「人手不足を解消したい!」。
昨今の少子高齢化などを背景に、人材を雇用したいにもかかわらず、様々な事情により断念せざるをえない、またはそもそも応募が集まらないといった悩みをかかえている事業主の方が少なからず存在します。
また雇用を通じて社会貢献したいと考えられる事業主の方も多くみられるものの、なかなか思うように雇用へとつなげられないというケースもあるようです。
そういった雇用に関するお悩みを抱える事業主の方にぜひ活用したほしいのが、雇用関係の助成金です。
雇用関係の助成金は主に、雇用機会の増大をはじめ、労働者にとっても職業の安定につながることから、企業と労働者の双方にメリットの高い支援策のひとつです。
そこで今回は、企業の人材不足を解消するために役立つ雇用関係の助成金について解説していきたいと思います。
※なお、当記事は厚生労働省のHPを参照して執筆しています
目次
雇用関係助成金とはどのような助成金?
雇用関係助成金は、主に厚生労働省から支給される助成金です。
支給する大きな目的としては、企業の雇用機会の増大と労働者の職業の安定化促進。細かくいえば、人材の雇用はもちろん、労働者の能力開発や失業阻止、障害者や高齢者の積極的な雇用の促進、介護・育児休暇制度の整備といった労働環境の改善などに役立てられます。
そのため、雇用関係助成金と一言でいっても、その種類は様々であり、現在は数十種類もの助成金の提供が実施されています。その中から目的に応じた雇用関係助成金を選び、申請するという流れが一般的な方法です。
なお、例外こそあるものの、雇用関係助成金は「助成金」ですので「補助金」のように申請期間が設けられているわけではなく、年間を通じて申請できるのが基本です。また、返済も不要ですので、人材確保とともに資金調達にもつながるメリットがあります。
支給条件さえ満たしていれば、特に障壁もなく受給できる支援金ですので、目的にそっており、なおかつ未申請の雇用関係助成金があれば、申請しない理由はないといえるでしょう。
雇用関係助成金の対象となる中小企業の規模
雇用関係助成金の対象となる中小企業は、以下のような規模の事業者を指します。
主たる事業 資本金の額 常時雇用する労働者の数
又は出資の総額
小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下
ちなみに、「常時雇用」とは、原則として2ヶ月以上にわたって雇用されるほか、1週間の所定労働時間がおおむね40時間の労働者となります。
以上のような事業者であるとともに、それぞれの雇用関係助成金で定められた条件を満たすことにより申請が可能になります。
人材不足解消や雇用を通じた社会貢献に活用したい雇用関係助成金
では、ここからはいくつかの雇用関係助成金をピックアップしてご紹介します。
・ 雇用調整助成金
雇用調整助成金は、景気の変動や産業構造の変化等にともない、経済的な問題や課題を抱えたうえで、事業縮小にいたった事業主が従業員の雇用を維持する目的で、休業や出向、教育訓練といった一時的な雇用調整を実施する場合に支給される助成金です。
受給額は、休業を実施した場合の休業手当や教育訓練実施時の賃金相当額、さらには出向した場合に出向元の事業主の負担額に対する助成率が中小企業では2/3、中小企業以外では1/2です。
なお対象労働者1人あたりの上限額は8,355円、教育訓練を実施した場合には、1日1人あたり1,200円が加算されます。
主な受給要件は以下のとおり。
1 雇用保険の適用事業主
2 売上高や生産高について、最近3ヶ月間の月平均値が前年同月と比較して10%以上減少している
3 雇用保険被保険者数と派遣労働者数の雇用量について、中小企業は最近3ヶ月間の月平均値が前年同月比10%超え4人以上、それ以外の企業は5%超え6人以上の増加がないこと。
・ 労働移動支援助成金
再就職援助計画などの対象者に対して、離職から3ヶ月以内に期間を定めない労働者として雇用し、確実な継続雇用が可能な事業者を支援する助成金です。
受給額については、再就職援助計画等の提出時期により異なります。なお、ここでは令和4年12月2日以降に提出により、対象者を雇用した場合の受給額を記載します。
「通常助成」では、支給対象者1人につき30万円。
生産指標等により成長が認められた事業者が、株式会社地域経済活性化支援機構等による事業再生・再構築・転廃業の支援を受けている事業所等から離職した人を雇用する「優遇助成」では、支給対象者1人につき40万円が支給されます。
主な受給要件は次のとおりです。
1 支給対象者を、離職から3ヶ月以内に期間を定めない労働者として雇用すること。
2 支給対象者を一般被保険者もしくは高年齢被保険者として雇用すること。
・ 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、障害者や高年齢者といった、就職が難しい人材を労働者として継続的に雇用する事業者に対して支給される助成金です。
支給額は、短時間労働者以外で60歳以上の高年齢者または母子家庭の母親などは1年間に60万円、重度障害者をのぞく身体知的障害者は2年間で120万円、重度障害者は3年間で240万円です。
また短時間労働者では、高年齢者と母子家庭の母親等は1年間で40万円、重度障害者を含む身体精神障害者は2年間で80万円となります。
支給要件は下記のとおりです。
1 ハローワークのほか、民間の職業紹介事業者の紹介を経て雇用すること。
2 雇用保険一般被保険者もしくは高年齢被保険者としての雇用が可能で、継続した雇用が確実な事業者。
・ 地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)は、過疎化や少子高齢化などが進み、特に雇用機会が不足している地域の事業主が事業所の設置や整備、さらにその地域に住む雇用するにあたって必要な費用を助成します。
受給は、事業所の設置や整備に費やした費用と、対象労働者数の増加に応じて1年ごとに最大3回まで受けることができます。
受給額は、設置・整備費用が300万円以上の場合、対象労働者数が3〜4人増加で50万円、5〜9人増加で80万円、10〜19人増加で150万円、20人以上であれば300万円です。
また、設置・整備費用が1,000万円以上になると、60万円、100万円、200万円、400万円。3,000万円以上で、90万円、150万円、300万円、600万円。5,000万円以上で120万円、200万円、400万円、800万円といった具合に増額されます。
主な受給要件は1回目と2・3回目の受給で異なります。
1回目の受給要件
1 当助成金の該当地域(同意雇用開発地域等)の施設や設備の設置や整備、ならびに雇用に関する計画書を労働局に提出する
2 施設や設備の設置・整備の最長期間は計画から完了まで18ヶ月間
3 常時雇用する雇用保険の一般被保険者もしくは高年齢被保険者を、計画期間内にハローワーク等を通じて3人以上雇用する
4 計画の完了日の時点で被保管者数が、計画日の前日の人数より3人以上増加していること
2・3回目の受給要件
1 2回目の支給基準日、3回目の支給基準日の時点で、被保険者数が計画完了日から下回っていないこと
2 対象労働者の数が、2回目、3回目の支給基準日の時点で計画完了日よりも下回っていないこと
3 離職者の数は、2回目、3回目の支給基準日までの間に対象労働者数の1/2、もしくは3人以下であること
・中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)
中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)は、その名の通り中途採用者の雇用に向けた管理制度を整備し、中途採用の積極的な拡大を目指す事業者を支援する助成金です。
受給額は、中途採用率を20ポイント以上上昇させることにより50万円。また45歳以上の中途採用率に関しては、中途採用率を20ポイント以上上昇、そのうち45歳以上の労働者の中途採用率を10ポイント以上上昇させ、さらに45歳以上の労働者全員の賃金を前職より5%以上上昇させると100万円が支給されます。
主な受給要件は以下のとおりです。
1 中途採用での雇用
2 雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇用
3 雇用期間に定めのない雇用
4 雇用前日以前の1年間に申請事業主と密接な関係をもつ事業者に雇用されていないこと
5雇用前日以前の1年間に、当該事業主の事業所で就労していないこと(出向・派遣等も含む)
6 45歳以上の中途採用を実施する場合は、雇用の時点で45歳以上であること
7 労働時間・休日・福利厚生・評価や処遇制度等、中途採用者の雇用管理制度を整備する中途採用計画書を作成し労働局に提出する
8 中途採用の拡大に取り組む期間を1年間として中途採用計画書を作成する
9 中途採用計画期間中に2人以上の対象労働者を雇用する
10 計画期間前3年間と比較して、中途採用計画期間中の中途採用率を20ポイント以上上昇させる
11 45歳以上の中途採用を実施する場合は、計画期間前3年間と比較して、中途採用期間中における45歳以上の中途採用率を10ポイント以上上昇させる
12 45歳以上の中途採用を実施する場合は、雇用後6ヶ月間の賃金が、雇用前に支払われていた賃金よりも5%以上上昇させる
まとめ
今回は、雇用関係助成金について紹介しました。
ご覧いただいたとおり、雇用関係助成金には事業縮小に至った企業に対して労働者の雇用維持を支援するもの、離職から短期間での再就職を目指す人の雇用を支援するもの、障害者や高年齢者、母子家庭の母親の就労を支援するもの、さらには地方に特化したものまで様々な制度が用意されています。
受給条件を確認しながら、目的や希望に応じた制度を活用して雇用に関する課題や問題の解消に役立ててください。
なお今回ご紹介した雇用関係助成金についてはごく一部であるほか、支給額、受給要件の説明についても概要のみを記載しています。
詳細については必ず下記のURLから厚生労働省のホームページに進み、各自でご確認いただくようお願いします。
【厚生労働省:事業主のための雇用関係助成金】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index.html