<起業時には、資金調達面で苦労することが多いもの。
どれだけ魅力あふれるビジネスプランを思いつこうと、資金不足となれば、なかなか実行に移せないことがあります。
そんな起業家にとって心強い味方になるのが、補助金や助成金です。補助金や助成金の制度を利用できれば、創業時に発生した経費の一部を回収することが可能になります。
ただ、制度の申請要件や方法を見ると、その多くが複雑なうえに申請までかなりの時間や手間を費やしそうだと考え、利用を躊躇う起業家が多いように思います。また中には、そもそも補助金と助成金の違いすら理解できていないという起業家も少なくはありません。
しかし、補助金や助成金の制度は、それぞれのポイントさえ押さえておけば、決して難解な制度などではなく、むしろ銀行融資に比べると圧倒的に利用がしやすいものです。
そこで今回は、起業時に受けられる補助金や助成金についての様々な項目を解説していきたいと思います
返済金を捻出する必要はない
目次
補助金と助成金の違い
まずは補助金と助成金の利用にあたって、基本的な知識となるそれぞれの違いについて確認していきましょう。
どちらも事業や経営をサポートするための金銭的支援であることに変わりありませんが、いくつかの異なる特徴があります。
補助金
補助金は、事業の実施にあたって必要になる資金を「補う」意味合いが強い金銭的支援制度です。
たとえば、サービスや商品の開発に必要な資金を補う「ものづくり補助金」や、ITツールの導入の資金を補う「IT導入補助金」、そして起業する人の創業資金を補う「創業支援等事業者補助金(2022年度は未実施)などがあります。
このように、補助金は主に事業の実施に関して、その生産性向上や業務の効率化を図る目的で実施されていることがわかり、このような特徴から、経済産業省が提供する制度が目立ちます。
では、補助金は利用申請すれば必ず金銭的支援を得られるのでしょうか。
端的に答えると、補助金は申請したからといって必ず受給できるとは限りません。
補助金は、基本的に採択件数や予算があらかじめ決まっています。したがって、申請内容や要件が合致している補助金を申請しても、件数や予算が上限に達した場合は、受給できないケースもあるわけです。
さらに補助金を受給するためには、審査に通過する必要があります。制度によって様々ではあるものの、公募期間はおよそ1ヶ月。この1ヶ月の間に事業計画書をはじめとする書類を作成して提出し、さらに制度によっては管轄機関との面接を経て、審査結果を待つことになります。
この書類作成に苦手意識を持たれる方が多く、せっかく受給要件を満たしているのにもかかわらず、申請を断念されるケースがよく見られるようです。
ですが、最近では書類作成にあたって、中小企業診断士などの専門家による無料サポートを受けられるセミナーやイベントなどが、各自治体主催で度々開かれていることもあり、決してハードルの高い行為ではなくなっています。
助成金
次は、助成金についてみていきましょう。
事業の実施にあたって必要になる資金を「補う」補助金に対して、助成金は、主に被雇用者の仕事を安定させるための助成の意味合いが強い制度です。
例としては「雇用調整助成金」や「キャリアアップ助成金」など挙げられ、厚生労働省によって実施される制度が多く見られるのが特徴です。
そして助成金は、補助金に比べると受給のハードルが低いと言われています。
その大きな理由としては、要件を満たしたうえで申請するとほぼ確実に受給できるためです。
また、補助金に比べると助成金は公募期間が比較的に長いという特徴があります。
たとえば現在、13次の公募が始まっている「ものづくり補助金」は、申請開始から締め切りまでの期間が約1ヶ月と10日ほどであるのに対し、「キャリアアップ助成金」は、1年間を通して申請が可能です。
ただし先述の通り、助成金は従業員の雇用や育成の助成に関するものが少なくないため、事業に対して直接的に支払った資金を補えるような制度は、そう多くありません。
金額補助金は数百万円〜数億円までの 平均で数十万円ほどのものがほとんど規模が小さいという
補助金と助成金の共通点
補助金と助成金、それぞれの特徴を確認したところで、今度は両者の共通点についてもみていきましょう。
最大の共通点はといえば、やはり補助金も助成金も受給したお金は原則返済不要である点です。
創業資金の調達手段としては、金融機関などが実施する創業融資も有名ですがこちらは、融資ですので当然ながら返済に応じなければなりません。
対して、補助金や助成金は中長期的な返済に悩まされることもありませんので、融資よりも圧倒的に資金繰り面でのリスクを抑えることができます。
ただし、例外として受給後の業績に応じて返金が求められる制度や、定期的な事業報告が必要になる制度もあるので、しっかりと要項を確認する必要があるといえるでしょう。
もうひとつの共通点は、どちらも原則後払いになるという点です。
ですので、要件を満たしていない投資や取り組みを行う以前に資金を確保できるわけではありません。
手元の資金で設備を導入したり、従業員にスキルアップのためのセミナーを受講させたりした後に、その証拠を書類で報告することよって、はじめて受給が可能になります。
給付金や交付金
ここからは余談となりますが、似たような名前の制度として「給付金」や「交付金」があります。
新型コロナウイルス感染症拡大の流行初期には、国や自治体がいくつかの給付金制度を実施したことも記憶に新しいですが、これらの制度は補助金や助成金のような要件にとらわれることなく、支給対象は対象者によって決定されます。
ですので、補助金や助成金受給の最低条件ともいえる前もっての支出であったり、新たな取り組みを実行する必要もありません
起業時に利用したい補助金や助成金の制度
起業や創業時には、どのような補助金や助成金の制度を利用するとよいのでしょうか。
ここからは、起業家の間で特によく利用されている補助金や助成金をご紹介していきます。
地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業補助金
まずは、地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業補助金です。
これは、地域内外の関係主体と連携し、地域・社会課題についてビジネスや技術の側面から実証する取り組みをする中小企業の経費の一部を補助するという補助金制度。
簡単にいえば、補助金を受給するためには、地域や社会に貢献できるような事業を導入する必要があるということがいえます。
補助率や補助上限額は、実証地域数によって「通常型」「広域型」「さらなる広域型」の3類型に区分されます。
たとえば5地域以上での実証が求められる「通常型」の場合、補助率は2/3以内、補助下限額は100万円、上限額は3,000万円です。
対象経費となるのは、機械装置費、旅費、人件費、借料や賃料、システム開発費など、計10種類。
「創業促進事業補助金」と名のつく通り、起業時には打って付けの制度といえますので、要件を満たしているのであればぜひ申請したいところではないでしょうか。
IT導入補助金
ふたつめはIT導入補助金です。
こちらは、中小企業や小規模事業者がITツールを導入するにあたって、支払った経費の一部を補助する制度です。
ただし、一般的に「ITツール」として分類されるソフトやハードなら、どれでも対象となるわけではなく、管轄機関である「一般社団法人 サービスデザイン推進協議会」が認定したものでなくてはなりません。
類型は「通常枠」「デジタル化基盤導入枠」「セキュリティ対策推進枠」の3種類。それぞれ補助率や補助上限額。さらには対象経費が異なります。
たとえば「デジタル化基盤導入枠」がPCやタブレット、プリンターやスキャナ、会計ソフトや決済ソフトといった事業開始には不可欠なツールが条件付きで対象になるのに対し、「通常枠」ではこれらが対象外となります。
今やどのような業種であっても、事業を開始するにあたっては必須になるITツール。その一方で、ツールによっては非常に高額になることもありますので、IT導入補助金は上手に活用したいところです。
人材開発支援助成金
最後に助成金をひとつ。
人材開発支援助成金は、従業員のキャリア形成に効果的な職業訓練などを通じて、専門的な知識や技能を習得させるなどした事業者が対象になる助成金です。
特定訓練コースや一般訓練コースなど、計8つのコースから選択でき、それぞれ異なる要件を満たすと受給が可能になります。
いわば人材への投資にかかった経費の報告が必要になるため、雇用を行わずに事業を進める場合は要件を満たせませんが、従業員を雇ったうえでさらにしっかりと育成したいと考えるのであれば、申請を検討するべきだといえます。
補助金や助成金の探し方
今回紹介した3つ以外にも、起業時に役立つ補助金や助成金は多数存在します。
経済産業省や厚生労働省だけでなく、各地方自治体や商工会、商工会議所といった機関でも様々な制度が実施されているので、それぞれの公式ホームページを定期的にチェックするとよいでしょう。
起業時こそ積極的な制度利用を
起業時は、なにかと支出がかさむものです。
もちろん、開始する事業によってはPCやタブレットなど、手持ちのツールで事足りることもありますが、大型の設備や最新のハードやソフトなどを導入するとなれば、それ相応の支出が必要になります。
また従業員を雇用するのであれば、正社員登用制度の導入やスキルアップの支援など、働きやすい職場づくりを進める必要もあるでしょう。
補助金や助成金は、事業を開始して間もなく、資金に余裕がない中で支出がかさみがちな起業時こそ利用を検討したい制度です。
しっかりと要点さえ掴めば、決して難しくない制度ばかりなのですので、専門家への相談を行うなどしながらぜひ申請をしてみてください。