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融資を受けたのに資金繰りが改善できない見込み…そんな危機的状況で有効になる「リスケ」
膨大な労力と時間をかけて作成した資料を提出し、ようやく融資の審査に通過して事業資金を調達できた時はホッと一安心できますね。
経営者さんにとっては、これでしばらくは経営が暗礁に乗り上げることはないだろう、もしくはリスクを大幅に軽減できたという自信にもつながることでしょう。
しかし、忘れてはならないのが融資は紛れもない「借金」であること。
つまり、融資を受けたからには必ず返済義務が生じるわけです。
融資を受けたからといって、必ずしも経営が上向き、利益が増加するとはかぎりません。
当然ながら、融資を受けても売上げが上がらず、会社は経営不振に陥ることも考えられ、そうなれば仕入れ代金や従業員への賃金といった運転資金のみの出費ばかりが重なり、返済に遅れが生じ金融機関からの信用はどんどん失われていくといった負のスパイラルに嵌る恐れがあります。
そんな状況が続けば、次第に運転資金すら賄うこともままならず待っているのは最悪の結末である倒産…
そのような最悪のシナリオを回避するためにも、経営者は早めに手を打たなければなりません。
すぐに経営状態を回復できる目処がたたず、返済が難しいと思った場合に考えてほしい打開策が「リスケ」です。
今回は、借入金の返済が難しくなった際にぜひ行ってほしい「リスケ」について解説しまう。
リスケとは
普段の業務においても、日頃からよく使う言葉のひとつである「リスケ」
正しくは「リスケージューリング」といい、例えば商談や打ち合わせの日程変更の際などで頻繁に使われるビジネス用語のひとつです。
一方で、借入れにかかわる「リスケ」とは、金融機関(特に銀行)と交渉を行うことにより現在の返済条件の変更を行うことを指します。
つまり、交渉によっては借入金の返済期間延長や、指定の期間だけは利息の支払いだけにしてもらうなどが可能となり、毎月の返済負担額を減らすことができるようになります。
「リスケ」の3タイプ
リスケのタイプは毎月の返済が必要な借入金の場合、主に3つに分けられます。
返済期間の延長
もっともオーソドックスなタイプであり、現在契約している返済期間を延長して毎月の返済額を押さえます。
元金は据え置きのまま、利息のみを支払う
6ヶ月〜12ヶ月間は元金の支払いを必要とせず、その間は利益のみを支払います。期間中は次期のリスケ対応について、随時銀行側と交渉を繰り返していくことになります。
元金、利息ともに据え置き
期間は上記のタイプと同じように6ヶ月〜12ヶ月。こちらのタイプは元金、利息ともに返済が猶予されるため、資金繰りの見直しがしやすくなる点が大きなメリットです。
ただし、利益を追求する銀行にとっては一定期間メリットがないため、場合によっては追加の担保や金利の引き上げといった条件の追加が必要になることがあります。
また、一括返済が条件の手形貸付けの場合は期間延長のほかに分割支払いへの変更といったリスケ手段が考えられます。
リスケは簡単に受入れられるのか
定期的な返済が難しくなった経営者にとって、「リスケ」は非常に有効な打開策であることは確かです。
しかし、銀行に「リスケ」を申し出れば、そのままスムーズに受入れてもらえるのでしょうか。
答えはNOです。
経営者にとってはメリットのある「リスケ」ですが、銀行側にとっては一定期間の利益が減少もしくは停止するわけですから、簡単に受入れてくれるはずがありません。
「リスケ」を申し出る際に最も重要なポイントは、その「リスケ」に経済的な合理性が生じるかどうかです。
「リスケ」を受入れることによって、どのようなメリットがあるのか?例えば、リスケを受入れず融資先が倒産してしまうよりも、期限を延長して全額を回収できるほうが銀行側にとってもメリットがあるのは言うまでもありません。
つまり、「リスケ」を受入れても確実に全額を返済できるという資金プランを立て直し、そこに合理性と具体性が含まれている必要があるのです。
経営改善計画書
このように「リスケ」の申し出には、資金繰りの改善プランを明確に証明するための書類が必要になりますが、そのひとつが「経営改善計画書」です。
簡単にいうと、どのくらいの期間があれば経営を黒字化できるかを示すための書類であり、この書類によってリスケの合理性が認められれば「リスケ」へと近づくことが可能となります。
「リスケ」の判断基準となるのは、実際に債務超過を解消して黒字化するためにはどのくらいの期間が必要かということ。
これは金融庁の監督指針や検査マニュアル等に基づいて決められており、基本は3年以内と定められていますが、中小企業であれば5年以内と、すこし緩和されています。
もちろん、具体策のないプランを記載したところで銀行が納得するはずがありません。
ただ、現状を把握し改善後の状況までを想起して具体性を盛り込むのは非常に困難であるため、資金繰りのプロである銀行の担当者に書類作成の力添えを申し出るのもひとつの手段であるといえます。
現在の「リスケ」対応
かつては、銀行にとってメリットが無いに等しかった「リスケ」の対応ですが、現在は金融庁からのお達しもあり、金銭的なリスクを抱える企業を再生に導く業務も銀行員としての評価対象になりました。
このように、今では「リスケ」の相談にも柔軟に対応してもらえる体制が整っているので、返済が難しいと判断したら迷わず「リスケ」を相談するべきでしょう。