資金調達

似て非なるもの?
給料ファクタリングと給与前払いサービスの違い

似て非なるもの?給料ファクタリングと給与前払いサービスの違い【資金調達】

当メディアでも、何度かご紹介したことのある給料ファクタリング

そのサービスの違法性について、様々な方面から指摘され続けてきた結果、今年の3月には金融庁が初めて「給料ファクタリングは違法」との公式見解を発表し、にわかに話題になりました。

給料ファクタリングは、給料日よりも前に給与を受け取れるサービスです。そのため、現金不足に悩む人にとっては便利で価値の高いサービスであるともいえるのですが、労働基準法にて給料を債権として譲渡することは認められていないため合法的なサービスではないのです

一方で、給料ファクタリングと同じように給与を前もって受け取れるもうひとつのサービスがあることをご存知でしょうか。

それが「給与前払いサービス」です。

どちらも給与を給料日よりも前に受け取れるというサービスの根本は同じなのですが、両者には大きな違いや異なる特徴を持ち、似て非なるサービスだといえます。

では、給料ファクタリングと給与前払いサービスにはどういった違いがあるのでしょうか。解説していきます。

給料ファクタリングとは?

給料ファクタリングとは?

まずは、給料ファクタリングの仕組みを押さえておきましょう。

給料ファクタリングは、事業者向けの「ファクタリング」の仕組みを個人向けに応用したサービスです。

事業者向けのファクタリングでは、「売掛債権(請求書)」をファクタリング会社が買い取って利用者に現金を支払う仕組みですが、給料ファクタリングでは「売掛債権」ではなく、個人に発生している「次回の給与」を買い取ってもらいます

利用にあたって、利用手数料が発生する点も事業者向けのファクタリングと同じです。

つまり、将来の給与を担保にすることによって、給料日以前に利用手数料を差し引いた現金を受け取り、実際の給料日の訪れと同時に、売却額を精算するという仕組みになっています。

給料前払いサービスとは?

給料前払いサービスとは?

対する給与前払いサービスですが、こちらも給料ファクタリングと同じように給料日よりも前に給与を受け取れるサービスです。

利用者が給与前払いサービスを提供する業者に対して申し込み、現金を受け取るという点も、給料ファクタリングと同じ利用の流れだといえますが、給与前払いサービスでは、「給与を債権として買い取ってもらう」のではなく、あくまで「発生済みの給料を前払いしてもらう」という仕組みです。

給与前払いサービスも、給料ファクタリングのように実際の給料日に精算する必要があります。ただし、利用者が直接的にサービス事業者に対して精算するのではなく、所属先が前払い金額と利用手数料に応じて精算手続きを進めることになります

したがって、給与前払いサービスは、サービスを提供する事業者と利用者が所属する企業や団体が利用契約を結んでいなければ、利用できません

利用の際は自由にサービス事業者を選べるわけではなく、利用者の所属先が提携する事業者のサービスを利用することになります

最近では、雇用環境や生活スタイルの変化などを背景に「給料日を固定されることなく、自由なタイミングで給与を受け取りたい」と要望する従業員が増加していることから、福利厚生の一環として給料前払いサービスを導入する企業や団体が増えています。

給料ファクタリンングと給料前払いサービスの比較

給料ファクタリンングと給料前払いサービスの比較

では、次に給料ファクタリングと給料前払いサービスを比較しながら、細かい違いを確認していきましょう。

法的根拠の有無

・ 給料ファクタリング
冒頭でも触れている通り、労働基準法24条にて「給与は労働者に直接支払わなければならない」と定められているため、給与を債権として譲渡することは認められていません。また債権譲渡された第三者への給与の支払いに関しても同じです。
つまり、所属先を介することなく、個人とファクタリング会社間のみで交わされる給料を債権とした売買契約は非合法なサービスといえ、契約が発覚した際には、給与を本来支払うはずの所属先が罰則を受けることになります

・ 給与前払いサービス
「給料の前払い・前借り」は合法であり、労働基準法25条でも「給料日以前の緊急時は給与を前払いできる」と定められています。
したがって、「利用者の所属先が給料を前払いする」という前提のもと、その支払いを、所属先と提携した給与前払いサービス事業者が代行する契約であるため、給料前払いサービスに法的な問題点はありません

利用手数料の相場

利用手数料の相場

・ 給料ファクタリング
給料ファクタリングの利用手数料の相場は、売却する給料債権の10%〜20%とされています。ただし、給料ファクタリングには現時点で法的規制がないため、明確なボーダーラインはなく、業者によっては40%〜50%以上もの法外な手数料を要求するケースもあります

・ 給与前払いサービス
一方の給与前払いサービスでは、3%〜6%と設定されていることが一般的であり、所属先と給与前払いサービス事業者の契約によっては、利用手数料を差し引かれることなく利用できる場合もあります

与信審査の有無

・ 給料ファクタリング
給料ファクタリングの利用に際しては、個人の信用情報や収入などに基づいた一定の審査が必要になります。審査次第では、電話による職場への在籍確認が行われます。

・ 給与前払いサービス
給与前払いサービスでは、利用者個人に対する与信審査はありません。ただし、利用するサービスによっては勤怠管理データの共有を求められることはありますが、利用者個人が対応する必要はなく、基本的には利用者の所属先が提出します

働き方改革における施策のひとつになりうる給与前払いサービス

働き方改革における施策のひとつになりうる給与前払いサービス

以上が、給料ファクタリングと給与前払いサービスの違いです。

法的根拠が認められる合法的な給与前払いサービスに対して、非合法といえる給料ファクタリング

現時点では、給料ファクタリングや、その提供事業者を明確に規制する法律はないものの、給与を債権とする売買契約は労働基準法、契約内容によっては特定商取引法を蔑ろにした危険なサービスです。

片や、給与前払いサービスは所属先の承認によって利用できる安心のサービスです。利用手数料も割安であり、利用者は大きな負担を背負う必要もありません。

給与前払いサービスの導入によって、求人応募者数の増加や離職者数の減少といったポジティブな結果につながる企業や団体が多く存在します。

従業員がフレキシブルに給与を受け取れるシステムである給与前払いサービスの導入は、働き方改革の推進が求められる昨今において、効果的な施策のひとつといえるでしょう