新型コロナウイルスの脅威が依然として続いています。
今年の1月に国内で初めての感染者が報告されてから、早7ヶ月。その間、新規感染者数の増加に伴う東京オリンピック・パラリンピックの延期決定、外出自粛や休業要請を実質的に課した緊急事態宣言の発令。さらには、多くの企業や個々人の生活が経済的打撃を受けたことを受けて、政府や各自治体の主導による様々な経済支援策が打ち出されてきました。
また、これまでは職場に出社しての勤務が当たり前だった「働き方」にも大きな影響を与え、自宅にて様々な情報通信技術を活用して業務を行うテレワークをはじめとした在宅勤務制度を導入する企業も増加しました。
5月25日には、新規感染者数の増加が緩やかになったことを受けて、全国すべての都道府県に発令されていた緊急事態宣言を解除。これにより、一時は社会全体に平穏が戻ったかのようにも思えたため、人々は街に戻り、各企業や個人店舗の多くは経済活動の再起動に向けて進み始めましたが、それもつかの間。
緊急事態宣言の解除後、わずか1ヶ月後である6月後半あたりから、全国的に再び新規感染者数が増加傾向となり、7月29日には初めて1000人以上の感染者が報告される事態となりました。
世界に目を向けても、アメリカやブラジル、インドなどでは感染拡大の勢いが増しており、緊張感が高まり続ける一方です。
収束に向かうどころか、感染の再拡大が顕著になる日本と世界各国。人々の生活はもちろん、企業や個人店舗に対する経済的な打撃は今後も継続されることが予想されます。
業績を伸ばした業種と衰退が危惧される業種
新型コロナ禍の出口が一向に見えないなかで不安視されるのが、特定の業種の衰退です。
中には、新型コロナの感染拡大を契機に大きく業績を伸ばした業種があるのも事実。
例えば、インターネット上で商品やサービスの売買を行うEC業界。自宅にいながら買い物やエンタメを楽しもうとする、いわゆる「巣ごもり需要」が高まったことにより、アメリカの「amazon」をはじめ、国内でもフリーマーケットアプリの大手であるメルカリなどの多くの事業者が、この困難な情勢においても増収を達成しています。
また、ネットショッピングの利用が拡大したことで物流業界が好調であるほか、外出自粛によって自宅での食事を心がける人が多くなったことにより、食品を販売するスーパーマーケットやコンビニエンスストアも好調を維持しているようです。
その一方で、新型コロナの感染拡大によって大きく業績を落とし、今後も回復の兆しがみられないまま苦境の維持が予想されるのが以下のような業種です。
・観光業(宿泊業・旅行業) ・飲食業 ・イベント業 ・製造業 ・航空業 ・アミューズメント業 |
最も大きな打撃を受けているのが、宿泊業や旅行業をはじめとする観光業や飲食業ではないでしょうか。
観光業(宿泊業・旅行業)
特に観光業は、国内における初めての感染者が発表された直後から業績の悪化が見込まれると予想されてきた業種のひとつです。
実際に、海外からの旅行客が激減するなど、近年急速に伸び続けてきたインバンド事業が大失速。訪日客に依存してきた地方の旅館が国内での感染拡大直後から倒産に追い込まれるなど、深刻な影響を被る形になりました。
ホテルや旅館などの宿泊業のほか、旅行プランを斡旋する旅行業もやはり業績が落ち込んでいます。
そのような中、政府は旅行代金の一部を肩代わりする「Go To キャンペーン」を打ち出し、観光業の支援を図ります。しかし実施直前であった7月には新規感染者が再び増加。それでも東京都を対象地域から除外して強行したものの、観光大国である沖縄県の感染者数が増加するなど、肝いりの支援策は機能するどころか、地方の各地に大きな不安を与える結果となっています。
このような情勢を踏まえて、お盆期間中の帰省や旅行の自粛を決断する人が増えたこともあり、本来であれば繁忙期である期間の増収が難しくなった観光業は、今後も厳しい経営が続くことが予想されます。
飲食業
観光業と並んで大きな苦境に立たされているのが飲食業です。
外出自粛要請や在宅勤務の推進などが影響し、外食を控える人が急増したことで、飲食業界全体の売り上げが減少傾向にあります。また前述の通り、巣ごもり消費の拡大によって、自宅での食事の機会が増えていることも一因に挙げられます。
経済的な事情も考慮に入れた上で、今後も多くの人が外食は控えるものと思われるため、多くの飲食店が料理のデリバリーや持ち帰りといった新たな業態に乗り出すことでしょう。
ただし、そのような業態が飽和状態となれば、経営の維持がますます苦しくなる飲食店が相次ぎ、閉店の道を選ばざるを得ない状況に陥るのではないでしょうか。
その他の業種
そのほかにも、イベント業、製造業、航空業、アミューズメント業が挙げられます。
イベント業では緊急事態宣言の解除以降、たとえ開催に至ったとしても、動員数の縮小が続いているため、大きな利益を期待することは難しくなっており、アミューズメント業も観光業の不振のあおりを受ける格好となっています。
また、世界各国から原材料を調達することが難しく、受注の減少にもつながっている製造業も苦戦を強いられており、航空業界も国内・国外を問わず運休や減便が相次ぐことで、今後の事業再編を迫られる可能性が生じています。
衰退阻止に向けた動きや新たな支援策に期待
新型コロナウイルスの脅威が続く以上、これらの業種はますます厳しい状況に追い込まれることは間違いありません。
長い時間をかけて成長を遂げてきた業種の多くを失うことは、日本のビジネス全体にとっても大きな打撃になることでしょう。
衰退の危機に瀕する業種を守るためにも、各金融事業者によるサポートのほか、政府や自治体による新たな支援策にも期待したいところです。