2019年10月1日から消費税が10%に増税されます。
1989年に消費税が導入されてから、30年。消費税の増税は3%、5%と続き今回で3回目となります。
過去に2度増税されているので、ベテランの事業者さんであれば対応にも比較的慣れているので、特に焦りを感じていないかもしれません。
しかし今回の増税では、過去にはなかった新たな制度が導入されます。
それが軽減税率です。
それに伴い、企業側が発行する請求書への記載方法も変更されるなど、今回の増税では、これまでとは少し違った、複雑な対応が求められることになります。
そこで今回は、過去の増税とは何が違うのか。
また、どのような対応が必要になるかについて説明していきます。
軽減税率の導入
今回の消費税で、注目すべきポイントはやはり「軽減税率」の導入です。消費税自体は8%から10%に引き上げられはしますが、この制度の導入により、商品によっては、8%と10%のどちらか異なる税率が適用されるといった非常に複雑な取引が必要になります。
軽減税率が適用されるのは、「週2回以上発行されている新聞の定期購読」と「酒類、外食を除く飲食料品」です。
「外食を除く〜」とはありますが、レストランや居酒屋の店内での食事には10%の消費税が課され、料理を持ち帰りする場合は8%のようなケースが発生することになります。
また食料品やお酒、雑貨といったような商品を同じ店舗で販売するショップなどにも同じく異なる消費税が混在することになります。
ですので、今回の「軽減税率」の導入では、特に商品のテイクアウトも行う飲食業や、食料品と雑貨を同時に扱うお店を経営する事業主さんには迅速な対応が求められることになりそうです。
では具体的には、どのような対応が必要になるのでしょうか。
価格表示の変更
商品の会計時に、支払額を巡ってお客さんとのトラブルに発展しないようにするためには、前もって商品によっては税率が異なることを説明しなければなりません。
テイクアウトを行う飲食店では、店内でのお食事用と持ち帰り商品のメニューを別々に作成しておく、統一したメニューを使用する場合であっても、8%と10%の2通りの税率が課された税込価格を記載しておくのも分かりやすくて、大きな混乱を招く心配もありません。
影響を受ける経理業務
消費税増税によって影響を受けるのは、もちろん小売業や飲食店だけではありません。
企業にとって、最も影響を受けるのが経理業務です。
これまでは税率が一律だったため、請求書やレシートごとに経費の計上をまとめて行えましたが、税率が2通りになるため、10%と8%を区分し、仕分けを2つに分ける必要がでてきます。
請求書の様式変更
今回の消費税増税では請求書の様式も変更されることになります。
消費税増税が開始される2019年10月1日から2023年9月30日までは、「区分記載請求書保存方式」という請求書を作成しなければなりません。この請求書は、軽減税率に対応した商品とそうでないものを分けて記載するものです。
記載の方法は、軽減税率の対象品目には「※」印をつけて区別し、税率ごとの合計金額を記載しなければなりません。
2023年に始まるインボイス制度
さらに2023年10月からは、「適格請求書保存方式」、通称「インボイス制度」が導入されます。
これは、取引で発生した消費税を相手に正確に伝えるための新たなルールになります。
インボイス制度では、ほぼすべての課税事業者に与えられる事業者番号と発生した消費税を請求書に記載します。もしも事業者番号が記載されていない請求書を発行した場合は、受け取った事業者の仕入税額控除に制限がかかることになります。
インボイスを発行できるのは、課税事業者のみであり、消費税の納税義務がない免税事業者は登録できません。
つまり今後はインボイスを発行できない事業者との取引は敬遠される恐れがでてきます。
事業者番号を取得するには税務署への申請が必要になります。とはいっても実際にインボイス制度が導入されるのは2023年からですので、今は頭の片隅に置いておく程度の理解で問題ないでしょう。
補助金制度の活用
さて、ここまでは今回の消費税増税によって発生するであろう煩わしさを中心に説明してきましたが、デメリットばかりではありません。
特に中小企業や飲食店、小売店にとっては大きなメリットを得られるチャンスでもあります。
そのひとつが、補助金制度です。
中小企業庁では、軽減税率対応のレジや、受発注、請求書管理システムの導入に対して最大1000万円の補助金を用意しています。
これまで請求書はアナログで管理していたという企業や、レジの老朽化にもかかわらず、資金不足のために交換に一歩踏み出せなかったという飲食店や小売店にとっては、システムを一新する絶好の機会であるといえます。
今回は、消費税率が10%に引き上げられることへの対応策やこれまでの増税との違いについて説明しました。
軽減税率の導入や、経理業務への影響など、これまでの消費税増税時とは異なる対応が必要になります。しかしデメリットばかりではなく、自社の経営状況を見直すチャンスにもなりますし、補助金を申請するいい機会にもなります。増税まではあとわずかになりましたが、今からできる最善の準備をしておきましょう。