今年の初め頃から急速に進んできた円安傾向が、ようやく落ち着きをみせています。
10月には約32年ぶりとなる、1ドル150円台まで値下がりしましたが、今月に入ると一転、円高ドル安傾向に。24日には、10月のピーク時から10円以上値下がりし138円台をつけました。
これは23日に、アメリカの経済指標が予想よりも悪化したとの発表を受けたことや、FOMC(アメリカの連邦公開市場委員会)の公表内容からアメリカの利上げペースが失速されるとの観測が要因となったと考えられます。
また、アメリカの消費者物価指数が市場予測を下回ったことで、インフレが高止まりしたことも、このたびの円高進行のきっかけ。
一時は160円台にまで値下がりするとみられていた今年の円安進行ですが、一旦はピークアウトしたといえるのではないでしょうか。
とはいえ、企業や消費者を問わず円安に大きな影響を受けた1年となったことは確かです。
資材や食料品といった物の価格は高騰を続け、利益を大きく圧迫された企業も少なくはないでしょう。
また、円安のメリットを受けるはずの輸出企業が業績を悪化させるケースがみられるなど、一般的な常識を覆す結果をもたらした今回の円安。
では、本来であれば輸出企業は円安に転じるとどのようなメリットやデメリットを受けると考えられるのでしょうか。

円高と円安

円安円高イメージ画像

輸出企業が円安によって受けるメリットやデメリットを考える前に、まずは円高と円安について整理してみましょう。
そもそも円高と円安とは、その言葉の通り、為替相場において外国通貨と比べた場合に、円の価格が上がっているのか下がっているのかを意味します。
したがって、円高になれば外国通貨よりも円の価格が上がっている、円安になれば外国通貨よりも円の価格が下がっている状態であることは火を見るよりも明らかです。
為替相場の動きには、様々な事象が絡むことになります。
たとえば、日本企業がアメリカとの貿易にあたって輸入が増えた場合、円で受け取った代金をドルに交換する動きが活発化するため、円安・ドル高傾向が強まります。
また、今年の円安傾向のように、物価や金利の動きや各国の情勢が為替市場に影響を与える場合もあります。
ウクライナ紛争が引き金となって生じた原油価格の急激な高騰、さらにはアメリカのFRBが大幅な利上げを行なったことによる景気回復への期待から、日本とアメリカの金利に差が生じ、円の売却が進んだ。これが今年の円安急進の要因とされます。

円高・円安のメリットとデメリット

円安円高比較イメージ

一般的な円高・円安のメリットとデメリットには、どのようなものが考えられるのでしょうか。

・円高のメリットとデメリット

円高は、円の価格が上昇すること。たとえば1ドル130円が120円になる状態を指します。
それまでは、1ドルを手に入れるのに130円かかっていたものが120円で手に入るため、海外の資材や商品を安く買うことが可能になります。
反対に、海外にて1ドルで販売されている商品を円に換算すると、それまでは130円だったものが120円となります。したがって、海外での売上高が10円分下がってしまうということになるわけです。

・円安のメリットとデメリット

一方の円安はどうでしょうか。
こちらは、円の価格が下降することなので、1ドル130円が140円になります。
こうなると、1ドル130円で手に入っていたものが、140円かかるようになるため、円高とは反対に海外の資材や商品の価格が値上がりすることになります。
他方、海外にて1ドルで販売されている商品があるとすると、価格が130円から140円に値上がりします。つまり、円安傾向に転じれば海外での売上高の上昇が見込めるということがいえます。

円安によって輸出企業が受けるメリットとデメリット

輸出入イメージ画像

上記の一般的なメリットとデメリットを考慮すると、輸出企業が円安で受けるメリット・デメリットも容易に導き出すことができます。
円安は海外商品の高騰を招く一方で、輸出企業にとっては海外へ商品を安く売ることが可能になるため、価格競争力が高まり、収益の上昇が見込めるというメリットが生まれます。
日本製の商品は海外で高い人気を誇りますので、円安によって低価格で販売されるようになれば、売上上昇に期待できることは必然だといえるでしょう。
一方、輸入業者であれば、円安によって商品の仕入れ額が高騰するため、収益が落ち込むといった明確なデメリットが考えられますが、輸出業者が円安で受けるデメリットは基本的にありません。
ただし、日本の輸出企業の多くも製品の製造に必要な材料を海外から仕入れる、 または国内での購入といった形をとることもあり、輸入はもとより国内物価の上昇により、上記のようなメリットを確実に得られるというわけにはいかないケースも多々あります。

今年の円安でみられた“メリットを得られない”傾向

暗いお金イメージ画像

今年の円安進行では、本来円安のメリットを受けるはずの輸出企業が業績を悪化させるケースがよくみられました。
これはまさに、上記の材料費の高騰が招いた結果といえるのではないでしょうか。
材料を海外から仕入れる、または国内で仕入れる、そのどちらであっても、材料費が高騰しており、製造コストが膨らむ。その結果として海外での販売価格を十分に低減することができないといったことも考えられます。
また、海外における日本製品の需要が近年においては減速傾向にあることも事実でしょう。
Made in Japanブランドにかつてほどの需要がみられない現状にあれば、いくら価格を引き下げたところでも、収益を伸ばせないのも納得がいきます。
国内の大手自動車メーカーをはじめとする一部のMade in Japanブランドを除けば、円安のメリットを十分に得られることなく、厳しい経営状態にある輸出企業が多いのも無理はないのではないでしょうか。

まとめ

円安まとめ画像

今回は、円安と円高を整理するとともに、円安に転じることによって輸出企業が本来受けられるメリットやデメリットについて解説しました。
今年の円安では、いくつかの要因が絡み合い一般的に考えられるメリットからの恩恵を受けられない輸出企業が多くみられたのが事実。
そして11月に入り、今度は円高進行に転じた為替市場。
円高に転じれば、輸入企業の収益が上昇し、海外製品の価格が下落するのが一般的な円高のメリットではありますが、必ずしも理論通りに進まないことが今回の円安ではっきりとしたものです。
このまま円高が加速するのか、再び円安に転じるのか。いずれにせよ、今後の経済情勢の好転を願うばかりです。