中小企業様や小規模事業者様等のITツール(ソフトウェア・機能拡張など)導入経費の一部を補助する「IT導入補助金」の交付が今年も実施されます。
今年のIT導入補助金は、昨年までの制度と比べると受給額や受給要件、申請期間などに一部変更がみられます。
また新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済への影響緩和対策の一環として、在宅勤務制度(テレワーク)の導入を進める事業を優先的に支援する一次公募(臨時募集)3月13日〜31日の間に実施されました。
1次公募はすでに終了していますが、今年は昨年とは異なり、通年での公募が実施されますので、新たなITツールの導入をお考えの事業主様は、本記事を参考に申請を検討してみてはいかがでしょうか。
目次
IT導入補助金とは?
IT導入補助金とは、ITツールの導入によって業務の効率化や生産性の向上を図る中小企業様や小規模事業者を継続的に支援する制度で、導入経費の一部が補助されます。
ITツールの活用は、たとえば経理業務の効率化やクラウドシステムによる顧客の一元管理が可能になるなど、日々のあらゆる業務を円滑に進めるうえで欠かせない手段のひとつとなっています。
補助対象ツールと申請類型
ITツール
IT導入補助金で補助対象となるITツールには、大きく分けてメインとなる「ソフトウェア」のほか、「オプション」「役務」の3つのタイプあります。
① ソフトウェア
【業務パッケージソフト】
・ 顧客対応・販売支援
・ 決済・債権債務・資金回収管理
・ 調達・供給・在庫・物流
・ 人材配置
・ 業務固有プロセス(実行系)
・ 業務固有プロセス(支援系)
・ 会計・財務・資産・経営
・ 総務・人事・給与・労務
【効率化パッケージソフト】
・ 自動化・分析
【汎用パッケージソフト】
・ 汎用
② オプション
・ 機能拡張
・ データ連携ツール
・ セキュリティ製品
・ ホームページ関連費
③ 役務
・ 導入コンサルティング
・ 導入設定・マニュアル作成・導入研修
・ 保守サポート
IT導入補助金は、上記3つのタイプの中から導入目的に応じてITツールを選択し、申請類型で定められた合計数を満たすことで申請が可能となります。
申請類型
申請類型は「A類型」と「B類型」の2種類があります。
いずれも、ソフトウェアの選択が必須です。
A類型
ソフトウェアの業務パッケージソフトの中から1つ以上、合計2つ以上選択。
B類型
ソフトウェアの業務パッケージソフトの中から3つ以上、合計5つ以上選択。
補助額と補助率
補助額と補助率はA類型とB類型によって異なります。
A類型
下限額 30万円 ※昨年から10万円減
上限額 150万円
補助率 1/2以内
B類型
下限額 150万円
上限額 450万円
補助率 1/2以内
A類型、B類型ともに補助率は1/2です。
つまりIT導入補助金を受給するには、60万円(税抜)以上の補助対象経費を計上する必要があります。
補助対象者
IT導入補助金の補助対象者は、中小企業及び小規模事業者等です。
加点要件
IT導入補助金に限らず、補助金を受給するにあたっては、事業計画期間において一定の申請要件を満たしている必要があり、その中でいかに加点要件をクリアできているかが重要になります。
加点要件は以下のようなものが挙げられます。
・ 給与支給総額が年率平均1.5%以上向上
・ 事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上
・ クラウドを活用したITツールの導入
・ 固定資産税ゼロの特例を措置した自治体に所在する
さらに、同じ補助金を過去3年間以内に受給した事業者様に対しては減点措置が取られるため、これまでIT導入補助金の受給経験のない事業者様は審査の際に有利となります。
申請期間
申請期間
3月13日〜31日の間に実施された一次公募(臨時募集)以降の具体的な公募スケジュールは未確定ですが、今年は通年での公募実施が決定しています。
検討段階ではありますが、おそらく6月以降に3ヶ月ごとの公募になるのではないかと予想されています。
2次公募
6月締め切り
3次公募
9月締め切り
4次公募
12月締め切り
※ いずれも未確定
申請方法と申請の流れ
申請方法
IT導入補助金の申請は、今年から電子申請システム「Jグランツ」を使用して行います。
「Jグランツ」を利用するには、「GビズIDプライムアカウント」の取得が必須です。アカウントの申請から取得までには2〜3週間の期間を要するため、2次公募以降の申請を検討される事業者様は、前もって準備を進めておく必要があります。
Jグランツ
https://jgrants.go.jp/
GビズID
https://gbiz-id.go.jp/top/
申請の流れ
申請の事前準備から受給決定までの大まかな流れは以下の通りです。
「GビズIDプライムアカウント」の取得
↓
導入予定のITツールを扱う「IT導入支援事業者」との事前打ち合わせ
↓
「IT導入支援事業者」から電子申請システム「Jグランツ」の申請マイページへ招待を受ける
↓
申請マイページから必要書類を提出
↓
審査
↓
交付決定
申請から交付決定までは、おおよそ2週間から1ヶ月程度です。
「特別枠」の創設が決定
4月7日の補正予算案の閣議決定により、今年は新型コロナウイルスの影響緩和対策として、上記の「通常枠」に加えて補助率の引き上げと補助対象にハードウェアが含まれる「特別枠」の創設が決定しました。
「特別枠」の内容
申請対象者や補助額の範囲に変わりはありませんが、大きな拡充点は2つです。
1 パソコンやタブレットといったハードウェアのレンタル費用を補助
2 補助率を2/3に引き上げ
申請要件に関しては未だ正式公開に至っていませんが、補正予算案には「補助対象経費の1/6以上が指定要件に合致する投資」であることが挙げられています。
「補助対象経費の1/6以上が指定要件に合致する投資」は以下の通りです。
サプライチェーン毀損への対応
製品供給を継続するための設備投資や製品開発の推進。
非対面型ビジネスモデルへの転換
ECサイト(インターネット上に置く販売サイト)やVRなどの活用による、対面サービスから非対面型のオンラインサービスへの転換。「通常枠」では対象外であったECサイトの制作費も補助対象となると予測できます。
テレワーク環境の整備
web会議システムやクラウドサービスなどの導入による従業員の在宅勤務環境の整備
なお「特別枠」の申請期間や交付決定までのスケジュールは「通常枠」と同様になる予定です。
「通常枠」も臨時の創設が決定した「特別枠」も、直近での申請は6月に実施されるであろう2次公募からとなります。
IT導入補助金の利用を検討される事業者様は、自社に必要なITツールの選択や、それを扱うIT事業支援事業者の選定、電子申請に必須となる「GビズIDプライムアカウント」の取得など、申請前になって慌てないためにも事前準備を進めておきましょう。