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取引や投資に欠かせないプロセスである「デューデリジェンス」について詳しく解説

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ビジネスの世界では、企業が成長するためにさまざまな取引や投資が行われています。
新たな会社の買収や他企業との提携、または大きなビジネスプロジェクトに投資することもあるでしょう。しかし、こうした重要な決断をする前には調査を慎重に行うことがとても大切になります。
そこで登場するのが「デューデリジェンス」という考え方。「デューデリジェンス」とは、ビジネス上における重要な決断を行う前に、リスクを減らして最適な選択をするために行う徹底的な調査を意味します。
今回は、デューデリジェンスとは何か。なぜそれが必要なのか。そうした定義や重要性などについて分かりやすく解説していきます。

デューデリジェンスとは?

デューデリジェンスとは?

「デューデリジェンス」とは、もともと「適切な注意」という意味をもつ言葉です。簡単に言えば、ビジネス相手と重要な取引や投資をする前にその相手や対象について徹底的に調査し、リスクや問題点がないかを確認するプロセスのことを指します。
たとえば事業の拡大を目的として、とある会社の買収を検討しているとしましょう。
このとき、買収する会社が本当に安定しているのか、将来的に利益を生み出せる可能性があるのか、借入れがたくさんあるのではないか、といった点を調べる必要があります。
このように、重要な取引や投資にあたってのリスクや不安な点をあらかじめ調べることで、後に困ったことにならないようにするのが「デューデリジェンス」の目的です。

デューデリジェンスの必要性

デューデリジェンスの必要性

では、どうして「デューデリジェンス」が必要になるのでしょうか?その理由は、大きく分けて3つあります。

取引や投資後のリスクを減らすため

ひとつめはリスクの低減です。
ビジネスの世界では、大きな取引や投資には常にリスクがともなうものです。たとえば、買収しようとしている会社が実際には経営が不安定だったり、法律的な問題を抱えていたりすることがあります。
もしもこうした会社と「デューデリジェンス」を行わずにそのまま取引を進めてしまえば、買収後に大きな損害を被る可能性があります。
一方、しっかりと「デューデリジェンス」を行うことができれば、事前にリスクを見つけ出せるとともに、それに対してどう対処するかを決めることができます。
リスクを把握できていれば、事前に対策を立てることができるため、買収後の失敗の可能性を大きく減らすことができるわけです。

正確な情報を得るため

「デューデリジェンス」は、取引の対象となる会社やプロジェクトについて、詳しい情報を得るための手段でもあります。相手から提示される情報だけでは不十分なことが多いため、自分たちで徹底的に調査を行い、すべてのデータを確認することが何よりも大切なのです。
ある会社が自分たちの売上や利益を強調して「これからもっと成長する」と説明していたとしましょう。しかし、実際にはコストがかかりすぎていて説明通りの利益が出ていないかもしれません。
「デューデリジェンス」によって、財務の状況や過去の実績を詳しく確認することは、相手の説明が本当に正しいかどうかを判断材料にもなるといえます。

取引の価値を正しく判断するため

取引や投資の「本当の価値」を見極めることができる点も「デューデリジェンス」の必要性のひとつです。
会社を買収する際には、その会社が持っている技術や知的財産、顧客のリストなどがどれくらい価値があるかの評価も重要です。そうした情報がないままに取引を行うと、買収後に「こんなはずじゃなかった」と後悔することになるかもしれません。
また、「デューデリジェンス」の結果をもとに、取引の条件を再交渉することもあります。もしも相手が予想よりもリスクを抱えていることがわかった場合には、そのリスクに見合った価格や条件に変更することができるのです。

デューデリジェンスの主な4つの種類

デューデリジェンスの主な4つの種類

「デューデリジェンス」には、取引の内容や目的に応じて様々な種類があります。ここからは、「デューデリジェンス」について主要な4つの種類を紹介します。

1. 財務デューデリジェンス

財務デューデリジェンスは、過去の決算書や収益、負債、キャッシュフローといった、買収や投資の対象となる企業の財務状況を詳しく調査することです。
この調査によって、対象企業が本当に健全な経営を行っているのか、または借入れや未払いの費用の有無など、見落とされがちなリスクがないかを確認します。

2. 法務デューデリジェンス

法務デューデリジェンスは、企業が法的な問題を抱えていないかどうかを確認するための調査です。
法的な問題には、契約違反や訴訟リスク、特許や商標に関するものなどが挙げられます。法的なトラブルに巻き込まれないように事前にリスクを特定するためにも、法務デューデリジェンスを欠かすことはできません。

3. 人事デューデリジェンス

買収対象となる会社の従業員や労働環境に関する調査を「人事デューデリジェンス」とよびます。具体的な調査内容としては、社員のスキルやモチベーション、離職率など。
従業員は、財務や法務とともに企業が成功するうえで大きな役割を果たしていることもあり、買収前にしっかりと調査する必要があるといえます。

4. ITデューデリジェンス

現代のビジネスでは、ITシステムが非常に重要な役割を果たしていることは言うまでもありません。
ITデューデリジェンスでは、対象企業が持っているIT関連の技術やシステムが適切に機能しているか、それらが将来の成長に対応できるか、またはセキュリティ面でのリスクの有無などを確認します。

まとめ

「デューデリジェンス」とは、取引や投資を行う前に相手企業やプロジェクトのリスク、問題点を事前に調査するプロセスです。
その役割は、予期せぬトラブルや損失を防ぎ、取引の成功率を高めること。
リスクを最小限に抑え、正確な判断をするためには、「デューデリジェンス」の徹底が非常に重要です。信頼できる取引を実現するためには、欠かせないステップであるといえます。