査のリスクを最小限に抑えるためには、日頃から適切なリスク管理を行うことが重要です。
たとえば、定期的な内部監査の実施によって税務リスクを早期に発見・是正しておくほか、税務に関わる従業員に向けて、適正な帳簿管理の徹底を促すための教育の強化、税理士や会計士などの専門家への相談を随時行い、適切な税務対応を心がけるなどの方法が考えられます。

まとめ

「税務調査の対象にだけは絶対になりたくない」。経営者であれば、そう思うのが当たり前です。
しかし、税務調査はあくまでも日頃の税務管理を確認するものであるため、適正な管理や納税ができていると自信があれば、なにも恐れることはありませんし、適正な管理や納税が認められればペナルティを受けることもありません。
一般的に、税務調査が実施される頻度は中小企業であれば3年に1度といわれていますが、毎年実施される企業もあれば、10年以上にわたって調査されずに済んでいる企業もあります。つまり、実施頻度に特別な決まりなどはなく、ある日突然に税務署から通知が発せられることになるわけです。
とにかく大切なのは、日頃からの適正な税務管理、そして調査当日における誠実な対応。税務調査に関しては、この2点さえおさえておけば、いつ何時、通知が届いても問題なく済ませられるはずです。