社債は借金?社債に関する不安を解消して資金繰りを安定させる
経営者の皆さんは資金の調達を検討した場合、何を重視して調達法を選びますか?
信頼度の高い銀行の融資や、返済義務のない補助金や助成金など資金の調達法には、それぞれにメリットとデメリットがあります。
「銀行で借りようにも審査基準が厳しく、融資が受けられない…」「補助金や助成金は返済の必要もなく、信頼性が高いが、調達できる金額が少ない…」「長期的なスパンで資金調達したい…」など様々なネガティブな思いが重なり、なかなか資金調達に踏み切れないという経営者の方もいらっしゃることでしょう。
このような、最適な資金調達法がなかなか決められないという経営者の方に、ぜひ検討・活用してもらいたいのが「社債の発行」です。
社債とは?
もちろん、社債という言葉自体は聞いたことがある、知っているという方がほとんどかと思いますが、「債」の文字にあまりいいイメージが湧かないため、活用は控えているという声も少なからず上がっています。
また、自社は中小企業だから社債とは無縁だなどと考えている経営者の方もいるようです。
そのイメージ通り、社債とは企業が発行する債券のことで、はっきり言ってしまえば「借金」です。
仕組みを簡単に説明すると、企業が投資家に対して債券を発行し、資金を借り入れます。
借り入れですので、当然ながら償還(返済)の義務が生じ、満期(償還期限)になれば借り入れた全額を返済しなければません。
ただ、満期は自由に設定できる上に、それまでの間は社債の利率に応じた利息を支払うだけで済みます。
毎月の返済プラス利息が必要な融資やビジネスローンに比べると、返済に関しては比較的自由度の高いため、長期的に資金繰りを安定させられる資金調達法だといえるでしょう。
社債の種類と発行の条件
まずは社債の種類について。
社債は「普通社債」「劣後債」「転換社債」「新株予約権付社債」「永久債」などの種類があります。
普通社債
一般的に社債といえば「普通社債」のことを指します。
ほとんどの場合、利息は固定され、設定された満期までは投資家に対して利子を支払います。
劣後債
一般の債権者よりも債務弁済の順位が低い社債です。
投資家にとっては債券の回収が難しくなる反面、高い利息を得られるというメリットがあります。
転換社債
基本的には「普通社債」と変わりませんが、社債を事前に決められた金額で株式に転換することができます。
「普通社債」よりも利息が低いのも特徴です。
新株予約権付社債
ワラント債とも呼ばれます。
投資家に対しては、社債としてだけでなく、その企業が発行する株式も一定価格で買い取る権利が付与されます。
「転換社債」のように、株式に転換するのではなく、投資家が株式の購入を希望した際は別で購入する必要があります。
なお、株式の購入の権利は第三者に譲渡することも可能です。
永久債
満期がない債券なので元本を償還する必要がありません。
満期はありませんが、発行後一定期間が経過すれば償還できる権利が発生することがほとんどのため、企業が途中償還を行わない、または倒産しない限り、永久的に利子を払い続ける必要があります。
社債を発行するには「公募債」と「私募債」の2種類の条件があります。
「公募債」は、50人以上の投資家に対して債券を発行します。
不特定多数の購入者を募るという意味でも、数十億円や数百億円といった莫大な額の資金を調達できることが可能ですが、知名度の低い企業や信頼度の低い企業が行うことは非常に難しいといえます。
一方の「私募債」には、金融機関のみを相手に発行する「プロ私募債」や50人未満の投資家に対して債券を発行する「少人数私募債」があります。
このうち「少人数私募債」は不特定多数の投資家ではなく、主に企業の社長の縁故者や個人的な知人などに対して発行することがほとんどで、中小企業が利用するのに最適な条件です。
縁故者以外の投資家を獲得することももちろん可能ですが、その場合は事業計画書や、資金の使用用途などを記載した資料を作成し、経営者自らが説明会を開いて勧誘を行う必要があります。
ただし、「少人数私募債」であっても、投資家にとって魅力が感じられない企業や、信用できないと判断されるような企業であれば、社債を購入してもらうのは困難になります。
社債発行にあたってのデメリット
弁済までの満期を自由に決められる上、その満期までは元金を償還する必要もなく利子払いのみで構わないため、融資と比べても金利の負担が軽い社債。
さらに株式の発行とは異なり、投資家には経営に干渉する権限は与えられないといったメリットが上げられますが、いくつかのデメリットがあることも忘れてはいけません。
最も大きなデメリットとして挙げられるのが、やはり償還義務です。
いくら満期までの間は利子払いのみであるといっても、借金のひとつであることに変わりありません。
そのため、長期的な資金計画を緻密に考えて積み立てを行い、弁済資金を確保しておかなければなりません。
また、社債の発行にあたっては事務作業や手続きも増加するため、そのためのコストや人員、時間も確保する必要があります。