事業主の方であれば、「ファンド」という言葉を一度は耳にしたことがあるかと思います。
ファンドというのは、企業や団体が複数の投資家から資金を集め、運用に成功すれば利益を分配するというものです。
このファンドは、大きく分けて2種類あります。
それが「投資型ファンド」と「事業型ファンド」です。
投資型ファンドは、企業が発行する株式のほか、債券や投資信託など、銀行や証券会社などの金融機関が販売する金融商品に投資するファンドです。
最近では、将来的な社会保障制度に対する不安や、新型コロナによる経済や雇用の先行きが不透明であることなどが影響し、投資型ファンドの活用によって老後資金を形成しようとする動きが活発化しています。
企業にとっても個人にとっても、一般的な資金形成手段のひとつとなっている投資ファンドに対し、事業型ファンドというのは、あまり聞きなれないという事業主の方もいるかもしれません。
事業型ファンドは、投資型ファンドに比べてリスクが高くなる一方で、運用に成功すればより大きなリターンを期待できるファンドです。
そこで今回は、事業型ファンドの基本的な仕組みや種類のほか、メリット・デメリットについても解説していきます。
事業型ファンドとは
株式や金融商品に投資する投資型ファンドに対して、事業型ファンドは企業や団体、または個人の事業そのものに投資するファンドのことです。
事業型ファンドで投資の対象になるのは、鉄道事業や道路事業、太陽光発電事業や金採掘事業、不動産などさまざま。
また、競走馬の一口馬主や映画の製作費用、中にはアイドルに投資し活動を支援するものといった、現代ならではの事業型ファンドもあります。
事業型ファンドに投資して運用に成功すれば、投資型ファンドと同じように金銭的なリターンはもちろん、物品やサービスなどの見返りを受けられるものもあります。
事業型ファンドで資金を集める理由
では、なぜこのような事業型ファンドを活用して資金を集める企業や団体、個人などがいるのでしょうか。
ひとつは、金融機関による資金の貸し渋りが挙げられます。
新たな事業を開始したい場合、まずは金融機関からの融資を検討するものです。
しかし、融資がリスケ中になっていたり、開始する事業によっては新たな融資を受けることが難しくなるケースがあります。
また、魅力的な事業であれば、自然と多数の投資家が集まるため、金融機関の融資審査のような煩わしさもありません。
もうひとつは、事業の継続に必要な資金が不足するためです。
たとえば、太陽光発電事業を開始した場合、設備の導入は株式の発行や融資で確保できても維持する資金が不足してしまえば、事業は水の泡となってしまいます。
このように、事業型ファンドの活用は、金融機関からの融資に比べても効率的でリスクの少ない資金調達手段といえます。
事業型ファンドのメリット
次に、事業型ファンドのメリットをみていきましょう。
まずは、事業型ファンドで資金を調達する側のメリットです。
先述のとおり、金融機関の融資よりも効率よく資金を調達できるというメリットがありますが、そのほかにも多数の投資家から投資を受けられれば、それだけでも社会的な価値の高い事業として知名度を高めることができます。
一方、投資する側のメリットはどうでしょう。
事業型ファンドは、融資を受けづらい事業に対して行われることが多いというリスクがあることから、投資型ファンドよりも利回りが高いものが多い特徴があります。
また、事業型ファンドは、変動配当の投資型ファンドに対し固定配当です。
そのため、投資ファンドよりも安定的で大きな配当を受けられる可能性が高いというメリットがあります。
そのため、投資した事業が大きな成功を納め続ければ、少ない投資額でも大きなリターンを定期的に得ることができるのです。
事業型ファンドのデメリット
次に、事業型ファンドのデメリットをみてみましょう。
事業型ファンドで資金を調達する側にとってもっとも大きなデメリットは、事業の失敗による信頼度の低下です。
事業型ファンドによって多額の資金を集められたとしても、事業が失敗に終われば、投資家からの信用を失うだけでなく、最悪の場合は経営不能に陥る可能性もあります。
対して、投資する側にとっては、上記のような事業失敗があれば資金の増額はおろか、投資資金そのものを失う可能性があります。
その理由は、事業型ファンドへの投資には株式や債券のように金融商品取引法が適用されないことです。
つまり、事業型ファンドに投資した資金は、分別管理制度による管理が義務付けられていため、もしも投資した事業が失敗してファンドが解散されれば、投資資金を失うというケースがあるのです。
また、最近では事業型ファンドを称して金銭を回収する悪質な事業者も存在しています。
事業型ファンドでは、株式や債券などに比べて公開されている情報が少ないという特徴があり、こうした悪質な事業者の見極めが難しいというデメリットもあります。
魅力的な事業であれば、金融機関の融資よりも投資型ファンドよりも効率的に資金を集められるといえる事業型ファンド。一方、投資する側にとっては運用に成功すれば、安定的なハイリターンを狙えるという魅力があります。
しかし、ご紹介したようにいくつかのデメリットやリスクもあります。
事業型ファンドで資金を調達するのか、または事業型ファンドに投資して資金の増額を狙うのか。メリットやデメリットを考慮に入れながら検討する必要がありそうです。